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とうとつ
ふりがな文庫
“
唐突
(
とうとつ
)” の例文
と
申
(
もう
)
しまして、
私
(
わたくし
)
が
今
(
いま
)
いきなり
死
(
し
)
んでからの
物語
(
ものがたり
)
を
始
(
はじ
)
めたのでは、
何
(
なに
)
やらあまり
唐突
(
とうとつ
)
……
現世
(
このよ
)
と
来世
(
あのよ
)
との
連絡
(
つながり
)
が
少
(
すこ
)
しも
判
(
わか
)
らないので
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
甚
(
はなは
)
だ
唐突
(
とうとつ
)
でありまするが、昨年夏も、お一人な、やはりかような事から、
貴下
(
あなた
)
がたのような
御仁
(
ごじん
)
の
御宿
(
おやど
)
をいたしたことがありまする。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なぜと言うに、それを述べておかない限り、読者は恐らく余り
唐突
(
とうとつ
)
な変化に判断の心を
掻
(
か
)
き乱されるかも知れないと思うから……。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「え?」
唐突
(
とうとつ
)
なので、眼をしばたたいていると、性善坊は、はや口に、そこの土牢の中にいる若い僧こそ、
寿童丸
(
じゅどうまる
)
であると告げて
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こう云うと、一見甚だ
唐突
(
とうとつ
)
の観があるように思われるかも知れない。が、それは恐らく、こんな事から始まったのであろう。——
貉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
「焼芋を食うも
蛇足
(
だそく
)
だ、
割愛
(
かつあい
)
しよう」とついにこの句も
抹殺
(
まっさつ
)
する。「香一炷もあまり
唐突
(
とうとつ
)
だから
已
(
や
)
めろ」と惜気もなく
筆誅
(
ひっちゅう
)
する。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
考えてみると、うすら寒いアルバムですね。開巻、第一ペエジ、もう主人公はこのとおり高等学校の生徒だ。実に、
唐突
(
とうとつ
)
な第一ペエジです。
小さいアルバム
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは小松の放心状態のとき
唐突
(
とうとつ
)
に年齢をたずねるという実験です。これにたいしてわたしは二様の返事を予期していました。
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それは何物が
刺戟
(
しげき
)
を与えるのか解らない
唐突
(
とうとつ
)
な微笑で、水面へ浮び上った泡のように直ぐ消えて平静になる微笑であった。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
わたくしは直接に渋江氏と交ったらしいという飯田巽さんを、先ず訪ねようと思って、
唐突
(
とうとつ
)
ではあったが、飯田さんの
西江戸川町
(
にしえどがわちょう
)
の
邸
(
やしき
)
へ
往
(
い
)
った。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
言うことばも
唐突
(
とうとつ
)
で、何だか
辻褄
(
つじつま
)
が合わないよう——なので、大迫玄蕃は、いっそうゾッとして二、三歩、あとへ退った。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
とき/″\
譫語
(
うわごと
)
のように「まあ、面白い」とか「ほんとに人を
莫迦
(
ばか
)
にしてるよ」と言って、
唐突
(
とうとつ
)
にぱか/\と笑います。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その身体つきや服装や
唐突
(
とうとつ
)
拙劣な素振りなどの
滑稽
(
こっけい
)
さ、時々その口から漏れる矛盾した奇抜な言葉、
垢
(
あか
)
ぬけはしていないがしかし広い強健な知力、また
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
一軒の古い大きな風変りな異人屋敷——その一端に六角形の望楼のようなものが
唐突
(
とうとつ
)
な感じでくっついている
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それにしても、まことに
唐突
(
とうとつ
)
の出発である。いくら僕みたいな人間でも、このベルリンにあと十数時間しかいられないのだとわかると、
周章
(
あわ
)
てざるを得ない。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この質問があまり
唐突
(
とうとつ
)
であったので、私は考えるひまもなしに返事が口から出てしまった。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
入道がきのうの不参の詫びをしているのを耳にも入れないで、忠通は
唐突
(
とうとつ
)
に言い出した。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
イワン・フョードロヴィッチは万事が好都合に運ばれ、こんな急な出発に何の支障もないことを考えて、にやりと薄笑いを浮かべたほどであった。全くその出発は
唐突
(
とうとつ
)
であった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
あまりその理由が
唐突
(
とうとつ
)
なのでしばらく
遅疑
(
ちぎ
)
する様子であったが、証拠の手紙を出して見せると、だんだん納得が行ったらしく、「わたしでは分りませんから、年寄に会って下さい」
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
『これが
土産
(
みやげ
)
だ。ほかに何にもない、そら! これを君にくれる、』と投げだしたのは短刀であった。自分はその
唐突
(
とうとつ
)
に驚いた。かかる
挙動
(
ふるまい
)
は決して以前のかれにはなかったのである。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
初めの
曖昧
(
あいまい
)
な調子に比べて、今の断定は少しく
唐突
(
とうとつ
)
の様に見えないでしょうか。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
羂
(
わな
)
にかかっていた
川鴈
(
かわがん
)
を助けたことが、むしろやや
唐突
(
とうとつ
)
に語り添えられてあるのを見ると、そういう話しかたも試みられていたことは
判
(
わか
)
るが、もとは二人の男女の相喜ぶというだけでも
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
マドレーヌ氏は彼のその嘆願に答えるに、ただ次の
唐突
(
とうとつ
)
な問いをもってした。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは本気で信じられるにはあまりに
唐突
(
とうとつ
)
なばかばかしい話に思われた。しかし身うけしたいと願っていた女と夜逃げをするということが彼の若い心に浪漫的な興味をいくらか燃やしていた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
泡鳴の日常を知るものならば、何が彼を
唐突
(
とうとつ
)
な行動に導くか、その行動の結果がどのように彼の生涯を
彩
(
いろど
)
るか、それについての推量はほぼつくことである。泡鳴には常に動いて止まぬ好奇心がある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「あれは、なんという
鳥
(
とり
)
の
剥製
(
はくせい
)
ですか?」と、
唐突
(
とうとつ
)
にききました。
あほう鳥の鳴く日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
美沢の態度が、
唐突
(
とうとつ
)
だったので、新子もハッとなって立ち上った。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平次の言葉の
唐突
(
とうとつ
)
な調子に、佐吉は思わず笑ってしまいました。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それがあまり
唐突
(
とうとつ
)
だったので、技師はちょいと驚いたが、相手の少佐が軍人に似合わない、
洒脱
(
しゃだつ
)
な人間だと云う事は日頃からよく心得ている。
首が落ちた話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
顎十郎は、ゆっくり一足進みよると、眼を据えて、穴のあかんばかり、藤波の顔を
瞠
(
みつ
)
めていたが、
唐突
(
とうとつ
)
に口をひらいて
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
時めく
頭
(
とう
)
ノ中将殿であるからだ。おそらくその
唐突
(
とうとつ
)
な
出仕
(
しゅっし
)
に殿上でもまた同じような怪しみと静かな驚きの
渦紋
(
かもん
)
がよび起されていたことであったろう。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唐突
(
とうとつ
)
な申出を平気でいう金持の顔を今度は宗十郎がびっくりして見た。すると鼎造はそのけはいを押えていった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
唐突
(
とうとつ
)
なるかけ離れた二
象面
(
フェーゼス
)
が前後して我を
擒
(
とりこ
)
にするならば、我はこのかけ離れた二象面を、どうして同性質のものとして、その関係を
迹付
(
あとづ
)
ける事ができよう。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
某
(
それがし
)
儀
(
ぎ
)
今年今月今日切腹して
相果
(
あいはて
)
候
(
そろ
)
事いかにも
唐突
(
とうとつ
)
の
至
(
いたり
)
にて、弥五右衛門
奴
(
め
)
老耄
(
ろうもう
)
したるか、乱心したるかと申候者も
可有之
(
これあるべく
)
候
(
そうら
)
えども、決して左様の事には
無之
(
これなく
)
候
(
そろ
)
。
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
夫人は私に椅子の一つをすすめ、それに私の腰を下ろしたのを知ると、ほとんど
唐突
(
とうとつ
)
と思われるくらい、A氏に関するさまざまな質問を、次ぎから次ぎへと私に発するのだった。
窓
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼はその
唐突
(
とうとつ
)
な
出立
(
しゅったつ
)
にびっくりして、どう言っていいかもわからなかった。彼女がそんな決心をした動機を知ろうと試みた。彼女は一時のがれの返辞をした。彼は落ち着く先を尋ねた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
唐突
(
とうとつ
)
にそれを思った。作品だけが。——世界の果に、蹴込まれて、こんどこそは、謂わば仕事の重大を、明確に知らされた様子である。どうにかして自身に活路を与えたかった。暗黒王。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
君はこのごろ毎夜狂犬いでて年若き娘をのみ
噛
(
か
)
むちょううわさをききたまいしやと、妹はなれなれしくわれに問えり、問いの不思議なると問えるさまの
唐突
(
とうとつ
)
なるとにわれはあきれて
微笑
(
ほほえ
)
みぬ。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「煙草というと……」と私はあまり
唐突
(
とうとつ
)
なので直ぐには気がつかなかった。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
平次の
唐突
(
とうとつ
)
な問いはかなり六兵衛をおどろかした様子です。
銭形平次捕物控:103 巨盗還る
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「萩乃殿——
唐突
(
とうとつ
)
ながら、わすれねばこそ思いいださず
候
(
そろ
)
」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
青年は
唐突
(
とうとつ
)
に始めた。
目羅博士の不思議な犯罪
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何を見ての言か分らないが独りで大いに
頷
(
うなず
)
くところあるもののようだった。そして
唐突
(
とうとつ
)
に云い出したものである。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母はこの
唐突
(
とうとつ
)
な自分の決心に驚いたように、「どうせ出るならお嫁でもきまってからと思っていたのだが。——まあ仕方があるまいよ」と云った
後
(
あと
)
、
憮然
(
ぶぜん
)
として自分の顔を見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無論この夫妻が
唐突
(
とうとつ
)
とそんな事をしゃべる道理もないから、声がした事は妙と云えば、確かに妙に違いなかった。が、ともかく、赤帽の見えないのが、千枝子には嬉しい気がしたのだろう。
妙な話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「広場の市」のあとで、あまりにその接触が
唐突
(
とうとつ
)
だった。猛烈な争闘と
生々
(
なまなま
)
しい光とから出て、沈黙と暗夜との中にはいったようなものだった。耳が鳴り響いていた。もう何にも見えなかった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そしてそれらの花を見たばかりの時は、誰かが
悪戯
(
いらずら
)
をして、その枝々に
夥
(
おびただ
)
しい小さな真っ白な
提灯
(
ちょうちん
)
のようなものをぶらさげたのではないかと言うような、いかにも
唐突
(
とうとつ
)
な印象を受けたのだった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
平次の
唐突
(
とうとつ
)
な問ひに、堀周吉はギヨツとした樣子ですが
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それはいかにも
唐突
(
とうとつ
)
な云いつけであった。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『——眼をさますと、いきなりここへ来い、ここへ来ると、又
唐突
(
とうとつ
)
に修業に出ろ。——わかる筈はない』
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“唐突”の意味
《名詞》
唐突(とうとつ)
出し抜け。突然。
(出典:Wiktionary)
唐
常用漢字
中学
部首:⼝
10画
突
常用漢字
中学
部首:⽳
8画
“唐”で始まる語句
唐
唐紙
唐土
唐桟
唐櫃
唐草
唐辛子
唐人
唐黍
唐縮緬