何氣なにげ)” の例文
新字:何気
然しその場では何とも云へないから、何氣なにげない樣に再びその二枚を見かはすと、どちらの人物も齒の浮く樣にきざなのが目に立つ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
わたくし何氣なにげなく倚子ゐすよりはなれて、檣樓しやうらうに、露砲塔ろほうたふに、戰鬪樓せんとうらうに、士官しくわん水兵すいへい活動はたらき目醒めざましき甲板かんぱんながめたが、たちま電氣でんきたれしごと躍上をどりあがつたよ。
つぎ二人ふたりかほあはしたとき、宗助そうすけ矢張やはをんなことむねなか記憶きおくしてゐたが、くちしては一言ひとことかたらなかつた。安井やすゐ何氣なにげないふうをしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その、何氣なにげない無雜作むざふさな點が、却つて人をとりこにし、誇らしい態度が却つて抵抗しがたく人を惹きつけるのだ。
取出し大膽にも己が座敷へ立戻たちもど何氣なにげなきていにて明方近くまで一寢入しにはかに下女を呼起よびおこし急用なれば八ツ半には出立のつもなりしが大に寢忘ねわすれたりすぐに出立すれば何も入ず茶漬ちやづけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おやのこと謝罪あやまれつちこともはんねえから何氣なにげなしのことにしてつゝけべぢやねえか、なあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しのばゞ何處いづくことなくをさまるべきなり何氣なにげなきじようさまが八重やへ八重やへやと相談相手はなしあひてあそばすを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
狂人きちがひさんは何うしてはる。」と千代松は何氣なにげなく問うた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わたくし何氣なにげなく衣袋ポツケツトさぐつて、双眼鏡さうがんきやう取出とりいだし、あはせてほよくその甲板かんぱん工合ぐあひやうとする、丁度ちやうど此時このとき先方むかふふねでも、一個ひとり船員せんゐんらしいをとこ
それで何時いつものとほ何氣なにげないかほをして、をつと着物きもの着換きかへさしたり、洋服やうふくたゝんだりしてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そのことは一向に考へませんでした。」と彼は、眞直まつすぐに前の方を見ながら、何氣なにげなく云つた。
かく何氣なにげなき體にて彼女中の客人は今朝こんてう餘程よほどはやたゝれたり貴樣の方へはゆかずやといふ善六かしらふり左樣さやうはずはなし其譯そのわけ昨日きのふ途中にて駕籠へのるとき駕籠蒲團かごふとんばかりではうすしとて小袖を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はがちがところぞとほゝみて何氣なにげもなしにいへ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
待居たり或日將軍家には御庭おんにはへ成せられ何氣なにげなく植木うゑきなど御覽遊ごらんあそばし御機嫌ごきげんうるはしく見ゆれば近江守は御小姓衆おこしやうしう目配めくばせし其座を退しりぞけ獨り御側おんそば進寄すゝみより聲をひそめて大坂より早打はやうちの次第を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御舍弟ごしやてい其後そのごうなさいました」と宗助そうすけ何氣なにげないふうしめした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)