じろ)” の例文
四国二十三番の札所ふだしょ薬王寺やくおうじにゆく足だまりにもなるので、遍路へんろの人のほのじろい姿と、あわれにふる鈴のもこのたそがれのわびしい点景。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
輕便鐵道けいべんてつだう線路せんろ蜿々うね/\とほした左右さいう田畑たはたには、ほのじろ日中ひなかかへるが、こと/\、くつ/\、と忍笑しのびわらひをするやうにいた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子供こどもは、そとしました。そらは、気味悪きみわるいほのじろさで、ぶなのが、こしれそうにげて、かぜおそうたびにくびをれるのがられました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
顔色があおじろいんだか白いんだか判らないくらい、乳のような色をしている方がいらっしったの、うつ向いて講演を聴いていらっしゃるのよ、おじさまに顔を見られはしないかと
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
始めのうちは珍らしさにまぎれていた臭味くさみがだんだんとわかって来てうんざりした、嫌になった、飽き飽きしたという、多少前の「鼻じろむ」というのと似通ったような表現であります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬は言うまでもなく、沙金しゃきんが目をつけた、陸奥出みちのくで三才駒さんさいごまであろう。すでに、盗人たちがちりぢりに、死人しびとを残して引き揚げた小路は、月に照らされて、さながら霜を置いたようにうすじろい。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朝ぼらけごろもじろあめの子が乱舞するなり八重桜ちる
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うら若草のはつ花も、はなじろみてや、黄金こがねなす
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
長椅子ながいすの上に眠りたる猫ほのじろ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
きり田川たがわの水を、ほのじろい、ざるき/\、泡沫あわを薄青くすくひ取つては、細帯ほそおびにつけたびくの中へ、ト腰をひねざまに、ざあと、光に照らして移し込む。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれど、またところどころに雲切くもぎれがしていて、そこからは、ほのじろひかりがもれるのでありました。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やっと、膝を離れたが、またガックリとうつむいた襟脚えりあしが、夕顔のように、ほのじろい。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うら若草のはつ花も、はなじろみてや、黄金こがねなす
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
わが見る薔薇ばらはうすじろ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ほのじろき顔にありたる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「いいえ、樹の枝にぶらりぶらりと、女の乳をつるしたように——可厭いやにあだじろく、それ、おつむりそばにも。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供こどもは、だまって、なわひろって、あひるのあしむすんでいました。もうみずうえは、ほのじろよるそらいろうつしているだけで、みずぎわにえているやぶの姿すがたがわからないほど、くらくなっていました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、ぶくりとして、あだじろい、でぶ/\とふとつた肉貫にくかん——(間違まちがへるな、めかたでない、)——肉感にくかん第一人者だいいちにんしやが、地響ぢひゞきつて、外房州そとばうしうはひつた女中ぢよちうだから、ことおこる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
場所ばしよところへつゝ、守宮やもりかたちで、天窓あたまにすぽりとなにかぶつた、あだじろい、どうながい、四足よつあしうねるものが、ぴつたりと附着くツついたり、ことりとまるくなつたり、長々なが/\ふのがえたり……やがて
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)