水盤すいばん)” の例文
その金魚きんぎょともだちもなく、おやや、兄弟きょうだいというものもなく、まったくのひとりぼっちで、さびしそうに水盤すいばんなかおよぎまわっていました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある友が水盤すいばんといふものの桃色なるを持ちしを見てはそのうつくしさにめでて、彼は善き家に生れたるよと幼心にうらやみし事もありき。
わが幼時の美感 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お日さまの光が、ガラスの天井からさしこんできて、水の上や、大きな水盤すいばんうかんでいる美しい水草を、キラキラと照らしていました。
セエラは夢の中の人のように、幸福そうな微笑ほほえみをたたえながら、石鹸皿を雪花石膏アラバスタア水盤すいばんに見たてて、薔薇の花を盛りました。
広場のまん中には、噴水塔があり、水晶のようなしずくが下におちて、大きな水盤すいばんにたまる。空は青くかがやいている。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と云って、縁先えんさきえてある切株の上の小さな姫蘆ひめあし橢円形だえんけい水盤すいばんへ、そっこぶしの中のものを移した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あの朝鮮唐津のお大切な水盤すいばんを、あの伊賀の山猿どもが持ち出して、まあ、なんにしていると思召す? さっきちょっと見ますと、あれをお廊下の真ん中に持ち出して
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平次はその人達の視線に送られて、上州屋の離室はなれ——ゆうべ勇次郎が殺された部屋の前まで行くと、ささやかな池のほとりに据えた、不似合に大きな青銅の水盤すいばんに気が付きました。
水盤すいばんなかに、五ひきの金魚きんぎょれてやりますと、去年きょねんからいた金魚きんぎょは、にわかににぎやかになったのでたいへんによろこんだようにえました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
噴水ふんすいが大理石の水盤すいばんの中でぴちゃぴちゃ音をたてているところではどこでも、わたしはその水にうかんでいる都市のおとぎばなしを聞いているような気がします。
このあいだからると、だいぶおおきくなった。あのあななか子供こどもがいるんだね。あついときは、水盤すいばんみずふくんでいって、うえやしているよ。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
ガラスの円天井まるてんじょうまで上がっていましたが、その天井からは、お日さまがさしこんで、噴水の水と大水盤すいばんのなかにういている、うつくしい水草の上にきらきらしていました。
むなしく、水盤すいばんまえへもどると、かれは、もしや彼女かのじょではなかったかと、いいれぬかなしさにおそわれたのでありました。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからまた、戸口に書いてある名前や、むかしのままにかかっている看板を見せてやったりしました。その人たちは、小さい中庭では貝がらでかざられた噴水ふんすい受けの水盤すいばんを見ました。
少年しょうねんは、去年きょねんのいまごろ、かわからすくいあみで、ふなのを四、五ひきばかりとってきました。そして、にわにおいてあった、水盤すいばんなかれました。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
おおかみも今夜こんやさむいとみえて、ふっ、ふっとしろいきいていました。そして、こおりった水盤すいばんのようなつきかって、うったえるようにほえるのでありました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうしたらあれをることができるかな。うまくといっしょにかれたなら、うちってかえって、金魚きんぎょはいっている水盤すいばんえようと空想くうそうしていたのでした。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうとう、こがらしのふく、季節きせつとなりました。すると、水盤すいばんみずは、こおりのようにつめたかったのです。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なぜなら、水盤すいばん自分じぶんひとりのものではなくて、きょうだいたちみんなのものであったからです。
かえって、水盤すいばんなかはそうぞうしくなりました。けれど、去年きょねんからいた一ぴきの金魚きんぎょは、このうちは、やはり自分じぶんうちだというふうに、悠々ゆうゆうとしてみずおもておよいでいました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
「うちの水盤すいばんなかれるよ。れてもいいだろう?」と、正吉しょうきちくんはねえさんのかおました。
庭先にわさきの、おおきな水盤すいばんには、なつから、あきへかけて、まっかな、すいれんのはながさきました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、水盤すいばんみずいたすいれんのに、はちがりてまっているのをました。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
今年ことしも、金魚きんぎょって水盤すいばんれると、あたらしく仲間入なかまいりをした金魚きんぎょは、さすがにざかなだけあって、あわてずゆうゆうと、ながをふりながら、はなくすいれんのかげを、いったり
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ぼく、水盤すいばんれなければいいだろう。ほかのれものにれておけばいい?」
けれど、水盤すいばんなかでは、あいかわらず、きんぎょと、めだかが、およいでいました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
少年しょうねんは、にわて、先刻さっきおんなが、じっととしていた垣根かきねのあたりをると、そこには、水盤すいばんいてあって、いつかきたほう海岸かいがんへいったとき、あの少女しょうじょひろってくれたかいがらや
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三びきの金魚きんぎょは、まだ達者たっしゃ水盤すいばんなかおよいでいます。正雄まさおは、あおいボタンの一つをまくらもとにいてたあるばんに、あかうちのたくさんっているみなと景色けしきゆめたのでありました。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほかにも水盤すいばんには、めだかや、金魚きんぎょがはいっていました。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)