其下そのした)” の例文
貝層かひそうきはめてあさいが、其下そのした燒土やけつちそうつて、其中そのなかすくなからず破片はへんがある。幻翁げんおうげんると、香爐形こうろがたさう同一どういつだといふ。
代助は始めて洋燈ランプを書斎に入れさして、其下そのしたで、状袋の封をつた。手紙は梅子から自分にてた可なり長いものであつた。——
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
是より一行又かはさかのぼり、れて河岸かはぎし露泊ろはくす、此日や白樺の樹皮をぎ来りて之を数本の竹上にはさみ、火をてんずれば其明ながら電気灯でんきとうの如し、鹽原君其下そのしたに在りて
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
さうして根府川ねぶがは一村落いちそんらく崖上がいじよう數戸すうこのこして、五百ごひやく村民そんみんとも其下そのした埋沒まいぼつされてしまつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かべには春画しゆんぐわめいた人物画じんぶつぐわがくがかゝつて、其下そのした花瓶くわびんには黄色きいろ夏菊なつぎくがさしてある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
家造りが大抵歩廊ほらうを備へて居るから其下そのしたを歩めば日光や驟雨しううが避けられる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
第三の石門には、扉のような大きな扁平ひらたい岩が立て掛けてあって、其下そのしたの裂目から蝦蟆ひきがえるのように身をすくめてもぐり込むのである。二人はかくの石門を這い抜けて、更に暗いつめた石室いしむろに入った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
過ぎし日を其下そのしたに照らしてみれば
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そこである人が北海道からつてたと云つて呉れたリリー、オフ、ゼ、ヷレーのたばいて、それを悉くみづなかひたして、其下そのしたたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
困難のじつに水量と反比例をなしきたすすむこと一里にして両岸の岩壁屏風びやうぶごとく、河はげきして瀑布ばくふとなり、其下そのしたくぼみて深淵しんえんをなす、衆佇立相盻あひかへりみて愕然がくぜん一歩もすすむを得ず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
それでは其棄權そのきけんしたあと讓受ゆづりうけやうとて、けると、なるほど貝層かいそうは五六すんにしてきる。が、其下そのしたつち具合ぐあひだシキともえぬので、根氣好こんきよ掘下ほりさげてると、またあたらしき貝層かいそうがある。
いし自由じいうになるところだけに、比較的ひかくてきおほきなのが座敷ざしき眞正面ましやうめんゑてあつた。其下そのしたにはすゞしさうなこけがいくらでもえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれえりしろかつたごとく、かれ洋袴づぼんすそ奇麗きれいかへされてゐたごとく、其下そのしたからえるかれ靴足袋くつたび模樣入もやういりのカシミヤであつたごとく、かれあたま華奢きやしや世間せけんきであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しか骨董こつとうのつくほどのものは、ひとつもないやうであつた。ひとりなんともれぬおほきなかめかふが、眞向まむかふるしてあつて、其下そのしたからながばんだ拂子ほつす尻尾しつぽやうてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)