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犇々
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ひし/\
ふりがな文庫
“
犇々
(
ひし/\
)” の例文
件
(
くだん
)
の
古井戸
(
ふるゐど
)
は、
先住
(
せんぢう
)
の
家
(
いへ
)
の
妻
(
つま
)
ものに
狂
(
くる
)
ふことありて
其處
(
そこ
)
に
空
(
むな
)
しくなりぬとぞ。
朽
(
く
)
ちたる
蓋
(
ふた
)
犇々
(
ひし/\
)
として
大
(
おほ
)
いなる
石
(
いし
)
のおもしを
置
(
お
)
いたり。
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
犇々
(
ひし/\
)
と上げくる秋の汐は
廂
(
ひさし
)
のない屋根舟を木の葉のやうに軽くあふつて往来と同じ水準にまで
擡
(
もた
)
げてゐる——彼はそこに腰をかけた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
とたじろぐところを、折重なつて、
犇々
(
ひし/\
)
と縛り上げます。ガラツ八も人柄相應に馬鹿力があるので、こんな時は存外役に立つのでした。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
庄司氏の雄弁ならざるも、確乎たる信念の下に押付けるような力強い言葉は、
犇々
(
ひし/\
)
と支倉の胸に応えた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
平常
(
ふだん
)
ならそれなりに
嫣然
(
にっこり
)
して他愛なくなるんですが、此の頃は優しくされるにつけて一層悲しさが増してまいり、溜息ついて苦労するのが伊之吉の身にも
犇々
(
ひし/\
)
と
堪
(
こた
)
えます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
未見
(
みち
)
の境を旅するといふ感じは、
犇々
(
ひし/\
)
と私の胸に迫つて來た。空は低く曇つてゐた。目を
遮
(
さへ
)
ぎる物もない曠野の處々には人家の屋根が見える。名も知らぬ
灌木
(
くわんぼく
)
の叢生した
箇處
(
ところ
)
がある。
札幌
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そして、しつかり抱き絞めてゐると急に、
犇々
(
ひし/\
)
と、妹に対する底知れない慈しみの情が泉のやうに湧きあがつて来た。このまゝ、波にもてあそばれて底知れぬ水底へ沈んでゆく心地がした。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
それは暗いゴチツク建築のなかを辿つてゆくときのやうな、
犇々
(
ひし/\
)
とせまつて來る靜寂と孤獨とを眼覺ました。杉の根方には
藪柑子
(
やぶかうじ
)
、匂ひのないのぎ蘭、すぎごけ、……數々の
矮小
(
わいせう
)
な自然が生えてゐた。
闇への書
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
肩
(
かた
)
犇々
(
ひし/\
)
とすりあひぬ。
哀音
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
頑固一
徹
(
てつ
)
なやうでも、その爲に美しく育つた十九の娘を、非業に死なせた
悔
(
くい
)
のやうなものが、
犇々
(
ひし/\
)
と老ひの胸をしめ付けるのです。
銭形平次捕物控:163 閉された庭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
扉
(
ドア
)
の
外
(
そと
)
でひき
呼吸
(
いき
)
に
呟
(
つぶや
)
く
聲
(
こゑ
)
、
彈丸
(
だんぐわん
)
の
如
(
ごと
)
く
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
く
音
(
おと
)
。
忽
(
たちま
)
ち
手負猪
(
ておひじし
)
の
襲
(
おそ
)
ふやうな、
殺氣
(
さつき
)
立
(
だ
)
つた
跫音
(
あしおと
)
が
犇々
(
ひし/\
)
と
扉
(
ドア
)
に
寄
(
よ
)
る。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
境内に這入れば同僚の刑事達が
犇々
(
ひし/\
)
と網を張っているのだから、捕まるに違いないのだが、今だに境内から何の知らせも来ないのは、写真位で覚えている風体だから、変相でもしているので
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
平次は外へ出ると、眞つ暗な
師走
(
しはす
)
の空を仰いで、大きく息をしました。見えざる敵のしたゝかさを改めて
犇々
(
ひし/\
)
と感じた樣子です。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あはれ
其時
(
そのとき
)
那
(
あ
)
の
婦人
(
をんな
)
が、
蟇
(
ひき
)
に
絡
(
まつは
)
られたのも、
猿
(
さる
)
に
抱
(
だ
)
かれたのも、
蝙蝠
(
かうもり
)
に
吸
(
す
)
はれたのも、
夜中
(
よなか
)
に
𩳦魅魍魎
(
ちみまうりやう
)
に
魘
(
おそ
)
はれたのも、
思出
(
おもひだ
)
して、
私
(
わし
)
は
犇々
(
ひし/\
)
と
胸
(
むね
)
に
当
(
あた
)
つた
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼が二川を愛することの足りなかった事が、
犇々
(
ひし/\
)
と彼の心を責めた。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
半狂亂になつた母親、膝の上へ抱き上げたお駒の、次第に頼み少くなるのを見ると、
犇々
(
ひし/\
)
と抱きしめ乍ら、自分の身體と一緒に搖ぶりました。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
靜
(
ぢつ
)
と
立
(
た
)
つてると、
天窓
(
あたま
)
がふら/\、おしつけられるやうな、しめつけられるやうな、
犇々
(
ひし/\
)
と
重
(
おも
)
いものでおされるやうな、
切
(
せつ
)
ない、
堪
(
たま
)
らない
氣
(
き
)
がして、もはや!
横
(
よこ
)
に
倒
(
たふ
)
れようかと
思
(
おも
)
つた。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
後のことは眼顏の合圖で心得た八五郎のガラツ八が、精一杯の聲を張りあげて、好奇の眼を光らせながら
犇々
(
ひし/\
)
と娘の死骸を取圍む彌次馬を追ひ散らしてをります。
銭形平次捕物控:160 二つの刺青
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
見透
(
みとほし
)
の
裏
(
うら
)
は
小庭
(
こには
)
もなく、すぐ
隣屋
(
となり
)
の
物置
(
ものおき
)
で、
此處
(
こゝ
)
にも
犇々
(
ひし/\
)
と
材木
(
ざいもく
)
が
建重
(
たてかさ
)
ねてあるから、
薄暗
(
うすぐら
)
い
中
(
なか
)
に、
鮮麗
(
あざやか
)
な
其
(
その
)
淺黄
(
あさぎ
)
の
手絡
(
てがら
)
と
片頬
(
かたほ
)
の
白
(
しろ
)
いのとが、
拭込
(
ふきこ
)
むだ
柱
(
はしら
)
に
映
(
うつ
)
つて、ト
見
(
み
)
ると
露草
(
つゆぐさ
)
が
咲
(
さ
)
いたやうで
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜はもう
亥刻半
(
よつはん
)
過ぎ。
四方
(
あたり
)
は
漆
(
うるし
)
の如く眞つ暗で、早春の香ばしい風が生暖かく吹いて來ますが、町も水も妙に靜まり返つて、夜の無氣味さだけが、
犇々
(
ひし/\
)
と背に迫ります。
銭形平次捕物控:155 仏像の膝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
放
(
はな
)
して
退
(
すさ
)
ると、
別
(
べつ
)
に
塀際
(
へいぎは
)
に、
犇々
(
ひし/\
)
と
材木
(
ざいもく
)
の
筋
(
すぢ
)
が
立
(
た
)
つて
並
(
なら
)
ぶ
中
(
なか
)
に、
朧々
(
おぼろ/\
)
とものこそあれ、
學士
(
がくし
)
は
自分
(
じぶん
)
の
影
(
かげ
)
だらうと
思
(
おも
)
つたが、
月
(
つき
)
は
無
(
な
)
し、
且
(
か
)
つ
我
(
わ
)
が
足
(
あし
)
は
地
(
つち
)
に
釘
(
くぎ
)
づけになつてるのにも
係
(
かゝは
)
らず、
影法師
(
かげぼふし
)
は
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と熱湯の小桶を取落すところへ、踏込んだ平次、有無を言はせず
犇々
(
ひし/\
)
と縛り上げて了ひました。
銭形平次捕物控:009 人肌地藏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
膝行
(
ゐざ
)
り寄つたお京は、赤ん坊のやうな素直な心持で、音次郎の首つ玉に、
犇々
(
ひし/\
)
とすがりつくのです。どつと留めどのない涙が、死に化粧の白粉を流して、男の襟へ首筋へと
注
(
そゝ
)
ぎます。
銭形平次捕物控:218 心中崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
久太郎と力を
協
(
あは
)
せて
猛
(
たけ
)
り狂ふ春松を
犇々
(
ひし/\
)
と縛り上げたことは言ふまでもありません。
銭形平次捕物控:179 お登世の恋人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
闇の中に
激
(
はげ
)
しい爭ひは續きましたが、やがて自身番に待機した御用の提灯が一ぺんに飛んで出ると、錢形平次を
捕頭
(
とりがしら
)
に、五六人の組子の手に
犇々
(
ひし/\
)
と縛り上げられて居るのは、何んと
銭形平次捕物控:188 お長屋碁会
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この事件が容易ならぬ深さを持つてゐることだけが、
犇々
(
ひし/\
)
と平次に思ひ當らせます。
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
幸ひ手に立つほどの者がなかつた
所爲
(
せゐ
)
もあるでせうが、春木屋の裏口から灯と人とが
溢
(
あふ
)
れ出た時は、平次の十手は二人の得物を叩き落して、後手に
犇々
(
ひし/\
)
と縛り上げて居た時だつたのです。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あツといふ間に祿兵衞を叩き伏せ、
犇々
(
ひし/\
)
と縛り上げて了ひました。
銭形平次捕物控:020 朱塗りの筐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
若くて美しい娘の斯うした死顏が、
犇々
(
ひし/\
)
と平次の心を打ちます。
銭形平次捕物控:208 青銭と鍵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
犇
漢検1級
部首:⽜
12画
々
3画
“犇”で始まる語句
犇
犇放