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怪訝
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けげん
ふりがな文庫
“
怪訝
(
けげん
)” の例文
「無い?」わざと
怪訝
(
けげん
)
な顏をして、「望みの竹生島も見せてやつたし、京都、大阪、須磨や奈良へも連れてツてやつたぢやないか?」
泡鳴五部作:01 発展
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
……そんな私の心のなかの
動揺
(
どうよう
)
には気づこう
筈
(
はず
)
がなく、彼女は急に早足になった私のあとから、何んだか
怪訝
(
けげん
)
そうについて来ながら
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
法水は
怪訝
(
けげん
)
そうに相手の顔を
瞶
(
みつ
)
めていたが、「しかし、本当の事を云うんですよ。伸子さん、あの札はいったい誰が書いたのですか」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と、正太は
怪訝
(
けげん
)
な顔をしているとき、奥から人波をかきわけながらぜいぜい息を切らせてかけつけた一人の禿げ頭の老人があった。
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
日本人
(
にほんじん
)
が
固有
(
こゆう
)
の
風習
(
ふうしふ
)
を
捨
(
す
)
てゝ
外國
(
ぐわいこく
)
の
慣習
(
くわんしふ
)
にならうは
如何
(
いか
)
にも
外國
(
ぐわいこく
)
に
對
(
たい
)
して
柔順過
(
じうじゆんす
)
ぎるといふ
怪訝
(
けげん
)
の
感
(
かん
)
を
起
(
おこ
)
さしむるに
過
(
す
)
ぎぬと
思
(
おも
)
ふ。
誤まれる姓名の逆列
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
▼ もっと見る
夫は
怪訝
(
けげん
)
そうな目で彼女を見た。土佐犬のような顔! が、その犬のように
尖
(
とが
)
った口を急に
侮蔑
(
ぶべつ
)
の笑いに
歪
(
ゆが
)
めて彼女の夫は駆けだした。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
これで、明石まで行けるのかと、料金のやすさを
怪訝
(
けげん
)
に思い浮べているとき、トラックは、急に速力をおとして、畑の横に停った。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
俯向きながら汗を拭いている私の顔に探偵は
怪訝
(
けげん
)
そうな眼を
瞠
(
みは
)
っていたが、やがて卓上に腕を組みながら気の毒そうに視線を
逸
(
そ
)
らせた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一幕をワヤにした若造は、何が故に、みんなから、そんなに笑われるのかと
怪訝
(
けげん
)
な
面
(
かお
)
が、またおかしいと言ってみんながまた笑う。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そんな人がいるのかと云わぬばかり
怪訝
(
けげん
)
な顔をした。ほとんどと云ってよい程、義経の存在などは、下のほうには知られていない。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小村に送られて階段を降り、卓の間を縫って扉口まできたが、こんどは先刻のように
怪訝
(
けげん
)
らしい眼で眺める人は誰も居なかった。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
お巡りさんは一冊一冊手に取って見ていたが、どれもが赤い本でも黒い本でもなく、むしろ抹香臭いものであるのに
怪訝
(
けげん
)
な面持になった。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
またそんな意味ではなく、あまり不思議な詰問が二度まで続いたので、二度目には
怪訝
(
けげん
)
に思って顔を上げたのかとも考えられる。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この二字の前に
怪訝
(
けげん
)
な思いをしなければならなかった津田は、一方から見て、またその皮肉を第一に
首肯
(
うけが
)
わなければならない人であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
助手は
怪訝
(
けげん
)
そうに教授の顔を見上げていいました。「矢野君は今日留守で御座いますから、先生と御一緒に解剖するはずで御座いましたが」
稀有の犯罪
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
文麻呂 (
怪訝
(
けげん
)
な顔で、唄の聞えて来る方向を不気味そうに見やり)……清原。………あれは何だい? 何だろう、あの唄は?
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
久さんは
怪訝
(
けげん
)
な眼を上げて、「え?」と
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出す。「何さ、今しがたお広さんがね、
甜瓜
(
まくわ
)
を
食
(
く
)
ってたて事よ、ふ〻〻〻」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
猫が、奇妙なこの場の様子を解しかねたように、金五郎が刀を動かすたびに、
怪訝
(
けげん
)
な
眸
(
まなざし
)
で見る。盥の傍で、丸くなって眠っているのもある。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「はあどうか
仕
(
し
)
あんしたんべか、お
内儀
(
かみ
)
さん」
勘次
(
かんじ
)
は
怪訝
(
けげん
)
な
容子
(
ようす
)
をして
且
(
かつ
)
辛
(
つら
)
い
厭
(
いや
)
なことでもいひ
出
(
だ
)
されるかと
案
(
あん
)
ずるやうに
怖
(
お
)
づ/\いつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ドライ・アイスの破片は方々にとび散って、盛んに白い煙をあげる。飛行場の人たちは、
怪訝
(
けげん
)
そうな顔をしていたが、別に叱りもしなかった。
白い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
汽車はあまり混んで居なかつたが、車中の人は、皆な
怪訝
(
けげん
)
さうに私をじろ/\と眺めた。私は何となく心が
慄
(
ふる
)
へた。皆
掏摸
(
すり
)
ではないかと思つた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
怪訝
(
けげん
)
な顔をするのを、かまわずにツイと押しとおって、長屋わきから中門口へかかる。六尺棒を持った番衆が四人突っ立っていて、どちらから。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
引込
(
ひきこ
)
まれて、はッと礼を返したが、それッきり。
御新姐
(
ごしんぞ
)
の方は見られなくって、
傍
(
わき
)
を向くと
貴下
(
あなた
)
、
一厘土器
(
いちもんかわらけ
)
が
怪訝
(
けげん
)
な
顔色
(
かおつき
)
。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
松島は
怪訝
(
けげん
)
な顔をしたが、またあの石屋にでも誘い出されたのではないかと、しばらく忘れていた石屋のことを何となく思い出したりしていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
太田が
怪訝
(
けげん
)
に思うことの一つは、その男が今まで空房であった雑居房にただひとり入れられているということであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
私は今以て
怪訝
(
けげん
)
に堪えませぬが、そのような事は気付かぬながらに、妻ノブ子は友人として衷心からの感謝をコンドルに捧げておりましただけで
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
立ち並ぶそれらの大樹の根本を
塞
(
ふさ
)
ぐ
灌木
(
かんぼく
)
の茂みを、くぐりくぐってあちらこちらに
栗鼠
(
りす
)
や白
雉子
(
きじ
)
が
怪訝
(
けげん
)
な顔を現わす。
決闘場
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
小僧は
怪訝
(
けげん
)
な顔をして、「
俺
(
おいら
)
はそんなとこを見たことはねえよ。だって、あれからまだ一度も来たのは知らねえもの」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
これが九十郎には
怪訝
(
けげん
)
であったが、湖へ落ちた時杭などの先で、脇腹を突いたに相違ないと、そんなように解釈した。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二人の面には驚愕と
怪訝
(
けげん
)
の感情が電の如く閃き現れたが、互にあたりを憚ったらしくアラとも何とも言わなかった。
にぎり飯
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
青年は最初は何の事だか分からず、
怪訝
(
けげん
)
の顔をしていたが、仏法僧鳥の声の人工説だということを知って、『実に惜しい』という顔をありありとした。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
わたしはぼんやりしながら、三度目の繰返しをした。当の主人公は知っていても、此処の周囲の人たちは、変な来訪者だと
怪訝
(
けげん
)
に思ったに無理はない。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼がやっと何か言っても、
怪訝
(
けげん
)
そうにそれを聞くのであろう。なぜなら彼等の言葉は、彼の言葉とは違うのだから。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
友だちはそこそこに帰って行く清三の後ろ姿を
怪訝
(
けげん
)
そうに見送った。後ろで石川の笑う声がした。清三は不愉快な気がした。
戸外
(
おもて
)
に出るとほっとした。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
立去る時、諸戸の青ざめた顔のうしろの薄暗い中に、秀ちゃんの
怪訝
(
けげん
)
な顔がじっと私を見つめているのに気づいた。それが一層私を
果敢
(
はか
)
ない気持にした。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
帳場に寄りかかりながら
怪訝
(
けげん
)
らしい微笑を浮かべて私を見ているので、私はあの空家を工場にしているのは
悧口
(
りこう
)
なやりかただと、私の意見をくり返して言った。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
相撲取草
(
すもうとりぐさ
)
を見つけて相撲を取らせては不可解な偶然の支配に対する
怪訝
(
けげん
)
の種を小さな胸に植えつけていた。
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
これも
怪訝
(
けげん
)
な会話であるが、お許しを願って次へ進もう。中二日おいて、若殿は上屋敷へお移りになった。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、姉は私の言葉を聞きつけて次の間の方から首を出しましたが、
怪訝
(
けげん
)
そうな顔つきをして云うのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
から、昇も
怪訝
(
けげん
)
な
顔色
(
かおつき
)
をして何か云おうとしたが、突然お政が、三日も物を云わずにいたように、たてつけて
饒舌
(
しゃべ
)
り懸けたので、つい
紛
(
はぐ
)
らされてその方を向く。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
房次はいず、兄嫁の澄江が
怪訝
(
けげん
)
な顔でむかえた。写真でみて茂緒の方は知っていたが、初対面であった。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
その声があまり大きかったせいか、向うのテエブルにいた芸者がわざわざふり返って、
怪訝
(
けげん
)
な顔をしながら、こっちを見た。が、老紳士は容易に、笑いやまない。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
タッタ今まで、山鹿だと思っていたその本人が、いまここに、
怪訝
(
けげん
)
な顔をして突立っているではないか。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
真昼間、のこのこと淫売を買いに来たりするこの客は一体何者だろうと、クララは
怪訝
(
けげん
)
の表情だった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
近づいて来るものが、誰か、誰であらねばならぬか——その推察はついているくせに、故意に
怪訝
(
けげん
)
な眼をたかめ、それとなく
脇差
(
わきざし
)
をひきよせて闇を
睨
(
にら
)
んでいたのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「こりゃ一体どうしたわけだね、ええカテリーナ・リヴォーヴナ、一人で寝るのに二人分もふとんを敷いてさ?」と、さも
怪訝
(
けげん
)
そうに、彼はだしぬけに細君にきいた。
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
眼の方は相手からそらさずに
怪訝
(
けげん
)
そうな凝視を続けていたのだが、その中に、私の心のすみっこに
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
窯の人たちは、きっとこんな一文を読んだら
怪訝
(
けげん
)
な想いをさえ抱くでしょう。田中さんが窯を訪ねた時、「何のためにきたのか」と不思議そうな顔をしていたそうです。
多々良の雑器
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
宇治は
惑乱
(
わくらん
)
を感じながら、それを立てなおすように高城の顔に瞳を定めた。高城の表情に何か
怪訝
(
けげん
)
の色がふと走ったが、そのまま水筒を彼に返してゆるゆる立ち上った。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ここへ図らずも遅れて出た、しかも十五年も後に顔を出して、その出現を
怪訝
(
けげん
)
な眼をもって見られた小生が加わるとなると、いよいよ多彩多異、賑やかたらざるを得ない。
陶器個展に観る各作家の味
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
怪
常用漢字
中学
部首:⼼
8画
訝
漢検1級
部首:⾔
12画
“怪訝”で始まる語句
怪訝顔
怪訝相