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孕
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はら
ふりがな文庫
“
孕
(
はら
)” の例文
昨日の生活は今日の生活のなかに生きており、明日の生活もまた今日の生活のなかに
孕
(
はら
)
まれている。生活の基点はつねに今日にある。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
文化文政の句は天明調と天保調の中間に居るだけに、その俳句が全くの月並調とならぬけれども、所々に月並調の分子を
孕
(
はら
)
んで居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
逡巡
(
しゅんじゅん
)
していたが、けさ末造が千葉へ立つと云って
暇乞
(
いとまごい
)
に来てから、
追手
(
おいて
)
を帆に
孕
(
はら
)
ませた舟のように、志す岸に向って走る気になった。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
こうして、
此方
(
こなた
)
、諏訪明神の、境内もいよいよ寂しくなり、嵐を
孕
(
はら
)
んだ杉の梢が物凄く
颷々
(
ひょうひょう
)
と鳴るばかり、他には
生物
(
いきもの
)
の声さえない。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一体あれは国に女房もあってその女房が
孕
(
はら
)
んで居る。その外に子供もあるのだから国の方へ帰りたければ帰る方法を付けねばならん。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
▼ もっと見る
「あの今ゐる女ぢやないですけれどもね。Sさんは、そのタイピストを可愛がつてね。たうとう
孕
(
はら
)
ませて了つたもんですからね?」
アカシヤの花
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
穴の上と下、地獄の入口に相對したやうな三人は、懷中提灯の心細い灯の中に、
孕
(
はら
)
む殺氣もそのまゝ不思議な物語を始めたのです。
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
吾人は今少なくとも有史以来の『得意』の舞台に大踏歩しつゝあり、と共に又
未
(
いま
)
だ
嘗
(
かつ
)
て知らざる大恐怖の暗雲を
孕
(
はら
)
み来りつゝあり。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「いっそ、俗にいおう、真実に嫁ぐのだな。だから都の軽薄なあこがれの子など
孕
(
はら
)
まずに、生れた郷土で、よい子を生むことだな」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕焼
(
ゆうやけ
)
の空は堀割に臨む白い
土蔵
(
どぞう
)
の壁に反射し、あるいは夕風を
孕
(
はら
)
んで進む
荷船
(
にぶね
)
の帆を染めて、ここにもまた意外なる美観をつくる。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「貴様たちの働きではない。しかし貴様の女房はもう
孕
(
はら
)
んでいる。必ずその子を殺すな。明天子に逢って家を興すに相違ないぞ」
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そいつにすっかり
欺
(
だま
)
されてしまって、私子供を
孕
(
はら
)
んでしまったの。そいつの子供だってことは、ちゃんと判っていたから云ってやったわ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
術士メルリン城よりもまず女を落すべく王に教え、王ゴーロアの偽装で入城してイゲルナを欺き会いて、その夜アーサー
孕
(
はら
)
まる。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
民心の鬱結がおのずから相当の殺気というものを
孕
(
はら
)
んで、禍機が不可思議の辺に潜んでいるらしい意味に聞えましたが、米友は
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
物置のようなひん曲った建物があって、階下には主人夫婦、天井裏には母と娘が間借りしていて、この娘は相手の分らぬ子供を
孕
(
はら
)
んでいる。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
麥は穗を
孕
(
はら
)
み、豌豆には濃い紫の花が咲いてゐる。附近の百姓家からでも來るのか、そんな畑の中にも櫻の花片の散つてゐるのが見られる。
樹木とその葉:25 或る日の昼餐
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
モナドは何処までも自己自身の内から動いて行く、現在が過去を負い未来を
孕
(
はら
)
む一つの時間的連続である、一つの世界である。
絶対矛盾的自己同一
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
隅田川がその間に白々と潮を
孕
(
はら
)
んでくねっていた。「寒くなってきたからもう帰ろうよ」と杉本は子供たちの顔を見わたした。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
又それと同時に非常に難しい危機を
孕
(
はら
)
んだ危い時代だったから、その中で彫刻家はああいう真剣さに溢れた仕事をし遂げたものだとも思う。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
一高を化して常識の府となさんとする忌むべき傾向を
孕
(
はら
)
んでいる。たとえばいわゆる演説家とクリスチャンの増加するのは私は眉を
顰
(
ひそ
)
める。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
すべての香気は、人の心に思慕と幻想とを
孕
(
はら
)
ませる。私は水仙の冷え冷えとした高い芬香に、行ひ澄ました若い尼僧の清らかな生涯を感じる。
水仙の幻想
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
嵐
(
あらし
)
の暗雲を
孕
(
はら
)
んで
物凄
(
ものすご
)
いまでに沈滞した前田鉄工場! それに対していかなる手段を取るべきか? 彼はその対策に迷った。
仮装観桜会
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「さあ、これを呑んでおくれ。呑んでしまふと、風を
孕
(
はら
)
んだ帆よりも早く、御前の脚がお前を皆の所へ持つて往くからな。」
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
然れども此混沌は原始の混沌の如くならず、速に他の組織を
孕
(
はら
)
まんとする混沌なり、速に他の時代に入らんとする混沌なり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
信は智慧を
孕
(
はら
)
んで、犠牲者の悲痛を反逆者の魂の執著の一念のうちに示して見せると共に、その悲痛の自覚を
直
(
ただち
)
に歓喜の生に代えるのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
彼は毎日海亀の脂や石焼の仔豚や人魚の胎児や蝙蝠の仔の
蒸焼
(
むしやき
)
などの美食に
饜
(
あ
)
いているので、彼の腹は脂ぎって
孕
(
はら
)
み豚の如くにふくらんでいる。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それから見ると、射す陽を一杯に
孕
(
はら
)
む高い土堤をうしろにした、よしとユミの家の共同小屋はまだ楽な方の仕事場だった。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
隠いた時分から数えますと
十月
(
とつき
)
ぐらい。………そうとすれば
孕
(
はら
)
ませた者は、この村の青年かも知れませんが……ヘヘヘ……
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もともと彼の野心といふものには格別はつきりした目標があつたのではない。漠然とした、無意識のうちに魂の
孕
(
はら
)
む夢といつた風なものだつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
枕芸妓の
孕
(
はら
)
んだ子が誰の子かわかるもんかって、——姐さんは若旦那ひとりを守って来ました、あたしは側にいて始めからのことを知っています
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
天性
(
てんせい
)
軍人になるべき資格を
孕
(
はら
)
める者が一
日
(
じつ
)
新聞を見て始めて自己の
天職
(
てんしょく
)
のいずれに存するかを発見するがごときはそれで
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この
赤児
(
あかご
)
を
孕
(
はら
)
んだ実は深い山の奥を離れた
後
(
のち
)
、どういう人の手に拾われたか?——それはいまさら話すまでもあるまい。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
したがって、つまらぬどころか、
後
(
あと
)
にも先にもない貴い一日です。昨日を背負い、明日を
孕
(
はら
)
める、尊い永遠の一日です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
さうかうして居る中に、電信の技手で、東京から出張して来て半年余りも滞在して居た森本といふ男と関係して、其の男の子を
孕
(
はら
)
んだのであつた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
そんなことを思いながら、手酌でちびりちびりやっていると、帆に風を
孕
(
はら
)
んだ船が酒樽を積んで波の上を上って行くさまが、ひとりでに眼に浮かぶ。
濁酒を恋う
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
此は、ある人のある時の痛感でなく、さうした境涯に同化して謡ひ娯しむ人々の間に、自ら
孕
(
はら
)
まれて来る声であつた。
古代民謡の研究:その外輪に沿うて
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
今夜買ったのは半月形で蒼海原に帆を
孕
(
はら
)
んだ三本
檣
(
マスト
)
の巨船の絵である。夕日を受けた帆は柔らかい卵子色をしている。
まじょりか皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
凪
(
な
)
ぎつくした静穏に封じ込められて、彼らはもう前進することができず、いかなる風にてもあれ帆を
孕
(
はら
)
ますべき順風を、待ち焦がれているのである。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
総じて
獣類
(
けもの
)
は胎生なれど、多くは雌雄
数匹
(
すひき
)
を
孕
(
はら
)
みて、一親一子はいと稀なり。さるに御身はただ一匹にて生まれしかば、その力五、六匹を兼ねたり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
眼と眼がガッチリ合って、火花を散らしそう——危機を
孕
(
はら
)
んで、今にも激発しそうな沈黙が、一
瞬
(
しゅん
)
、また二瞬——。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それから下り気味に岩壁の根方を廻って、片麻岩の大塊が古城の石垣のように
孕
(
はら
)
み出したり脱け落ちたりしている
薬研
(
やげん
)
を立てたような窪に衝き当った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「イデーの如く、豊富で生産的」、とゲーテは云ふ。母たちは
孕
(
はら
)
むもの、産むもの、生産的なものの象徴である。
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
山男に生捕られて、ついにその
児
(
こ
)
を
孕
(
はら
)
むものあり、
昏迷
(
こんめい
)
して里に
出
(
い
)
でずと云う。かくのごときは
根子立
(
ねこだち
)
の
姉
(
あねえ
)
のみ。
遠野の奇聞
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その上怪しい女鐘造りの依志子というに、
胎子
(
はらご
)
なぞを
孕
(
はら
)
まして、邪婬の煩悩になおのこと、あんなこの世からの外道とでもいう姿になってしまったのよ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
なんしろ相手がよくない船乗りのことで、
定石
(
じょうせき
)
どおり、子供は
孕
(
はら
)
む、
情夫
(
おとこ
)
には捨てられたということになって、半年ほど前に、すごすご帰って来たんです
灯台鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
のちに
孕
(
はら
)
んで産むところの子、両牙長く
生
(
お
)
い尾角ともに備わり、
儼
(
げん
)
として牛鬼のごとくであったので父母怒ってこれを殺し、銕の
串
(
くし
)
に刺して路傍に
暴
(
さら
)
した。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
故
(
かれ
)
、太素は
杳冥
(
えうめい
)
たれども、本つ教に因りて
土
(
くに
)
を
孕
(
はら
)
み島を産みたまひし時を
識
(
し
)
り、元始は
綿邈
(
めんばく
)
たれども、先の聖に
頼
(
よ
)
りて神を生み人を立てたまひし世を
察
(
あきらか
)
にす。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
わたしがメデューサの首を
孕
(
はら
)
んでいるということをわたしに言いたくないので、勝手にそんな病気の名前を
拵
(
こしら
)
えて、わたしをごまかそうとなさるのでしょう。
メデューサの首
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
案の定、南半球特有の
颶風
(
ぐふう
)
が吹き荒れてきたからであった。風を
孕
(
はら
)
んで弓弦のように張り切った索具が切れる。切れた索具でさらに二、三名の怪我人が出た。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
原子はすでにこの理法を知っており、それを
孕
(
はら
)
んでいるのだ。垂れさがる葉はここにその原型をもっている。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
孕
漢検1級
部首:⼦
5画
“孕”を含む語句
孕婦
孕石
妊孕
孕児
孕子
孕独楽
孕環
孕産
孕石小右衛門
孕石忠弥
孕鹿
懐孕
押孕
盗孕
相孕