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樹々
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きぎ
ふりがな文庫
“
樹々
(
きぎ
)” の例文
樹々
(
きぎ
)
の梢から漏れ落る日の光が厚い
苔
(
こけ
)
の上にきらきらと揺れ動くにつれて、静な風の声は近いところに水の流でもあるような響を伝え
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ご
安心
(
あんしん
)
遊
(
あそ
)
ばしてください、
下界
(
げかい
)
は
穀物
(
こくもつ
)
がすきまもなく、
野
(
の
)
に、
山
(
やま
)
に、
圃
(
はた
)
にしげっています。また
樹々
(
きぎ
)
には
果物
(
くだもの
)
が
重
(
かさ
)
なり
合
(
あ
)
って
実
(
みの
)
っています。
消えた美しい不思議なにじ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
樹々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずえ
)
が水底の
藻
(
も
)
に見え、「水面」を仰ぐと
塒
(
ねぐら
)
へ帰る烏の群が魚に見え、ゼーロンにも私にも
鰓
(
えら
)
があるらしかった。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
小鳥の声が
晴々
(
はればれ
)
とひびく、山や峰は
孔雀色
(
くじゃくいろ
)
の光に濡れ、傾斜の
樹々
(
きぎ
)
は強烈な陽をうけて、白い水蒸気をあげている。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雨戸のそとは、はたして、叫ぶ風と狂う雨とのあらしだった。
樹々
(
きぎ
)
のうなりが、ものすごく聞こえてきていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
町の入口には、
古
(
いにしえ
)
の
稜堡
(
りょうほ
)
の跡の遊歩場に、アカシアの木立が植えられるのを昔彼は見たのだが、それがすっかりあたりを占領して、古い
樹々
(
きぎ
)
を窒息さしていた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
紅
(
くれない
)
なる、いろいろの旗天を
蔽
(
おお
)
ひて大鳥の群れたる如き、旗の
透間
(
すきま
)
の空青き、
樹々
(
きぎ
)
の葉の
翠
(
みどり
)
なる、路を行く人の髪の黒き、
簪
(
かざし
)
の白き、
手絡
(
てがら
)
の
緋
(
ひ
)
なる、帯の錦、
袖
(
そで
)
の
綾
(
あや
)
、
薔薇
(
しょうび
)
の
香
(
か
)
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただの家と、その邸内の単純な景色を——荒れはてた壁を——眼のような、ぽかっと開いた窓を——少しばかり生い
繁
(
しげ
)
った
菅草
(
すげぐさ
)
を——四、五本の枯れた
樹々
(
きぎ
)
の白い幹を——眺めた。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
窓のそとは、くゎッと明るくて、
樹々
(
きぎ
)
の葉も、
庭土
(
にわつち
)
も、白く燃えあがっているのに、部屋の隅々はおんどりとうす暗くていろいろな家具が、畳の上によろめくような
翳
(
かげ
)
を落している。
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
累々
(
るいるい
)
たる熔岩の集団には、こけがいよいよ深く、
樹々
(
きぎ
)
の枝には「さるおがせ」がつき、谷間にはししがしら、いので、かなわらび、しけしだ、おおしだ等
水竜骨
(
すいりゅうこつ
)
科の
隠花
(
いんか
)
植物が群生し
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
山は既に春深く
樹々
(
きぎ
)
は緑を競う。こんな長い美しい峠も多くはあるまい。石器の長水は昨夜からの夢である。
邑内
(
ゆうない
)
で車を下り郡守林明珣氏に会う。
石工
(
いしく
)
の村は邑外二十町ばかりの先昌里にあった。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
疲れてもまた元に返る力の消長の中に暖かい幸福があるのだ。あれあれ、今
黄金
(
こがね
)
の
珠
(
たま
)
がいざって遠い海の緑の波の中に沈んで
行
(
ゆ
)
く。
名残
(
なごり
)
の光は遠方の
樹々
(
きぎ
)
の上に
瞬
(
またたき
)
をしている。今赤い
靄
(
もや
)
が立ち昇る。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
世は
漸
(
ようや
)
く春めきて青空を渡る風
長閑
(
のどか
)
に、
樹々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずえ
)
雪の衣脱ぎ捨て、家々の
垂氷
(
たるひ
)
いつの間にか
失
(
う
)
せ、軒伝う
雫
(
しずく
)
絶間
(
たえま
)
なく白い者
班
(
まばら
)
に消えて、
南向
(
みなみむき
)
の
藁
(
わら
)
屋根は
去年
(
こぞ
)
の顔を今年初めて
露
(
あらわ
)
せば、
霞
(
かす
)
む
眼
(
め
)
の
老
(
おい
)
も
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
此辺は秋已に深く、
万樹
(
ばんじゅ
)
霜
(
しも
)
を
閲
(
けみ
)
し、狐色になった
樹々
(
きぎ
)
の間に、イタヤ
楓
(
かえで
)
は火の如く、北海道の銀杏なる桂は黄の
焔
(
ほのお
)
を上げて居る。旭川から五時間余走って、汽車は
狩勝
(
かりかつ
)
駅に来た。
石狩
(
いしかり
)
十勝
(
とかち
)
の
境
(
さかい
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この谿をおほへる
樹々
(
きぎ
)
のしげり葉を照らす光よともしむわれは
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
樹々
(
きぎ
)
の一家Une famille d'arbres
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
明色
(
めいしよく
)
な太平洋の海を椿の
樹々
(
きぎ
)
のあひだから眺めた。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
「
蟋蟀
(
こおろぎ
)
」「
樹々
(
きぎ
)
の一家」などその好適例である。
博物誌あとがき
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
いま、
樹々
(
きぎ
)
の
片枝
(
かたえ
)
の
青
(
あを
)
み
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
樹々
(
きぎ
)
をわたりて行く雲の
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
世は今
樹々
(
きぎ
)
も若いばえ
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
照
(
て
)
りわたった
夏
(
なつ
)
の日、風の夜、
流
(
なが
)
れる光、星のきらめき、
雨風
(
あめかぜ
)
、
小鳥
(
ことり
)
の歌、虫の
羽音
(
はおと
)
、
樹々
(
きぎ
)
のそよぎ、
好
(
この
)
ましい
声
(
こえ
)
やいとわしい声、ふだん
聞
(
き
)
きなれている、
炉
(
ろ
)
の
音
(
おと
)
、戸の音
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と
強情
(
ごうじょう
)
に、
樹々
(
きぎ
)
にせばめられている
細
(
ほそ
)
い道へと、むりやりに馬をすすめていった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
樹々
(
きぎ
)
を叩いて、障子にも、ポツリ、ポツリ、大粒な水のあとが
滲
(
にじ
)
み出している。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ちょうど
曙
(
あけぼの
)
の最初の光が東の方の
樹々
(
きぎ
)
の頂から輝きだしたころであった。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
打寄する浪は寂しく
南
(
みなみ
)
なる
樹々
(
きぎ
)
ぞ生ひたるかげふかきまで
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
樹々
(
きぎ
)
をわたりて行く雲の
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
それでも二人は、無言のままたがいに近寄っていた。野の中には他にだれもいなかった。そよとの風もなかった。ただ熱っぽい
戦
(
そよ
)
ぎが、
樹々
(
きぎ
)
の小さな葉を時々震わすばかりだった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そこでは、ヘブリディーズ
4
あたりの波のように、低い
下生
(
したばえ
)
が絶えずざわめいている。しかし天には少しの風もない。そして太古からの高い
樹々
(
きぎ
)
は強い
轟音
(
ごうおん
)
をたてて永遠に彼方此方へ揺れている。
沈黙:——神話
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
青々と
樹々
(
きぎ
)
の葉てらす天つ日はいま谷底の石をてらさず
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
樹々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずえ
)
に風が吹くのが、同じ高さに聞こえる。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
樹々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
を染めよかし
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
樹
常用漢字
小6
部首:⽊
16画
々
3画
“樹”で始まる語句
樹
樹立
樹蔭
樹木
樹脂
樹間
樹下
樹林
樹陰
樹梢