はえ)” の例文
「段々いただきが近いんですよ。やがてこのはえ人丈ひとだけになって、私の姿が見えませんようになりますと、それをくぐって出ますところが、もう花の原でございます。」
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その為に毎年白木で新調するんです——エライことをやりますよ。ひげはえた人まで頬冠でみに出るんですからネ
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長谷川時雨しぐれは、生粋きっすいの江戸ッ子ということが出来なければ、はえ抜きの東京女だとは言えるであろう。
昔狂月坊に汝の歌はまずいというと、「狂月に毛のむく/\とはえよかしさる歌よみと人に知られん」。
かびはえ駄洒落だじゃれ熨斗のしそえて度々進呈すれど少しも取りれず、随分面白く異見を饒舌しゃべっても、かえって珠運が溜息ためいきあいの手のごとくなり、是では行かぬと本調子整々堂々
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夫に逆毛で無い後の二本をく検めて見ると其根の所が仮面めんや鬘からぬけた者で無く全くはえた頭から抜た者です夫は根の附て居る所で分ります殊に又合点の行かぬのはこのちゞれ具合です
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
大抵たいてい赤痢せきりかゝつてやうや身體からだちからがついたばかりの人々ひと/″\例年れいねんごと草刈鎌くさかりがまつて六夕刻ゆふこく墓薙はかなぎというてた。はかほとりはえるにまかせたくさ刈拂かりはらはれてるから清潔せいけつつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
御助け下され有難く御禮言葉ことばに盡し難し少々は打疵うちきずを受たれども然までの怪我にも是なしと云ながら女房は後藤を熟々よく/\るに月代さかやき蓬々ぼう/\はえまなこするどき六尺有餘の大男なれば又々仰天なし一旦命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はえぬきのなれに呼ばれて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
はえつきの眞白栲ましろたへ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
... 満さんとあの娘っ子とがふざけた真似まねして遊んでいるだ」とたき付ける言葉の仰山ぎょうさんなるにお代嬢はムラムラと顔の色変りて額より二本のつのはえんばかり「あんだと、満さんがあの娘っ子とふざけていると。迎いにもいかねいでらちもねいこんだ。どうしてやるべい」下女「あの家へ怒鳴どなこんで満さんを ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人間の頭へは決して鱗の逆に向た毛のはえる者では有りません、の様な事があってもはえた儘の毛に逆髪さかげは有ません、然るに此三本の内に一本逆毛さかげが有るとは何故でしょう即ち此一本は入毛いれげです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
帶し月代さかやきもりのごとくにはえいろ赤黒あかくろまなこするどく晃々きら/″\と光りし顏色にて殊に衣類は羊羹色ようかんいろなる黒のもん付の小袖にふるき小倉のおびをしめ長刀形なぎなたなりになりたる草鞋わらぢ穿はきながらすねにてしり端折はしよりまた傍邊かたはらつゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
願奉ると叮嚀ていねいに述ければ圍爐裡ゐろりはたに年頃卅六七とも見ゆる男の半面はんめん青髭あをひげはえ骨柄こつがらのみいやしからざるが火にあたりて居たりしが夫はさだめし難澁なんじふならん疾々とく/\此方こなたあがり給へ併し空腹くふふくとあればすぐに火にあたるよろしからず先々臺所だいどころへ行て食事しよくじいたし其火のへんより玉へといと慇懃ねんごろに申けるに吉兵衞は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)