宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「まあ、いいさ、そのうちには何とか手蔓があってわかるだろう、都合によっては、わたしの方で当りがつくかも知れない」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それでも彼は強情にこの按摩から何かの手蔓を探り出そうと試みた。今もむかしも根気が乏しくては出来ない仕事である。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
第五巻の講ぜられる日などは御陪観する価値の十分にあるものであったから、あちらこちらの女の手蔓を頼んで参入して拝見する人も多かった。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一商人として:――所信と体験―― (新字新仮名) / 相馬愛蔵、相馬黒光(著)
財産と手蔓とがないので、彼女たちは結婚することもできません。働くことに追われてばかりいるので、知的生活を営んでそれに愛着し慰められることもできません。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そして直接工場に入つて職工の手伝ひをするのであるから職工等に知り合ひも出来、職工になる手蔓を得るにもよいと云ふことであつた。で私は善作さんにそのことを相談した。
人格を分析すると、手蔓も少し入っているけど、要するに行政官は帝大法科出身者のうち最も優秀にして最も人格の高いものがなる。この故に行政官は地の塩である。世の光である
それでも判らずにおりましたが、飲み屋の女が唄う鼻唄から気がついて、聞いてみたら女飴屋の口真似だとか、それを手蔓に方々聞き、ここへ来てみると子供の声で、昔聞いた節の唄
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
旗本退屈男:10 第十話 幽霊を買った退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
そしてそれは同時に清逸自身の存在を明瞭にし、それが縁になって、東京に遊学すべき手蔓を見出されないとも限らない。清逸は少し疲れてきた頭を休めて、手を火鉢に暖ためながらこう思った。
「浪人の身で」と大和守は云った、「かように高価なものが自由になるとは、よほど内福のうえによき手蔓があることだろうな」
樅ノ木は残った:04 第四部 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その死んだ日か、前に來た客のことを訊きましたが、下等な船比丘尼の客などは誰も氣に留めず、そこにも探索の手蔓は絶えてしまひました。
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
海舟という偉大な総大将が復活の手蔓を全然与えなかったのだ。明治新政府の政治力によるものではなかったのである。
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
女房などの中へ手蔓を求めて姫君へ手紙を送る方法もあるし、直接に意志を源氏へ表明することも可能であるが、そうした大胆なことはできずに
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
手蔓のない、しかも焦眉の急に応ずるための財力の発動としては、その方法に、相当微細にして巧妙なるものがなければ、かえって事を仕損ずる。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)