よろこび)” の例文
べて神聖しんせいものはてよろこびる。われらがしゆきみはこのあかいばらうへに、このわがくちに、わがまづしい言葉ことばにも宿やどつていらせられる。
こゝろたくさへおもほゆ。彼また吾をしたれば、おのれがよろこびにえとゞかねばとて、卑しみ果つることつゆなかりき。
一僧 (旧字旧仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
自分じぶん濡鼠ぬれねずみやうになつてことも、すくなからず潮水しほみづんではらくるしくなつてことわすれて、むねおどろきよろこびに、をどりつゝ、じつながむる前方かなた海上かいじやう
「あしたからテニスをやろう。」そんなことも考へながら、「人の心といふものは、ちよつとした考へ方によつて、悲しくもなればよろこびにもなるものだ。」
(新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何故なら彼の親友は、そのハガキを読んで苦笑したであろうから——ほとんど笑うということを知らない親友を苦笑にしろ笑わせたということは、彼自身のよろこびでもあった。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
ばあさんにも、おのぶにも少しも気がつかなかつた様子でしたが、私は子供心に此老夫婦のよろこびの中には私の一銭銅貨がよつほど役にたつて居るといふことを気づき升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
ねんごろにきやくをもてなす花楸樹はなかまど、小鳥が毎年まいとしあてにする降誕祭ノエルまつり飾木かざりぎよ、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
眼はパツチリした二皮瞼ふたかはめで、瞳は邪氣無あどけない希望とよろこびとに輝いてゐるかと見られた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
民間に学校を設けて人民を教育せんとするは、余輩、積年の宿志なりしに、今、京都に来り、はじめてその実際を見るを得たるは、そのよろこび、あたかも故郷に帰りて知己朋友に逢うが如し。
京都学校の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「この間こしらえた旦那様の外套マントでも取られようものなら、それこそ騒ぎでございましたね。御宅おうちでなくって坂井さんだったから、本当に結構でございます」と真面目まじめよろこびの言葉を述べたので
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
讃美の歌をとなえ、聖書を朗読し、かつて彼をしてその父母の安否を問わんがため一時郷里に帰省せしむる時讃美と祈祷とを以て彼の旅出たびでを送りし時、暫時の離別も苦しけれどもまた遭う時のよろこびたのし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
あるはのぞみいだきつゝ、よろこびわれにあらしめつ
に靜まれる日の朝け、曾て覺えぬよろこび
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
よろこびはすべて飛躍である。
不可能 (旧字旧仮名) / エミール・ヴェルハーレン(著)
いや勿論もちろん、これには御主おんあるじ擁護おうごもあらうて。自分じぶんふことは、兎角とかく出放題ではうだいになる、胸一杯むねいつぱいよろこびがあるので、いつもくちからまかせを饒舌しやべる。
いそ其方そなたると少年せうねんは、いまこゑおどろ目醒めざめ、むつときて、半身はんしん端艇たんていそとしたが、たちまおどろよろこびこゑ
あなた僕の履歴を話せっておっしゃるの? 話しますとも、じっき話せっちまいますよ。だって十四にしかならないんですから。別段たいしたよろこびも苦労もした事がないんですもの。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
すこしは駈引かけひきもありさうな戀人、しやれた心配もする柳の木よ、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
すべてのよろこび満足まんぞく自負じふ自信じゝんも、こと/″\く自分をツてしまツて、かはり恐怖きようふが來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
眞面目まじめよろこび言葉ことばべたので、宗助そうすけ御米およねすこ挨拶あいさつきゆうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
置きたれど、あらたよろこび得させむと
きその日は (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わたしの爲に祈つてくれ、おきなびた水松いちゐの木よ、憐愍あはれみ深き木、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ものみな、こゝに命無く、よろこびも無し、はた憂無し。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ものみな、こゝに命無く、よろこびも無し、はた憂無し。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆめ、な語りそ、人の世はよろこびおほきうたげぞと。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆめ、な語りそ、人の世はよろこびおほきうたげぞと。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)