もた)” の例文
東京天王寺てんのうじにて菊の花片手に墓参りせし艶女えんじょ、一週間思いつめしがこれその指つきを吉祥菓きっしょうかもたたも鬼子母神きしぼじんに写してはと工夫せしなり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
麹町三丁目庄兵衞地借瀬戸物渡世忠兵衞同人妻とみ 其方共八ヶ年以前平川天神裏門うらもん前にて町醫師村井長庵こと雨中うちうかさもた立戻たちもどり候を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
祝酒しゅくしゅとは云いながら屠蘇を勧めたはわしが悪かった、又酔っておる者に大切な物をもたして帰し、殊に夜中やちゅうなり、何うも私があやまり
このお千世の着ていたのは、しかしそれではなく、……清葉が自分のをもたして寄越よこしたのであることを、ここで言いたい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぼく眞面目まじめこたへたのです。まつたぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんです。故意わざ奇妙きめうこたへをして諸君しよくんおどろかすつもりけつしてもたないので。これまでもぼく出身しゆつしん學校がくかうきかれましたが。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
種々さま/″\いはくのつきし難物なんぶつのよしなれども、もたねばならぬ義理ぎりありてひきうけしにや、それともちゝこのみて申うけしか、そのへんたしかならねど勢力せいりよくおさ/\女房天下にようぼうてんかと申やうな景色けしきなれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此夜は山中さんちゆうに一宿の心なれば心用のためつゝをももたせしに、たれの上手しかも若ものなりしが光りをまとにうたんとするを、老人ありてやれまてとおしとゞめ、あなもつたいなし
書認かきしたゝめ有ける故夫なら翌日あすまたこれもたせて取に上ますが田舍者ゐなかもの兎角とかく迷路まごつきやすき故下谷と云てもわからぬことが有つて間取ひまどるから大屋さんの名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お前さんが丹精して下すって本当に有難い、その御親切は忘れません、お前さんの様な優しい人を園の亭主にもたいと思いますとこう云ってね、お前のあねさんが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
考えて見ればいくら叔母だって、わざわざ伊予紋まで鏡をもたして寄越よこすってことは容易でない。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
種々さまざまいはくのつきし難物のよしなれども、もたねばならぬ義理ありて引うけしにや、それとも父が好みて申受しか、その辺たしかならねど勢力おさおさ女房天下と申やうな景色なれば
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此夜は山中さんちゆうに一宿の心なれば心用のためつゝをももたせしに、たれの上手しかも若ものなりしが光りをまとにうたんとするを、老人ありてやれまてとおしとゞめ、あなもつたいなし
しかし、ぼくけつしてさういふ輕薄けいはくこゝろもつふのではないのです。諸君しよくんうちぼくおなじく大島小學校おほしませうがくかうられたかたあつたなら、矢張やはりぼくおなじやうなじやうもたれるだらうとしんじます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あともたせる身に成るべしと專ら取沙汰致候程の者なれどもおやの心には折々をり/\思出し不便ふびんに存じ候となみだながらに申立しにそ此時次右衞門三五郎はかほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大道餅だいだうもちふてなり三ヶにち雜煮ぞうにはしもたせずば出世しゆつせまへの三すけおやのある甲斐かひもなし、晦日みそかまでにかねりやうひにくゝともこの才覺さいかくたのみたきよしをしけるに、おみねしばらく思案しあんして
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
花「いま新造しゅに小説本でももたせてよこすからね、屹度寝てしまッちゃ厭よ」
こちの人いて下さんせ、と洒落しゃれにもたしなめてしかるべき者までが、その折から、ちょいと留女の格で早瀬に花をもたせたのでも、河野一家いっけに対しては、お蔦さえ、如何いかんの感情を持つかが明かに解る。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)