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狡猾
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こうかつ
ふりがな文庫
“
狡猾
(
こうかつ
)” の例文
狡猾
(
こうかつ
)
な知覚——風に揺れる他の草の葉が触れたときは何の反応も示さないのに、ほんの少しでも人間がさわると
忽
(
たちま
)
ち葉を閉じて了う。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして、胸の中で、自分は安次を引取ることに異議を立てるのではなく、秋三の
狡猾
(
こうかつ
)
さに立腹しているのだと理窟も一度立ててみた。
南北
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
あの
狡猾
(
こうかつ
)
な土蜘蛛は、いつどうしたのか、大きな岩で、一分の
隙
(
すき
)
もないように、外から洞穴の入口をぴったりふさいでしまいました。
犬と笛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
れいの
俗諺
(
ぞくげん
)
の「さわらぬ神にたたりなし」とかいう
怜悧
(
れいり
)
狡猾
(
こうかつ
)
の処生訓を遵奉しているのと、同じ形だ、という事になるのでしょうか。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
欺瞞
(
ぎまん
)
と強欲と
狡猾
(
こうかつ
)
のために、いつも抑えつけられ、踏みにじられている、無知や愚鈍の
哀
(
かな
)
しさは、飽きるほど見もし聞きもしている。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
「天皇制は、もつとも
狡猾
(
こうかつ
)
で、影響力の強い反動主義である。これにたいして、日本の自由主義は、たたかわなければならない。」
天皇:誰が日本民族の主人であるか
(新字新仮名)
/
蜷川新
(著)
脂肪質で
蒼
(
あお
)
ざめ、怒りやすく、
狡猾
(
こうかつ
)
で、理屈っぽく、幻覚にとらわれてる、その強健なデンマーク人を、女——しかも女でもないのだ
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
男は背が低く、やせて、色を失い、荒々しく、
狡猾
(
こうかつ
)
で残忍で落ち着かない様子であって、一言にして言えば
嫌悪
(
けんお
)
すべき
賤奴
(
せんど
)
だった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
になるのも卑劣になるのも表裏二枚合せの護身服を着けるのも皆事を知るの結果であって、事を知るのは年を取るの罪である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼らは根気がいいし、工夫力もあるし、
狡猾
(
こうかつ
)
でもあるし、職務上主として必要なように見える知識には十分によく通じてもいる。
盗まれた手紙
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
天皇を利用することには
狎
(
な
)
れており、その自らの
狡猾
(
こうかつ
)
さ、大義名分というずるい看板をさとらずに、天皇の尊厳の
御利益
(
ごりやく
)
を謳歌している。
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それが慣習となって、その効果が一面
抜目
(
ぬけめ
)
がなく如才のない性格を彼に附与した。それがために時としては
狡猾
(
こうかつ
)
とさえ思われた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
わたしは、ほんとうの勝負好きだろうか、
狡猾
(
こうかつ
)
な
搏打
(
ばくち
)
うちだろうか、済度し難い賭博狂(見ただけでぞっとする手合)だろうか。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
食糧購入の方法をどう解決つけるか、——
狡猾
(
こうかつ
)
な商人どもを相手にすべく、彼もまた出て行くときには死を覚悟して行ったにちがいない。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しかし、どこか、わざとらしいところがあって、そのしょぼついた眼の奥には、なにか、蛇に似た
狡猾
(
こうかつ
)
な光がちらついているようだった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
彼は自分の罪が、ヒシ/\と胸に
徹
(
こた
)
えて来るのを感じた。自分の野卑な、
狡猾
(
こうかつ
)
な行為が、子の上に
覿面
(
てきめん
)
に
報
(
むく
)
いて来たことが、恐ろしかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
西洋にては狐の
狡猾
(
こうかつ
)
なることを唱うれども、人を誑惑するということは聞かぬ。ただし、狐の知力につきてはいろいろ研究したるものがある。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
現代の教育はいかほど日本人を新しく
狡猾
(
こうかつ
)
にしようと
力
(
つと
)
めても今だに一部の
愚昧
(
ぐまい
)
なる民の心を奪う事が出来ないのであった。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その笑いはある
狡猾
(
こうかつ
)
な方法を思いついたことを通わせた。彼女は敷居の近くにその菓子を置いて、忍び足で弟の側へ寄った。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一人は四十格好の痩せ形の男で、
狡猾
(
こうかつ
)
らしい人相を持っていた。一人は、三十二、三歳か骨格の逞しい土方上がりでもあるらしい好人物である。
泡盛物語
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そういうふうに、みんな
狡猾
(
こうかつ
)
そうに見える顔をながめていると、なぜか春吉君は、それらの少年の顔が、その父親たちの狡猾な顔に見えてくる。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
かの
狡猾
(
こうかつ
)
な
悪智恵
(
わるぢえ
)
のある
男
(
おとこ
)
は、
部下
(
ぶか
)
をたくさんにもっていました。
男
(
おとこ
)
は、どうかして、
二人
(
ふたり
)
を
殺
(
ころ
)
して、あの
光
(
ひか
)
るものを
奪
(
うば
)
い
取
(
と
)
ろうと
思
(
おも
)
いました。
幸福に暮らした二人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
元来
(
もと
)
を言えばかれは
狡猾
(
こうかつ
)
なるノルマン地方の人であるから人々がかれを
詰
(
なじ
)
ったような計略あるいはもっとうまい手品のできないともいえないので
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
辛
(
から
)
い時には辛酷以上に辛い、
敏
(
さと
)
い時には
狡猾
(
こうかつ
)
以上に敏いところはなければならないから、この物影がグッとこたえたものと見なければなりません。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こう考えて、夫人の死顔を眺めると、気のせいか、唇のまわりに、
狡猾
(
こうかつ
)
な笑いの影が
漂
(
ただよ
)
って居るように見えました。
印象
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
石を投るもの、竹竿で叩き落そうとするもの、みんなが
狡猾
(
こうかつ
)
な顔つきをして、緊張した手足を
迅速
(
じんそく
)
に動かしていた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そうして彼の言ったことが、ついには
滑稽
(
こっけい
)
な様子で解剖台の上へ
転輾
(
てんてん
)
とするのではあるまいかと思うと、彼は自分の
狡猾
(
こうかつ
)
な態度が
呪
(
のろ
)
わしくなって来た。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
いろいろ銚子の話をして、安が帰った跡で、瀬戸が
狡猾
(
こうかつ
)
らしい顔をして、「明日柳橋へ行ったって、僕の材料はないが、君の所には惜しい材料がある」
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
昔はちょいとした恩義に感じて田舎の御家来が、
生命
(
いのち
)
までも棄てたものさ。ありゃ、主人が
狡猾
(
こうかつ
)
で、
旨
(
うま
)
く正直なものを操ったのさ、考えてみたがいい。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
勇はそれまでに、ミチが奔走して来た金については聞こうとしなかった。これは男の
狡猾
(
こうかつ
)
さがさせる
業
(
わざ
)
であった。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
だがどれも手足だけに切り離された夢で、大事なところになると彼は急いで菓子を
匿
(
かく
)
す子供の
狡猾
(
こうかつ
)
さを取戻した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
明の陶宗儀の『
輟耕録
(
てっこうろく
)
』二三に、
優人
(
わざおぎ
)
杜生の話に、
韶州
(
しょうしゅう
)
で相公てふ者と心やすくなり、その室に至って柱上に一小猴を鎖でつなげるを見るに
狡猾
(
こうかつ
)
らしい。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あんな若造にしちゃ、なんて
狡猾
(
こうかつ
)
なやり方だろう、なんというくそ度胸だろう! とても信じられないくらいだ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
無精髯
(
ぶしょうひげ
)
が伸びほうだいに顔じゅうにはびこり、陽に焼けた
眉間
(
みけん
)
や頬に
狡猾
(
こうかつ
)
の紋章とでもいうべき深い
竪皺
(
たてじわ
)
がより、
埃
(
ほこり
)
と
垢
(
あか
)
にまみれて沈んだ
鉛色
(
なまりいろ
)
をしていた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
なぜと云って、板倉の英雄的行動には最初から目的があったのだ。あの
狡猾
(
こうかつ
)
な男が、何か偉大なる報酬を予想することなしにああ云う危険を冒す筈がない。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
阪井は頭をまっすぐに立てたまま動きもしなかった。手塚は
狡猾
(
こうかつ
)
な目をしきりに働かせて先生の顔を、ちらちらと見やっては隣席の人の手元をのぞいていた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
な遊佐銀二郎、相手の油断を突いておいて、今だ! と思うから早撃ちだ。畳みかけて打ちこんで来る。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
勇気、失望、
狡猾
(
こうかつ
)
、落胆、負け惜しみ、慰め——その間には叩かれた女の掌のやきもち筋も見えるよ。どこかへ生み落したはずと思う子供の片えくぼも出るよ。
百喩経
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
井生森又作は
如才
(
じょさい
)
ない
狡猾
(
こうかつ
)
な男でございますから、是だけの宿屋に番頭も何もいないで、貧乏だと悟られて、三千円の金を持って帰られてはいけないと思って
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして、ぽかんとひらいた厚いどす黒いくちびるからよだれをたらして、けだもののような卑屈な、
狡猾
(
こうかつ
)
な横目で、女獅子使いのさっそうたる立ち姿を盗み見た。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ペテロら弟子たちには多くの欠点があったが、彼らは正直なる、誠実の性格の持ち主であって、かかる性質の作り事を企むごとき
狡猾
(
こうかつ
)
な人物では決してなかった。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
性質と犯罪の統計には、
狡猾
(
こうかつ
)
と云うのが四十二人もあり、
怠惰
(
たいだ
)
と云うのがたった一人しかありません。
新生の門:――栃木の女囚刑務所を訪ねて
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
大伴
(
おおとも
)
ノ
御行
(
みゆき
)
、粗末な
狩猟
(
かり
)
の
装束
(
しょうぞく
)
で、左手より登場。中年男。
荘重
(
そうちょう
)
な歩みと、
悲痛
(
ひつう
)
な表情をとり
繕
(
つくろ
)
っているが、時として彼のまなざしは
狡猾
(
こうかつ
)
な輝きを
露呈
(
ろてい
)
する。………
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
な盗っと猫のように屈みこんでいた男の挙動が
凡
(
ただ
)
ではない。遠く
眸
(
め
)
を見あわせたと思うと、ぱっと植込みを斜めに駈け抜けて、長屋門の外へ逃げ出そうとした。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その商売も誠実にやるのでなく前にいうた通り
懸値
(
かけね
)
をいったり人を欺いたりすることが多い。どうもチベット一般の人民はしごく
狡猾
(
こうかつ
)
な気風に養成されて居るです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
柿のこずえには大きい鴉が
狡猾
(
こうかつ
)
そうな眼をひからせて、尖ったくちばしを振り立てながら枝から枝へと飛び渡っていたが、藻はもう手をあげて追おうともしなかった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あいつは、
遅鈍
(
のそ
)
ついているようだがそりゃ
狡猾
(
こうかつ
)
で、おまけに残忍ときてるんだから始末がわるいよ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
そうな主人はよだれを流さんばかりの表情を隠し得ずにこういいながら彼の顔色をうかがった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
しかし
狡猾
(
こうかつ
)
で便箋を利用したのでない。愛人へ書く為めには一枚の紙が十円しても惜しくないと思っている。その辺を説明してやりたかったが、今更仕方がなかった。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この年を取った流浪人はせっかく
狡猾
(
こうかつ
)
に
胸算用
(
むなざんよう
)
を立てても、まだ心の
底
(
そこ
)
に残っている若い血がわき立って、いっさいを引っくり返してしまうのだ……さてどこへ行こうか
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
狡
漢検1級
部首:⽝
9画
猾
漢検1級
部首:⽝
13画
“狡猾”で始まる語句
狡猾者
狡猾婆
狡猾性
狡猾相
狡猾世界
狡猾怜悧
狡猾無比