礼儀れいぎ)” の例文
旧字:禮儀
ニールスがそうしたのは、部屋へやの中をもっとあかるくするためではなくて、そうすることが死んだ人にたいする礼儀れいぎだと思ったのです。
この姑の婦人もまた、旧武士の家庭に育った士族のむすめで、純日本風の礼儀れいぎ正しき教育を受け、かつ極めて善良に優しい心根の人であった。
答『人間界にんげんかい儀式ぎしきとはちがうが、矢張やは夫婦めおとになるときにはまった礼儀れいぎがあり、そしてうえ竜神様りゅうじんさまからのお指図さしずける……。』
だれにでもやさしく、礼儀れいぎただしくつきあっていました。そして貧乏人にはしんせつにしてやりました。それでだれもかれもアラジンになつきました。
長年ながねんやまんでいて、獣物けものにもなさけがあり、また礼儀れいぎのあることをいていた主人しゅじんは、くまが、さけいにきたのだということだけはわかったのです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんな礼儀れいぎを心得ぬ奴の所へ誰が遊びに行くものか。おれはこの時からこの坊主に山嵐やまあらしという渾名あだなをつけてやった。漢学の先生はさすがにかたいものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しからばおもて礼儀れいぎうらは礼をはぶいた意味とし、家にあるときも、裏でなく表でいたとしたらどうであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼女かのじょはたちまち手形の話をやり出して、溜息ためいきをついたり、自分の貧乏びんぼううったえたり、『おねだり』を始めたりするのだったが、礼儀れいぎも作法もさっぱりお構いなしで
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
シネクネと身体からだにシナを付けて、語音に礼儀れいぎうるおいを持たせて、奥様おくさまらしく気取って挨拶するようなことはこの細君の大の不得手ふえてで、めてえば真率しんそつなのである。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
諸君、ぼくは高慢こうまんなアメリカ人、伝統でんとうのないアメリカ人、礼儀れいぎも知らず道義も知らず物質万能ぶっしつばんのうのアメリカ人、とこういったなら米国人はどんな気持ちがするだろう。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
実はいちおうみなさんを舎内にお迎えした上で予定のプログラムを進めるのが礼儀れいぎだと思いますが、幸いに天気もよいし、それにこれからの進行の都合もありますので
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それで見ると少年は、まだほんの十三、四さい、それでいて礼儀れいぎことばはまことに正しく、かみしもにみじかいかたなを二本しているすがたは、ゆめの国からきた使者ししゃのようである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西田はこういいてて、細君の寝間ねまへはいった。細君も同情どうじょう深い西田の声を聞いてから、夢からさめたように正気しょうきづいた。そうしてはいってきた西田におきて礼儀れいぎをした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
だから日本の礼儀れいぎ、日本の言葉もよく知らないのだろう。笑ってはいけない、と思いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「そうです、子供です。まだ体の発育期でしてな、礼儀れいぎもなんにも教えてないんです」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
されば各国公使等の挙動きょどううかがえば、国際の礼儀れいぎ法式ほうしきのごときもとより眼中がんちゅうかず、ややもすれば脅嚇手段きょうかくしゅだんを用い些細ささいのことにも声をだいにして兵力をうったえて目的もくてきを達すべしと公言するなど
なに行届ゆきとゞきませんでも、こればかりは、御地おんちたいする礼儀れいぎ真情まごゝろでございます。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いとうことはなはだしく主従の礼儀れいぎ師弟の差別を厳格にして言葉づかいの端々はしばしに至るまでやかましく云い方を規定したまたまそれにもとることがあれば平身低頭してあやまっても容易にゆるさず執拗しつようにその無礼を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かれ天性てんせいやさしいのと、ひと親切しんせつなのと、礼儀れいぎのあるのと、品行ひんこう方正ほうせいなのと、着古きぶるしたフロックコート、病人びょうにんらしい様子ようす家庭かてい不遇ふぐう、これらはみなすべ人々ひとびとあたたか同情どうじょう引起ひきおこさしめたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
親切な礼儀れいぎ正しい人は、やはり気質きしつのいい犬を飼っている
礼儀れいぎただしい紳士しんしだとまでおもうようになりました。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
「おまえは礼儀れいぎを知らぬやつだ。」
戦争前せんそうまえまでは、あれほど、礼儀れいぎただしかったのがと、なにかにつけ、むかしおもいだされてなさけなくなる。
春さきの朝のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
いちおうの礼儀れいぎにすぎないものであることは明らかであったが、次郎はそれでも、この調子なら、そうむき出しに塾の精神をけなしつけることもあるまい、という気がして
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
今夜こんやはじつにこみいった感情かんじょうが、せまい女のむねににえくり返ったけれど、ともかくもじっと堪忍かんにんして、狂母きょうぼの死をげにきてくれた人たちに、それほどに礼儀れいぎを失わなかった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
とりこにしても身分のある敵なら、礼儀れいぎをつくすのが武門のならいです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きみは礼儀れいぎを知りませんね。人間というものは、いやな命令を
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
礼儀れいぎとして、私のほうからお願いすべきだろうね。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)