たはむ)” の例文
新字:
『罪造りの横笛殿、あたら勇士に世をてさせし』。あゝなかたはむれに、なか法界悋氣ほふかいりんきの此一語、横笛が耳には如何に響きしぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
或日寄宿舍の窓から同室の一人が校庭で遊ぶ誰彼の顏をたはむれにレンズで照してゐると、光線が山本の顏を射たのであつた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
内證ないしよう婦人ふじんなどおたはむれで、それで座敷ざしきとほせぬのであらう。ならなほことたつてとおつしやる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
并べたて大きに骨が折れたで有らう最早もはや是にてお互ひに心に掛る雲もなしのみたはむるゝ有樣は大膽不敵の振舞ふるまひなりひと盛成さかんなるときは天に勝の道理にて暫時しばらくの内は長庵も安樂に世を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それ、ひめせた。おゝ、あのやうなかるあしでは、いつまでむとも、かた石道いしみちるまいわい。戀人こひびとは、なつかぜたはむあそぶあのらちもない絲遊かげろふのッかっても、ちぬであらう。
斯くをどり狂ひ笑みたはむれて、一歩一歩地獄に進み近づくなり。く奈落の底に往きて狂ひ戲れよといふ。僧の聲は漸く大に、我耳はこの拿破里なまりを聞くこと、一篇の詩を聞く如くなりき。
たはむれに枯草かれくさうつした子供等こどもらは、はるかにえる大勢おほぜい武士ぶし姿すがたおそれて、周章あわてながらさうと、青松葉あをまつばえだたゝくやら、えてゐるくさうへころがるやらして、しきりにさわいでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しかれども或るものはたはむれのごと
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
命運さだめよなにのたはむれぞ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かくはまは、名古屋通なごやつうむねをそらした杉野氏すぎのし可笑をかしがつて、當時たうじ先生せんせい御支配人ごしはいにんたはむれにあざけつた渾名あだなである。御存ごぞんじのとほり(さま)を彼地かのちでは(はま)といふ。……
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
机邊にたはむれるユウ子さんを見て、「われと遊ぶ子」と書かうかとか、いや、「互に憐恤れんじゆつあるべし」に決めようとZ・K氏の言つてゐる、そのバイブルの章句に苦笑を覺えながらも
足相撲 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
離れんとしつ、たはむれつ…………
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かたなゝめにまへおとすと、そでうへへ、かひなすべつた、……つきげたるダリヤの大輪おほりん白々しろ/″\と、れながらたはむれかゝる、羽交はがひしたを、かるけ、すゞしいを、じつはせて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たはむれに箱根々々はこね/\びしが、ひとあり、櫻山さくらやまむかへる池子山いけごやまおく神武寺じんむじあたりより、萬兩まんりやうふさやかにいたるを一本ひともとかへりて、此草このくさみきたかきこと一ぢやうけだ百年ハコネ以來いらいのものなりほこ
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)