旅宿りよしゆく)” の例文
扨も忠八は馬喰町なる旅宿りよしゆくかへりてお花夫婦に打對うちむかひ今日向島の渡舟わたしにて斯々かく/\の事ありしと告げれば夫婦は悦ぶ事大方ならず只行方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
代助は平岡にわかれてから又引き返して、旅宿りよしゆくへ行つて、三千代みちよさんに逢つてはなしをしやうかと思つた。けれども、なんだかけなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……次手ついでに、おなじ金澤かなざはまち旅宿りよしゆくの、料理人れうりにんいたのであるが、河蝉かはせみもちおそれない。むしらないといつてもい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われ江戸に逗留とうりうせしころ、旅宿りよしゆくのちかきあたりに死亡ありて葬式さうしきの日大あらしなるに、宿やどあるじもこれにゆくとて雨具あまぐきびしくなしながら、今日けふほとけはいかなる因果いんくわものぞや
徳川時代のだい諸侯は、参覲交代さんきんかうたい途次とじ旅宿りよしゆくへとまると、かならず大恭だいきようは砂づめのたるへ入れて、あとへ残さぬやうに心がけた由。その話を聞かされたら、彼等もこの弱点には気づいてゐたと云ふ気がしたり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うかめ大岡殿の仁心じんしんを悦びかんとぶが如くに馬喰町の旅宿りよしゆくもどれば友次郎お花は今日の首尾しゆび如何なりしと右左みぎひだりより問掛とひかけるに忠八は越前守殿の仁智じんち概略あらまし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われ江戸に逗留とうりうせしころ、旅宿りよしゆくのちかきあたりに死亡ありて葬式さうしきの日大あらしなるに、宿やどあるじもこれにゆくとて雨具あまぐきびしくなしながら、今日けふほとけはいかなる因果いんくわものぞや
(おとまりは何方どちらぢやな、)といつてかれたから、わたし一人旅ひとりたび旅宿りよしゆくつまらなさを、染々しみ/″\歎息たんそくした、第一だいいちぼんつて女中ぢよちう坐睡ゐねむりをする、番頭ばんとう空世辞そらせじをいふ、廊下らうか歩行あるくとじろ/\をつける
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以て紀州表きしうおもてへ調方につかはし候ひしが今朝やうや歸府きふ仕つり逐一相糺あひたゞし候處當時八山に旅宿りよしゆく致し居天一坊といふはもと九州浪人らうにん原田嘉傳次と申者のせがれにて幼名えうみやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
江河こうが潔清けつせいなれば女に佳麗かれい多しと謝肇淛しやてうせつがいひしもことはりなりとおもひつゝ旅宿りよしゆくかへり、云々しか/″\の事にて美人びじんたりと岩居がんきよに語りければ、岩居いふやう、かれは人の知る美女なり
おもしろいことは、——停車場ていしやば肱下ひぢさがりに、ぐる/\と挽出ひきだすと、もなく、踏切ふみきりさうとして梶棒かぢぼうひかへて、目當めあて旅宿りよしゆくは、とくから、心積こゝろづもりの、明山閣めいざんかくふのだとこたへると、うかね、これ
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
江河こうが潔清けつせいなれば女に佳麗かれい多しと謝肇淛しやてうせつがいひしもことはりなりとおもひつゝ旅宿りよしゆくかへり、云々しか/″\の事にて美人びじんたりと岩居がんきよに語りければ、岩居いふやう、かれは人の知る美女なり
またるよ、とふられさうなさき見越みこして、勘定かんぢやうをすまして、いさぎよ退しりぞいた。が、旅宿りよしゆくかへつて、雙方さうはうかほ見合みあはせて、ためいきをホツといた。——今夜こんや一夜いちや籠城ろうじやうにも、あますところの兵糧ひやうらうでは覺束おぼつかない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一年ひとゝせ江戸に旅宿りよしゆくせしころ或人あるひといふやう、ちゞみに用ふるうむにはその処の婦人ふじんさそひあはせて一家にあつまり、その家にて用ふるうみたて此人々たがひにその家をめぐりてうむきゝしがいかにといひき。
つて、旅宿りよしゆくました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)