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やすやす
ふりがな文庫
“
易々
(
やすやす
)” の例文
苗代川は現実の世から見ればまさに夢の国だとも思える。進歩を誇る吾々に
易々
(
やすやす
)
と
佳
(
よ
)
いものが出来にくいのと何たる対比であろうか。
苗代川の黒物
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それを道庵が出て
易々
(
やすやす
)
と解決をつけてしまったから、今まで黒山のように人だかりしていた連中が、ここで一度に
哄
(
どっ
)
と
喝采
(
かっさい
)
しました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
だが、
易々
(
やすやす
)
と斬り得る足もとの敗者を斬らずに前髪の美少年は、身をかわした
機
(
はず
)
みに
弾
(
はず
)
みを加えて、ぶうんと横側の敵へ当って来た。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はゝゝゝゝ、大丈夫だよ。人間はそう
易々
(
やすやす
)
とは、死なないよ。いや待っていたまえ。今に、泣きを入れに来るよ。なに、先方が泣きを
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今の彼女は
倶係震卦教
(
ぐけいしんけきょう
)
の、立派な体得者であるのだから、尺地術を念じ行いさえすれば、
易々
(
やすやす
)
として木曽へ帰って行くことが出来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
如何に天才でも非凡人でもこう
易々
(
やすやす
)
とトントン拍子に成上ると勢い
矜驕
(
きょうきょう
)
となり
有頂天
(
うちょうてん
)
となるは人間の免かるべからざる弱点である。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
三郎兵衛、何を
行
(
や
)
ろうとするのであろう? 広海屋のいのちを狙うに相違ないが、まさか、
易々
(
やすやす
)
と、あの
剛腹
(
ごうふく
)
な男を殺すことは出来まい。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そんな大事件が、自分の一挙手によって、
易々
(
やすやす
)
と実現出来るのだ。それを思うと、私は、不思議な得意を感じないではいられませんでした。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
きっと、これには事情があるのだろう。ただ心境の変化、電撃的翻意くらいで、そう
易々
(
やすやす
)
と片付けられるものではあるまい。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
俺は自分の持物のようにリュックを
易々
(
やすやす
)
と
掠
(
かす
)
めていたのだ。これはどういうことだろう。そう思うと俺はちょっと惑乱した。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
こう
易々
(
やすやす
)
と、敵軍のため、自国領土内へ侵入されるなんて、予想もしなかったことだ。わがスパイ局の連中は、一体なにをしていたのだろう。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
空も
路
(
みち
)
も暗かった。三人はポルタ・ヌオバの門番に
賂
(
まいない
)
して
易々
(
やすやす
)
と門を出た。門を出るとウムブリヤの平野は真暗に遠く広く眼の前に
展
(
ひら
)
け
亘
(
わた
)
った。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
大事件が人の知らない間に案外
易々
(
やすやす
)
と仕遂げられた例はこれまでにもしばしばあるので、検視の役人たちもその点にはさのみ疑いを置かなかった。
半七捕物帳:36 冬の金魚
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だが、彼女だって、そう
易々
(
やすやす
)
と玉島の家の中には這入れないだろう。殊に女の事だ。玉島に組み伏せられたかも知れない。どうかそうあって呉れ!
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
石コロだらけの急坂を
辿
(
たど
)
っておられ、その間に土居先生は
易々
(
やすやす
)
と先廻りして第一着に歌川家へ戻られたのでありました。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ところが、そういう訳だったから、私の小さな軽いボートが
易々
(
やすやす
)
と安全に波に乗ってゆく有様は驚くべきものだった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
泥棒の入ったのは、南の縁側、
僅
(
わず
)
かばかりの
隙
(
すき
)
から
鋸
(
のこぎり
)
を入れて、かなり大きい穴を二つまで開けた上、
輪鍵
(
わかぎ
)
も
桟
(
さん
)
も
易々
(
やすやす
)
と外したことはよくわかります。
銭形平次捕物控:014 たぬき囃子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と招き寄せると、不思議や
立
(
た
)
ち
竦
(
すく
)
んで石のようになっていた筈の馬が、今は
易々
(
やすやす
)
と動き出して直ぐに王の傍へ来た。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
ヘラクレスの十二の仕事は、わたしの隣人たちがくわだてているそれらにくらべると
易々
(
やすやす
)
たるものである。前者は十二だけであって、やがて終わりになる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
見よ! 今こそ世界的の発明、驚くべき潜水艦C・C・Dは、動き出した、この潜水艦ひとつあれば、どんな国と戦争しても
易々
(
やすやす
)
と勝つことができるのだ。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いとも
易々
(
やすやす
)
と、一つの美しき魂を
奪去
(
うばいさ
)
った「犯人」の手ぎわには、嫉妬に似た
憤
(
おそ
)
ろしさを覚えるのであった。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
八雲が
易々
(
やすやす
)
としてそう解し去ったのは、何かその意味を補うだけの前提があったものと見なければならない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そしていかにも
易々
(
やすやす
)
と
脚
(
あし
)
の
下
(
した
)
に
水
(
みず
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
けて、
見事
(
みごと
)
に
泳
(
およ
)
ぎ
廻
(
まわ
)
るのでした。そしてあのぶきりょうな
子家鴨
(
こあひる
)
もみんなと
一緒
(
いっしょ
)
に
水
(
みず
)
に入り、
一緒
(
いっしょ
)
に
泳
(
およ
)
いでいました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
いずくんぞ知らん、芥川はこの「つまり」を掴みたくて血まなこになって追いかけ追いかけ、はては、看護婦、子守娘にさえ
易々
(
やすやす
)
とできる毒薬自殺をしてしまった。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
巨人佐柄木に
易々
(
やすやす
)
と
小腋
(
こわき
)
に抱えられてしまったのだ。手を振り足を振るが巨人は知らん顔をしている。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
そう言う皮膚は、あんなに
易々
(
やすやす
)
と傷口の周囲までまくれて
了
(
しま
)
うものかね? 僕はそう思えないんだ。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
『商売は儲かる』という人は、売上げから元値を引けば、後はそっくりそのまま利益として残るものとでも見るのであろうが、商売はそんなに
易々
(
やすやす
)
とは行われていない。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
どうして、あんなに
易々
(
やすやす
)
と人間を殺し得るのだろう! どうして、あの男が殺されなければならないのだろう! そんなにまでしてロシア人と戦争をしなければならないのか!
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
けれども私の心配なのは、あの強情な、
殊
(
こと
)
に私に対しては
一
(
ひ
)
と
入
(
しお
)
強硬になりたがる彼女が、仮に証拠を突きつけたとしても、そう
易々
(
やすやす
)
と私に頭を下げるだろうかと云うことでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この
近所
(
きんじょ
)
の
揚弓場
(
ようきゅうば
)
の
姐
(
ねえ
)
さんなら
知
(
し
)
らねえこと、かりにもお
前
(
まえ
)
さん、
江戸
(
えど
)
一
番
(
ばん
)
と
評判
(
ひょうばん
)
のあるおせんでげすぜ。いくら
若旦那
(
わかだんな
)
の
御威勢
(
ごいせい
)
でも、こればッかりは、そう
易々
(
やすやす
)
たァいきますまいて
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
踠
(
もが
)
くだけ無駄で、童伊がいけねえっと近よってきた時には、早くも数間流されていた。着物ごとぬれると、犬ころよりもみじめだった。童伊は水の中で
易々
(
やすやす
)
と大人をおぶることが出来た。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
しかし、素人はだますことができても、専門家はそう
易々
(
やすやす
)
とはだまされない。
或る探訪記者の話
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「僕は知っている、知っているよ。去年も君たちと一緒に来たことがあるからな。僕らはこの病院を検閲したんだよ。僕は何もかもすっかり知ってるんだから、そう
易々
(
やすやす
)
とは
騙
(
だま
)
されんぞ。」
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
たかが船長
附
(
つき
)
のボーイではないか、お茶を運んだり、靴を磨いたり、寝台の毛布を
畳
(
たた
)
んだりする役目のボーイが、この千五百
噸
(
トン
)
級の汽船を、海賊たちから
易々
(
やすやす
)
と、奪うことが出来るものか。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
見す/\
敵本
(
てきほん
)
と分っていても、理の当然で何うも仕方がない。同じことならばと思って、到頭快く引き受けてやった。
稀
(
たま
)
には
先方
(
むこう
)
の言い分を
易々
(
やすやす
)
と通して置かないと後から口を利けないからね
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
文麻呂様のような負けず嫌いのお方が、そのように夢中になられた
造麻呂
(
みやつこまろ
)
の娘を、大納言様なぞのために、どうしてそう
易々
(
やすやす
)
と
諦
(
あきら
)
めてしまう気になったのだろうと云うことなのでございます。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
大体京都に都が定められたのは嵯峨天皇の御時であって、もう既に四百余年も経っているのであるから、何か特別の事情の無い限りはそう
易々
(
やすやす
)
と都を改める等と云う事はあるべからざる事なのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
易々
(
やすやす
)
と門を明けることは、勅命にもそむく事であり、と言って、年来、信仰して居ります山王様に弓矢をひいたとあっては、どのような罰を蒙ります事やら、弓矢の道も捨てねばならぬ次第ともなり
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
この小さい屋根の下には、これまで
代
(
かわ
)
る
代
(
がわ
)
る、𨿸、兎、豚がすんでいたのだが、今はからっぽで、休暇中は、いっさいの所有権をにんじんが独占している。彼は
易々
(
やすやす
)
とそこへはいり込むことができる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「市の字を、連れて来るッたって、お袖さんのいうように、そう
易々
(
やすやす
)
とゆくものじゃアねえ。やり損なったら、あぶないものだ」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
懺悔の重さに耐えかねてのたうち廻わっている心持ちが、
汝
(
うぬ
)
のような偽善者に
易々
(
やすやす
)
解って堪まるものか。俺はお前と反対なのだ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それにしても、余りの
金高
(
かねだか
)
である。いくら可愛い子供の為とはいえ、
易々
(
やすやす
)
と渡すのは、少し変だ。相手の男が果して信用して受取るであろうか。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
成功を信じていたとすれば、山際の無邪気さもいささかナンセンスであるが、しかし何よりフシギなのは、
易々
(
やすやす
)
と強奪された三人のダンナ方である。
我が人生観:06 (六)日大ギャング
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
故
(
ゆえ
)
に、男湯の方の感電を計画し、またそれを
遂行
(
すいこう
)
するための技術上の操作は、十分間も要さずに
易々
(
やすやす
)
と行われた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
黒物は救われる約束の
許
(
もと
)
で作られているのである。誰が作ろうと、何が出来ようと、
何時
(
いつ
)
こしらえようと、そこに
易々
(
やすやす
)
と美しさが現れるのに不思議はない。
苗代川の黒物
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
米友はついに
怺
(
こら
)
え兼ねて、その杖を塀のところに立てかけて、それに足をかけて飛び上りました。天性の敏捷な米友は
易々
(
やすやす
)
と塀を乗り越えてしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昨日
(
きのう
)
は、不当な大金を、お菓子をもらう子供のように、
易々
(
やすやす
)
ともらってしまい、もらった後で、相当考えてみたが、準之助氏の気持が、順逆いずれにもせよ
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「それが貴女はそう軽く云うけれども、真実というものはそう
易々
(
やすやす
)
と口にできないばあいもありますからね」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「そう言えばそうですが、
易々
(
やすやす
)
と御金蔵へ入るのは、係り役人の外には出来ないはずじゃございませんか」
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
したがって、
天晴
(
あっぱ
)
れの気性者。その上、身の働きの素早さは、言語に絶し、目から鼻へ抜けるような鋭い機智で、どんな場合にも、
易々
(
やすやす
)
と、危難の
淵
(
ふち
)
を乗り切るのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
易
常用漢字
小5
部首:⽇
8画
々
3画
“易々”で始まる語句
易々諾々