えん)” の例文
とあるのは人口に膾炙かいしゃした詩句で、秦始皇をしいそうとして壮士荊軻けいかえんの太子の燕丹に易水のほとりで分れた事蹟を咏じたのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
トロイの城壁を三匝さんそうしたとか、えんぴと張飛が長坂橋ちょうはんきょう丈八じょうはち蛇矛だぼうよこたえて、曹操そうそうの軍百万人をにらめ返したとか大袈裟おおげさな事ばかり連想する。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
司馬穰苴しばじやうしよ田完でんくわん(一)苗裔べうえいなりせい景公けいこうときしん(二)けんち、しかうしてえん(三)河上かじやうをかし、せい敗績はいせきせり。景公けいこうこれうれふ。
かくて、風浪のやや鎮まるのを待つうちに、もと袁紹えんしょうの大将で、いまは曹操に仕えているえんの人、焦触しょうしょく張南ちょうなんのふたりが
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年はあらたになりて建文二年となりぬ。えん洪武こうぶ三十三年と称す。燕王は正月の酷寒に乗じて、蔚州いしゅうを下し、大同だいどうを攻む。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
陳弼教ちんひつきょうは幼な名を明允めいいんといっていた。えんの人であった。家が貧乏であったから、副将軍賈綰こかんの秘書になっていた。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東に、筆をえん成祖せいその前になげうって、「死せば即ち死せんのみ、詔や草すべからず」と絶叫したる明朝の碩儒方孝孺ほうこうじゅがある。いささかもって吾人の意を強くするに足るのである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
ゆゑに子遠が送別の句に「えんちようの多士一の貫高。荊楚深く憂ふるは只屈平」といふもこのことなり。しかるに五月十一日関東の行を聞きしよりは、またいつの誠字に工夫をつけたり。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
北はちょうえんしんから、西は※岐ぶんきまで足を延ばした。商於しょうおて洛陽に至った。南は淮泗わいしから会稽かいけいに入り、時に魯中ろちゅうに家を持ったりした。斉や魯の間を往来した。梁宋には永く滞在した。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
景公けいこう穰苴じやうしよしてとも兵事へいじかたり、おほいこれよろこび、もつ將軍しやうぐんし、へいひきゐてえんしんふせがしむ。穰苴じやうしよいは
はッきりときかないうちは、私は死んでも帰らないよ。——おえんを抱いて、久助さんは、ひと足先に、帰っておくれ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えん王、しゅう王、せい王、しょう王、だい王、みん王等、秘信相通じ、密使たがいに動き、穏やかならぬ流言ありて、ちょうに聞えたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
えん恵王けいおうの墓の上に、一疋の狐と一疋の狸が棲んでいた。
狐と狸 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東角門の言は、すなわち子澄七国しちこくの故事を論ぜるの語なり。子澄退いて斉泰せいたいと議す。泰いわく、えん重兵ちょうへいを握り、かつもとより大志あり、まさこれを削るべしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
味噌久は、三ツになるお袖の子のおえんをあいてに遊び相手になりながら、物干し台で川風にふかれていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三日みつかにしてのちへいろくす。病者びやうしやみなかんことをもとめ、あらそふるつて、でてこれめにたたかひおもむけり。しんこれき、めにり、えんこれき、みづわたつてく。
楽毅は春秋戦国の世に、えん昭王しょうおうをたすけて、五国の兵馬を指揮し、せいの七十余城を陥したという武人。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(二七)桓公くわんこうじつ少姫せうきいかつて、みなみのかたさいおそふ。管仲くわんちうつてち、(二八)包茅はうばうの・周室しうしつ入貢にふこうせざるをむ。桓公くわんこうじつきたのかた山戎さんじうせいす、しかうして管仲くわんちうつてえんをして召公せうこうまつりごとをさめしむ。
さてはと仰天して、えんは夢中で追っかけた。けれど時すでに遅し。——盧は馬の背にくくられ、二百人からの土民や捕吏の手で麓へ引ッ立てられて行く途中だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へえ? ……なぜです。どうして支那の帝王を決めるのに、昔からしんちょうえんなどの国境さかいを侵して、われわれ漢民族をおびやかしてきた異国の匈奴などと相談する必要があるのですか」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洞窟どうくつを背景に、ひとつの賊殿ぞくでんともいえる山寨さんさいを築造し、そのかしらは姓をえん、名をじゅんといい、あだ名を錦毛虎きんもうことよばれているものだった。——もとは山東莱州らいしゅうで馬や羊の売り買いをしていた博労ばくろうなのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えんは、あわててほかの部落へ行った。しかし、そこにも北京府ほっけいふ捕吏ほりが来てたむろしていた。ぞっとして、彼は粟も求めずもとの巣へ逃げ戻ったが、これが足のツキ初めとは知るよしもなかったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おうっ。おえんちゃんじゃねえか。ここだよ、ここだよ——」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)