御鷹匠といえば一概に恐ろしいもののように考えていたお八重は、案外に初心でおとなしい金之助を憎からず思ったらしい。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
初心の私は女の顔をまともに見られないほど照れていた。そして『こんなことがなんでおもしろいのやろ?』と不思議にさえ思ったものである。
私の履歴書:――放浪の末、段ボールを思いつく (新字新仮名) / 井上貞治郎、日本経済新聞社(著)
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット (旧字旧仮名) / ウィリアム・シェークスピア(著)
茶話:03 大正六(一九一七)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア (旧字旧仮名) / シャーロット・ブロンテ(著)
アーダはなかなかクリストフほど初心ではなかったとは言え、まだ青春の心と身体とのりっぱな特権をもっていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
初心な男は、女の前で、さう抜目なく振舞ふわけにやいかん。さういふところに、却つて見どころがあるんだぜ。
頼母しき求縁(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
前に見えた、若いお方は、なんとなしお痛わしいような、初心なところがありましたけれど、あとから来た二人のお方は、なんだか気味の悪いお方です。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
根岸お行の松 因果塚の由来 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
パッと赤くなる勇太郎の初心さは、この三人の関係の並々でなかったことを白状しているようでもあります。
銭形平次捕物控:141 二枚の小判 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一つはあなたがいかにも無邪気に、初心らしくおっしゃったので、「おや、この方はどんな途方もない事をおっしゃるのだか、御自身ではお分かりにならないのだな」
辻馬車 (新字新仮名) / フェレンツ・モルナール(著)
おこよは、初心らしく、顔を赧くして打ち消しながら、紋之助を見た眼を、藤吉へ返した。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
通訳は、内気な初心い男だった。彼はいい百姓が住んどるんです、とはっきり、云い切ることが出来なかった。大隊長は、ここがユフカで、過激派がいることだけを耳にとめた。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
髪でも結ってくれるので満足して一通りの遊芸は心得て居て手の奇麗な目の細くて切れのいい唇もわりに厚くて小さく、手箱の中にあねさまの入って居るようなごく初心い娘がすき。
犬を連れた奥さん (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
学校に出てから、もう三月にもなるのでだいぶ教師なれがして、郡視学に参観されても赤い顔をするような初心なところもとれ、年長の生徒にばかにされるようなこともなくなった。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から (新字新仮名) / ナサニエル・ホーソーン(著)