トップ
>
女形
>
おやま
ふりがな文庫
“
女形
(
おやま
)” の例文
六部の
方
(
かた
)
が来てびっくりした様子で介抱しているところへ、
女形
(
おやま
)
の方や、いろいろの方が駆けつけ、それからお役人様方が見えました。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「こんなことじゃあ、舞台が勤まらないのも当り前だけど、あたしだって、もとは宮戸座のちっとは鳴らした
女形
(
おやま
)
だったんですよ」
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
これがこの女の本心かな? それとも誇張しているのかな、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
俺の思った通り
此度
(
こんど
)
の芝居ではこの女が
屹度
(
きっと
)
立
女形
(
おやま
)
に相違ない
喇嘛の行衛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ふうんもねえや。知れたことよ。
殺
(
ば
)
らされたのあその
芝居者
(
こやもの
)
だ。眉毛のねえのも
女形
(
おやま
)
なりゃこそ。何てったけのう、え、彦。」
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ガランとして
人気
(
ひとけ
)
もない中に、雪持寒牡丹の模様の着つけに、紫帽子の
女形
(
おやま
)
が、たった一人、坐った姿は、異様で
且
(
かつ
)
妖
(
あや
)
しかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
何を怒られたのか、ある時は、「腹を切れ」とか何とか云われて、
女形
(
おやま
)
みたいな義兄が蒼白になった儘、泣いているのを見たこともあった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……あれは新聞に出た不義者の子よ……東京一の
女形
(
おやま
)
俳優と、福岡一の
別嬪
(
べっぴん
)
夫人の間に出来た謎の子よと、指さし眼ざしされておりますことが
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、いいえ、それよりも、一
生涯
(
しょうがい
)
、あたしゃ
太夫
(
たゆう
)
と一
緒
(
しょ
)
にいとうござんすが、なんといっても、お
前
(
まえ
)
は
今
(
いま
)
を
時
(
とき
)
めく、
江戸
(
えど
)
一
番
(
ばん
)
の
女形
(
おやま
)
。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
俺は、
女形
(
おやま
)
をやれる
軽口師
(
ガルガーンタ
)
という触れこみで、つい四日ほどまえ『恋鳩』に雇われた。初舞台——。ご婦人の下着などを
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
口で
囃
(
はや
)
して、床を踏み鳴らして歩いた。大正エビは頭に派手な
手拭
(
てぬぐい
)
をかぶり、
衣紋
(
えもん
)
を抜いている。
女形
(
おやま
)
のつもりなのだ。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
が、はっとしたのは一瞬間で、それは老人の淡路土産の、小紋の
黒餅
(
こくもち
)
の
小袖
(
こそで
)
を着た
女形
(
おやま
)
の人形が飾ってあったのである。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
伊井蓉峰
(
いいようほう
)
の弟子に石井
孝三郎
(
こうさぶろう
)
と云う
女形
(
おやま
)
があった。絵が好きで
清方
(
きよかた
)
の弟子になっていた。あまり好い男と云うでもないがどことなく味のある顔をしていた。
唖娘
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
照之助というのは、そのころ二十一二の
女形
(
おやま
)
で、二町目——市村座でございます——に出て居りましたが、年が若いのと家柄が無いせいでございましょう。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
瞬
(
またた
)
く
中
(
うち
)
に
女形
(
おやま
)
の
振袖
(
ふりそで
)
なびく
綺羅
(
きら
)
音楽の
巷
(
ちまた
)
になったのかと思うと、この辺の土地をばよく知っている身には全く狐につままれたよりもなお更不思議な
思
(
おもい
)
がして
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
福助といふ人氣
女形
(
おやま
)
俳優であつたころ、なにもかもが彼の紋ぢらしでなければ賣れなかつたといふこともあるにはあるが——とも角、美しい美しくないからいへば
下町娘
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
女形
(
おやま
)
、二枚目に似たりといえども、
彰義隊
(
しょうぎたい
)
の落武者を父にして旗本の血の流れ
淙々
(
そうそう
)
たる巡査である。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
歌舞伎の名
女形
(
おやま
)
といわれる人の色ッぽさは彼らが舞台で女になっているからだ。ところが、ホンモノの女優は、自分が女であるから舞台で女になることを忘れがちである。
安吾巷談:08 ストリップ罵倒
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
なぜかとよくよく聴いて見ると、もしその一座にはいれるとしたら、数年前に東京で買われたなじみが、その時とは違って、そこの立派な立て
女形
(
おやま
)
になっているということが分った。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
わたしはそれをいつまでも待っていたが遂に見ることが出来なかった。
女形
(
おやま
)
が引込むと、今度は皺だらけの若旦那が出て来た。わたしはもう退屈して
桂生
(
けいせい
)
に
吩咐
(
いいつ
)
け豆乳を買いにやった。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
団十郎
(
なりたや
)
と上方くだりの
女形
(
おやま
)
、
上村吉三郎
(
うえむらきちさぶろう
)
の顔合せが珍しいところへ、出しものの狂言そのものが団十郎自作というところから、人気に人気をあおって、まこと文字通り大入り大繁昌でした。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
僕は学生芝居の
女形
(
おやま
)
を勤めた経験がある。鬘だって訳なく手に入ります。真暗な森の中です、大丈夫ごまかせますよ。それに、僕が行きさえすれば、腕ずくだって、茂ちゃんを取戻して来ます。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
先生は、今度は
手巾
(
ムウショアール
)
の端を口に
銜
(
くわ
)
えて、手で引っ張る。田舎芝居の新派の
女形
(
おやま
)
が愁嘆するような、なんとも嫌らしい真似をする。もっとも、先生は夢中になっているので、自分では気がつかない。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
下手
(
へた
)
な
田舎芝居
(
いなかしばい
)
の
女形
(
おやま
)
を思わせる色の黒い、やせたヒョロヒョロの、
南瓜
(
とうなす
)
のしなびた花のような、女郎上がりのおばさんだった。一口にいえば「サンマ」のおばさんだった。このおばさんはいた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
貴方、浅草の
寿座
(
ことぶきざ
)
に掛って居る芝居見た事ある? 其の人は一座の
女形
(
おやま
)
なんですって、今夜も
既
(
も
)
う今頃はお娯しみの最中よ、そりゃ仲が良くって、妾達
妬
(
や
)
ける位だわ、と野放図も無く喋り立てます。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
うったようだねえ、ソヴェトの人に面白いんだろうか。こっちの見物には
女形
(
おやま
)
なんてずいぶんグロテスクにうつるわけなんだろうのに、反撥がないんだね。そこへ行くと映画にはお目こぼしというところがなくってね
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
旅の
女形
(
おやま
)
もさし覗く
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
トテモ福岡みたいな田舎に居そうにもない歌舞伎の
女形
(
おやま
)
みたいな色男が、イキナリ吾輩の鼻の先にブラ下がったので……。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
待ちかまえていた手先は、有無をいわさず、座頭の染之助、
中軸
(
ちゅうじく
)
の市川
姉蔵
(
あねぞう
)
、
女形
(
おやま
)
の
袖崎市弥
(
そでざきいちや
)
の三名をねじおさえて、
数珠
(
じゅず
)
つなぎに引ッくくる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
江戸
(
えど
)
一
番
(
ばん
)
の
女形
(
おやま
)
、
瀬川菊之丞
(
せがわきくのじょう
)
の
生人形
(
いきにんぎょう
)
を、
舞台
(
ぶたい
)
のままに
彫
(
ほ
)
ろうッてんだ。なまやさしい
業
(
わざ
)
じゃァねえなァ
知
(
し
)
れている。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
この
舞台
(
いた
)
に端役ながらも綺麗首を見せていた上方下りの嵐翫之丞という
女形
(
おやま
)
、昨夜
閉
(
は
)
ねて
座
(
こや
)
を出たきり今日の出幕になっても楽屋へ姿を見せないので
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
年は二十七、八でもあろうか、手入れの届いた、白い、
鞣
(
なめ
)
し革のような皮膚は、男の
情緒
(
こころ
)
を悩ますに足り、受け口めいた唇は、
女形
(
おやま
)
のように
濃情
(
のうじょう
)
であった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「いえ、騒ぎがここへ聞えたのは、それから少し経ってからですが、馬道の良助親分が、
女形
(
おやま
)
になって山へ行ったのは、多分敵討騒ぎの最中だったでしょう」
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
たった今の
剣
(
つるぎ
)
の光を見たわけですが、太夫さん程の腕がありゃ、どんな夜道も安心だとはいうものの、そのしおらしい
女形
(
おやま
)
姿を、夜更けの一人歩きは考えもの。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
逢痴は、一座中の若
女形
(
おやま
)
だった。寒さにもめげず、
衣紋
(
えもん
)
を抜き出して、綺麗な襟足を隠そうともしない。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
大阪のはこんな精巧な仕掛はありません、
女形
(
おやま
)
の眼なぞは動かないのが普通ですが、淡路のは女形でも
眼瞼
(
まぶた
)
が開いたり閉じたりしますと、この島の人は自慢をする。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
豪宕
(
ごうとう
)
な左団次(今の左団次のお父さん)が時流に合って人気を得ていた時で、その左団次が
座頭
(
ざがしら
)
であり、団十郎が出動し、福助(今の歌右衛門)が
女形
(
おやま
)
だというので
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
続いて一人の
女形
(
おやま
)
が出てイーイーアーアーと唱った。雙喜はまた言った。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「ああ、いい
女形
(
おやま
)
だな……。名人芸だ」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「
女形
(
おやま
)
にお任せなさいまし。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一番のお美しい
女形
(
おやま
)
の名優として、外国にまでお名前の高い中村半次郎様こと、菱田新太郎様でおいで遊ばすことを、蔭ながら、よく存じておりました。
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それは、有がたいお言葉ではござりますが、わたくしは、
女形
(
おやま
)
、たださえ世上の口がうるそうござります。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「誰か、
女形
(
おやま
)
にならないか。男ばかりの芝居というのはなかろう。野村なんぞ、やってみたらどうだ」
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それよりもまた、その頃の人気俳優
沢村宗十郎
(
さわむらそうじゅうろう
)
——
助高屋高助
(
すけたかやたかすけ
)
——を夫にむかえたのと、宗十郎が舞台で扮する
女形
(
おやま
)
はお菊の好みそのままであったので
殊更
(
ことさら
)
名高かった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
なまじ
知
(
し
)
ってる
顔
(
かお
)
よりも、はじめて
会
(
あ
)
って
見
(
み
)
る
方
(
ほう
)
に、はずむ
話
(
はなし
)
があるものだ。——それにお
前
(
まえ
)
、
相手
(
あいて
)
は
当時
(
とうじ
)
上上吉
(
じょうじょうきち
)
の
女形
(
おやま
)
、
会
(
あ
)
ってるだけでも、
気
(
き
)
が
晴
(
は
)
れ
晴
(
ば
)
れとするようだぜ
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
蕾
(
つぼみ
)
の口、つんと通った鼻筋に黒みがちの
瞳
(
め
)
、江戸じゅうの遊里岡場所をあさっても、これだけの
綺麗首
(
きれいくび
)
はたくさんあるまいと思われるほど、名代の
女形
(
おやま
)
が権八にふんしたような
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
炉開
(
ろびら
)
きの忙しい二、三日を済ますと、浜中屋の
女将
(
おかみ
)
は、骨折り休めに、熱海に入湯に出かけた。田之助一座の
女形
(
おやま
)
の岩井
芙雀
(
ふじゃく
)
が先へこっそり行っていた。お菊ちゃんも、誘われたけれど
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一人の女と一人の
女形
(
おやま
)
、その美しい
円味
(
まるみ
)
、匂いこぼれるような
媚
(
なま
)
めかしさ、悩ましさはともかくとして、おりふし「青楼十二時」でもひもどいて、
辰
(
たつ
)
の
刻
(
こく
)
の画面に
打衝
(
ぶつ
)
かると、ハタと彼は
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そこで子役を見ても、
女形
(
おやま
)
を見ても
立役
(
たてやく
)
を見ても、どういう
質
(
たち
)
の役者が何を唱っているのか知らずに、大勢が入り乱れたり、二三人が打合ったり、そんなことを見ている間に九時から十時になった。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
驚くばかりのその美貌、錦絵から抜け出した
女形
(
おやま
)
のようだ。
柳営秘録かつえ蔵
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「それほどでもないがね、親分、いい
女形
(
おやま
)
がなかった日にゃ、狂言にならないじゃありませんか」
銭形平次捕物控:087 敵討果てて
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“女形”の解説
女形・女方(おやま・おんながた)とは歌舞伎において女性を演じる役者・職掌または其の演技様式。
(出典:Wikipedia)
女
常用漢字
小1
部首:⼥
3画
形
常用漢字
小2
部首:⼺
7画
“女形”で始まる語句
女形俳優
女形部屋