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喫驚
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びっくり
ふりがな文庫
“
喫驚
(
びっくり
)” の例文
自分は岡田夫婦といっしょに
停車場
(
ステーション
)
に行った。三人で汽車を待ち合わしている間に岡田は、「どうです。二郎さん
喫驚
(
びっくり
)
したでしょう」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
所がそれから二三分して、彼は秋子が涙ぐんでいるのに気付いて
喫驚
(
びっくり
)
した。涙ぐんでる眼が鋭い光を放ってるのに、更に喫驚した。
幻の彼方
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そして果せる哉、
本統
(
ほんとう
)
に伊勢鰕のように真赤な顔になった。
乃公
(
おれ
)
は困ったと思うと、富田さんが
突然
(
いきなり
)
乃公の手を捉えたのには
喫驚
(
びっくり
)
した。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それを聞くと助五郎はくるりと
踵
(
きびす
)
を廻らして、元来た方へすたすた歩き出した。
喫驚
(
びっくり
)
して後見送っている望月を振り返りもせずに——。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「人に驚かして
貰
(
もら
)
えばしゃっくりが止るそうだが、何も平気で居て牛肉が
喰
(
く
)
えるのに好んで
喫驚
(
びっくり
)
したいというのも
物数奇
(
ものずき
)
だねハハハハ」
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
君の事を話してやったら、「あの歌人はあなたのお友達なんですか」って
喫驚
(
びっくり
)
していたよ。おれはそんなに俗人に見えるのかな。
一利己主義者と友人との対話
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
お客様だと云うから、誰かと思って見ると、千枝子さんの名刺に、
真個
(
ほんと
)
に
喫驚
(
びっくり
)
した。此上もないよろこびのおどろきである。丸髷が美しい。
日記:06 一九二〇年(大正九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
どの色も美しかったが、とりわけて藍と洋紅とは
喫驚
(
びっくり
)
するほど美しいものでした。ジムは僕より
身長
(
せい
)
が高いくせに、絵はずっと
下手
(
へた
)
でした。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「さあ、早く行きましょう」と
不図
(
ふと
)
後方
(
うしろ
)
を振向くと、また
喫驚
(
びっくり
)
。岩の上には、
何時
(
いつ
)
しか、娘の姿が消えていて、ただ
薬瓶
(
くすりびん
)
のみがあるばかり。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
モセ嬶は、がっかりして、泥のついた手で
水洟
(
みずばな
)
をこすりながら、鼻の下を黒くして、「なじょにして爺様を
喫驚
(
びっくり
)
させべ?」
芋
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
ガラッ八は
喫驚
(
びっくり
)
しました。五日籠っていた平次の
神算鬼謀
(
しんさんきぼう
)
が、日本中の大泥棒の巣を、叩き潰すまでに運んでいたのです。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
至って小男で無精髭をモジャモジャ、風采といい、
身装
(
みなり
)
といい、さほどの先生とは思われず、知らぬ人は名を聞いて
喫驚
(
びっくり
)
。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
(やあ、ご
坊様
(
ぼうさま
)
。)といわれたから、時が時なり、心も心、
後暗
(
うしろぐら
)
いので
喫驚
(
びっくり
)
して見ると、
閻王
(
えんおう
)
の
使
(
つかい
)
ではない、これが
親仁
(
おやじ
)
。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
喫驚
(
びっくり
)
して逃げてくるようでは話にならぬが、幸いに勇士等が承諾してこれを抱き取ると、だんだんと重くなってしまいには腕が抜けそうになる。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
岸から船を離して艪を漕いで中洲の蘆間に入ったのを、誰も見ている者は無かったが、
喫驚
(
びっくり
)
したのは
葭原雀
(
よしきり
)
で、パッタリ、鳴く音を留めて了った。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
私はこの塀を見て実に
喫驚
(
びっくり
)
した。もちろん前にも見ない事はないけれどもその日は殊に閑暇で心も自から
閑
(
ひま
)
でしたからそういう事にもよく気が付く。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そりゃア誰でも
喫驚
(
びっくり
)
するさ。僕だって、一旦は驚いたよ。吉岡忠一の友人が、そんな馬鹿馬鹿しい目に逢ったかと思うと、実に唖然とせざるを得なかったよ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
老栓は
喫驚
(
びっくり
)
して眼を
睜
(
みは
)
った時、すぐ鼻の先きを通って行く者があった。その
中
(
うち
)
の一人は振向いて彼を見た。
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
ト云う声が
忽然
(
こつぜん
)
背後
(
うしろ
)
に聞えたのでお勢が
喫驚
(
びっくり
)
して振返ッて視ると、母親が帯の間へ紙入を
挿
(
はさ
)
みながら来る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お君はこう言って、また寝ている人に蒲団をかけ直してやろうとして、思わずその
寝面
(
ねがお
)
を見て
喫驚
(
びっくり
)
して
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
飄然
(
ひょうぜん
)
やって来たのは
飛白
(
かすり
)
の
単衣
(
ひとえ
)
の
瀟洒
(
しょうしゃ
)
たる美少年であって、これが漣であると紹介された時は、
予
(
かね
)
て若い人だとは聞いていたが、余り若過ぎるので
喫驚
(
びっくり
)
してしまった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
東京を笠に被て、二百万の御威光で叱りつくる長屋のかみさんなど、
掃除人
(
そうじにん
)
の家に往ったら、土蔵の二戸前もあって、
喫驚
(
びっくり
)
する様な立派な住居に
魂消
(
たまげ
)
ることであろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「いいよ、いいよ……」軍医は
喫驚
(
びっくり
)
してラエーフスキイの腕をつかんだ、「これは僕が払う。僕が註文したんだから」とムスターファに向って「俺につけといてくれ。」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼は今度も
咄嗟
(
とっさ
)
の
間
(
あいだ
)
に如来の
金身
(
こんじん
)
に近づかずにすんだ。それだけはせめてもの仕合せである。けれども尼提はこう思った時、また如来の向うから歩いて来るのに
喫驚
(
びっくり
)
した。
尼提
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
後になってこの小さな家が外来患者の診察室であると知った時尾田は
喫驚
(
びっくり
)
したのであったが、そこには別段診察器具が置かれてある訳でもなく、田舎駅の待合室のように
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
「おい、
喫驚
(
びっくり
)
させるなよ」と、呆れて慎作が叫けんだのと、聞覚えのある声を耳にしたのと、群衆の隙から眼球を引抜かれる様なものを一瞥したのと、殆んど同時だった。
十姉妹
(新字新仮名)
/
山本勝治
(著)
和尚は
喫驚
(
びっくり
)
してモヂモヂと立ち去ることを忘れてゐたものだから、蛸はぷんと拗て軽蔑を顔に顕はし、食へ、といふやうに一本の見事な足を和尚の鼻先へぬつと突き延した。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
坂口は
喫驚
(
びっくり
)
して馳寄った。女は黒っぽい着物の裾を泥
塗
(
まみ
)
れにして、敷石の上に
蹲
(
うずくま
)
っていた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
何しろ
安価
(
やす
)
いんだからね。来てから俺の部屋を眺めまわして
喫驚
(
びっくり
)
するだろうとは思っていたが、やっぱり喫驚しているね。一寸いい気味だな。貴様の部屋は今、掃除をさせている。
二人のセルヴィヤ人
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
お蔦 (
喫驚
(
びっくり
)
して起つ)どうしたの。指を打ったんじゃないかい。どれお見せ。まあ血が出て来た。痛いだろうね、我慢おし、ね。薬つけてあげるから、自分できつく
抑
(
おさ
)
えといで。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
『なぜ、そんな事を云い出したのだ?』とイワンの兄は、
喫驚
(
びっくり
)
してきき返しました。
イワンとイワンの兄
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
きたいに見覚えのあるので、もしやとまた
箏樋
(
ことひ
)
の裏を
検捜
(
しら
)
べると、二度
喫驚
(
びっくり
)
、それが、
即
(
すなわ
)
ち、
他
(
た
)
の一面の方である、偶然といえば偶然の事だが、何とあまりに不思議な事ではないか
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
そこで笛吹きは笛の袋に風を入れ、自分で
喫驚
(
びっくり
)
する程立派な音楽を奏しました。
二つの短い話
(新字新仮名)
/
ダグラス・ハイド
、
パトリック・ケネディ
(著)
君々、虎は後ろですよと注意されて
喫驚
(
びっくり
)
して見たりする事もないとはいえない。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
私は今まで随分捕縛には出張しましたが、捕縛と聞て此藻西太郎ほど
喫驚
(
びっくり
)
したのは見た事が有りません、彼れは
漸
(
ようや
)
く我れに復りて其様な筈は有ません必ず誰かの間違いでしょうと言ました
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
どんなにコロボックンクルは
喫驚
(
びっくり
)
したことでしたろう、又恥しがったことでしたろう! いかに
敏捷
(
すばしこ
)
いと言ったところが、そういう風に乱暴な男に捉まえられたのでは、どうにも仕様がありません。
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
と、
喫驚
(
びっくり
)
、叫ばせてやることが出来ますように、と祈るのでした。
唖娘スバー
(新字新仮名)
/
ラビンドラナート・タゴール
(著)
其朝なんか、よっぽど
可笑
(
おか
)
しかった、兼公おれの顔を見て何と思ったか、
喫驚
(
びっくり
)
した眼をきょろきょろさせ物も云わないで軒口ヘ飛んで出た、おれが兼さんお早ようと詞を掛ける、それと同んなじ位に
姪子
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しかも筒井を迎えに行った春の渡舟に、つやのいい
御車
(
みくるま
)
の
牛
(
うし
)
が一頭乗せられ、ゆっくりと船頭は
櫓
(
ろ
)
をこぎながら、皆さん大声を出さないでくれ、牛が
喫驚
(
びっくり
)
すると川にはまるから頼みますぞと
呶鳴
(
どな
)
った。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この田舎娘の
調戯
(
からかい
)
半分に言ったことは比佐を
喫驚
(
びっくり
)
させた。
足袋
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は
喫驚
(
びっくり
)
して私達のお客を見詰めた。
株式仲買店々員
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
彼は
喫驚
(
びっくり
)
すると同時に安心した。
乳色の靄
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
怒鳴られたので僕は
喫驚
(
びっくり
)
して泣きながら父の顔を見て
居
(
い
)
ると、父も
暫
(
しばら
)
くは黙って
熟
(
じっ
)
と僕の顔を見て居ましたが、急に
涙含
(
なみだぐ
)
んで
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
此の不意の出来事には、彼地で家庭を持ち死ぬまでを暮す積りで居るのだと予想して居た多くの者共を非常に
喫驚
(
びっくり
)
させた。
追憶
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「おや何かしらん」と
怪
(
あやし
)
みつつ
漸々
(
ようよう
)
にその
傍
(
わき
)
へ
近付
(
つかづ
)
いて見ると、岩の上に若い女が
俯向
(
うつむ
)
いている、これはと思って横顔を
差覘
(
さしのぞ
)
くと、
再度
(
ふたたび
)
喫驚
(
びっくり
)
した。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
何だか
喫驚
(
びっくり
)
して眼をくるくるさして、頭をねじ向けて見ると、祖母の眼がいつもより多く濡みを帯びてるようだった。
同胞
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
村の
猟人
(
かりうど
)
の某という者が、
五葉山
(
ごようざん
)
の中腹の大きな岩の陰において、この女に
行逢
(
ゆきあ
)
って互いに
喫驚
(
びっくり
)
したという話である。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「怒るもんか、唯
喫驚
(
びっくり
)
するばかりだよ。僕ん
家
(
ところ
)
のお父さんなんか随分喫驚したぜ。そして
最早
(
もう
)
仕方がないって言った」
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
小さいのは
喫驚
(
びっくり
)
して跳ね上り、洞の中に潜り込んだ。親兎は洞門の口まで
跟
(
つ
)
いて行って、前脚で子供の脊骨を押し、押し込んだ後、土を掻き起して穴を封じた。
兎と猫
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
平次が二度
喫驚
(
びっくり
)
したのも無理はありません。小判は吹き立てと言ってもいいほど真新しい
真物
(
ほんもの
)
ですが、その表には、あるべきはずの検印が捺してなかったのです。
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香炉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“喫驚”の意味
《名詞》
喫 驚(きっきょう, きっけい, びっくり)
驚くこと。
(出典:Wiktionary)
喫
常用漢字
中学
部首:⼝
12画
驚
常用漢字
中学
部首:⾺
22画
“喫驚”で始まる語句
喫驚仰天