待遠まちどほ)” の例文
りたてのかべ狹苦せまくるしい小屋こや内側うちがはしめつぽくかつくらくした。かべつち段々だん/\かわくのが待遠まちどほ卯平うへい毎日まいにちゆかうへむしろすわつてたいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つぐる鐘耳元に響き渡り寒風かんぷう肌膚はだへさすが如く一しほ待遠まちどほく思ふに就我家の事を氣遣きづかもし母樣が御目を覺され此身の居らぬを尋ねはし給はぬか然共折角せつかく是迄來りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まじ/\してたが、有繋さすがに、つかれひどいから、しんすこ茫乎ぼんやりしてた、なにしろしらむのが待遠まちどほでならぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平野をどり舞人まひびとと思はるる黒紋附に白袴しろばかま穿きたるいでたちのボオイ達、こちたく塗れるおしろいの顔、出場でば待遠まちどほげに此方彼方こなたかなたするが、目に変化へんげのものの心地もせられて可笑をかしくさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さとしもとより築山つきやまごしにをがむばかりのねがひならず、あはれ此君このきみ肺腑はいふりて秘密ひみつかぎにしたく、時機をりあれかしとつま待遠まちどほや、一月ひとつきばかりをあだくらしてちかづく便たよりのきこそは道理だうりなれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
與吉よきち近所きんじよ子供こども田圃たんぼた。あたゝかいにはかれ單衣ひとへかへて、たもとうしろでぎつとしばつたりしりをぐるつと端折はしよつたりしてもら待遠まちどほねてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蒸暑むしあついのがつゞくと、蟋蟀こほろぎこゑ待遠まちどほい。……此邊このあたりでは、毎年まいねん春秋社しゆんじうしや眞向まむかうの石垣いしがき一番いちばんはやい。震災前しんさいぜんまでは、たいがい土用どよう三日みつか四日よつかめのよひからきはじめたのが、年々ねん/\、やゝおくれる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
曇色くもりいろの建物の中に寺の屋根が金に輝いて居るのが悲しい心持をおこさせる。十六日のになつた。翌てう待遠まちどほでならない。何時におこさうかとボオイが聞くので、六時に着くなら五時でいと云つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さらつぎはしくちまで悠長いうちやう運動うんどう待遠まちどほ口腔こうかう粘膜ねんまくからは自然しぜんうすみづのやうな唾液つばいてるのをおさへることが出來できないほどであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)