損失そんしつ)” の例文
周旋屋では、一人の女のために、大事なお得意を棒にふることは堪へられないので、その女が遊廓へ掛けた損失そんしつを負はねばならない。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
實際じつさい大地震だいぢしん損害そんがいおいて、直接ちよくせつ地震動ぢしんどうよりきたるものはわづか其一小部分そのいつしようぶぶんであつて、大部分だいぶぶん火災かさいのためにしようずる損失そんしつであるといへる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
はたけ作主さくぬしその損失そんしつ以外いぐわいにそれををしこゝろからかげいきほはげしくおこらうともそれはかへりみるいとまたない。勘次かんじせた茄子畑なすばたけもさうしておそはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
僕等ぼくらはもう廣小路ひろこうぢの「常盤ときわ」にあのわんになみなみとつた「おきな」をあぢはふことは出來できない。これは僕等ぼくら下戸仲間げこなかまためにはすくなからぬ損失そんしつである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
如何いかんとなれば、人間にんげん全體ぜんたいは、うゑだとか、さむさだとか、凌辱はづかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレツトてき恐怖おそれなどの感覺かんかくから成立なりたつてゐるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その物吝ものをしみがいか損失そんしつ折角せっかくうつくしさも、その偏屈へんくつゆゑに餓死うゑじにをして、そのうつくしさを子孫しそんにはつたへぬ。
かの明治二十九年めいじにじゆうくねん三陸地方さんりくちほう海嘯つなみ被害區域ひがいくいきなが百五十ひやくごじゆうまいるにわたり、死者ししや二萬二千人にまんにせんにん重傷者じゆうしようしや四千四百人しせんしひやくにんいへや、ふねながされたもの、農地のうち損失そんしつなどで損害そんがい總額そうがく數千萬圓すうせんまんえんのぼりました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そして此等これら損失そんしつほとんど全部ぜんぶ地震後ぢしんご火災かさいるものであつて、被害民ひがいみん努力どりよく次第しだいによつては大部分だいぶぶんまぬかられるべき損失そんしつであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
如何いかんとなれば、人間にんげん全体ぜんたいは、うえだとか、さむさだとか、凌辱はずかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレットてき恐怖おそれなどの感覚かんかくから成立なりたっているのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しか他人たにんいたむ一にち其處そこ自己じこのためには何等なんら損失そんしつもなくて十ぶん口腹こうふくよく滿足まんぞくせしめることが出來できる。他人たにん悲哀ひあいはどれほど痛切つうせつでもそれは自己じこ當面たうめん問題もんだいではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のみならず僕等ぼくら東京とうきやうためにもやはりすくなからぬ損失そんしつである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかも其燒失區域そのしようしつくいきまちもつと重要じゆうよう部分ぶぶんめてゐたので、損失そんしつ實際じつさい價値かちさら重大じゆうだいなものであつたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
季節きせつむねしくつひやすことが一にちでも非常ひじやう損失そんしつであるといふ見易みやす利害りがい打算ださんからかれ到頭たうとうまかされてまた所懸命しよけんめい勞働らうどう從事じうじした。かれはもう卯平うへい一言ひとことくちかなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)