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仮令
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たとい
ふりがな文庫
“
仮令
(
たとい
)” の例文
旧字:
假令
「
仮令
(
たとい
)
勅許があるにしても、武家にお伝えあって、それから事をなさるがよいのに、みだりに左様の乱暴をなさるのはよろしくない」
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
けれども芳子さんは、どんな辛い時でも、自分の正しいと思う親切は、
仮令
(
たとい
)
政子さんが其を悦んでも悦ばないでも、行って居りました。
いとこ同志
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
折角
(
せっかく
)
命懸けで頂戴した品物をよ。
仮令
(
たとい
)
蜜柑の中へ押込んだとしてもよ。誰に拾われるか分りもしねえ線路の
側
(
わき
)
なぞへ抛られるものかね。
指環
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
沖縄固有の和歌には
仮令
(
たとい
)
拙
(
つたな
)
い所があっても純粋なのです。それに
綴
(
つづ
)
る歌と唱う歌とが一つなのです。このことは驚くべきことでしょう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
甲「控えろ、
仮令
(
たとい
)
三寸
不爛
(
ふらん
)
の
舌頭
(
ぜっとう
)
を以て陳じても最早逃れられぬぞ、是なるは番人喜助の女房梅で有る、見覚えが有るか
何
(
ど
)
うじゃ」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
所がこの、道子の自由な行動は、
仮令
(
たとい
)
夫には無視されて居たにしろ、世間には遂に無視しては
居
(
お
)
られぬ位のものになって
了
(
しま
)
ったのでした。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
仮令
(
たとい
)
叔父様が何と云わりょうが下世話にも云う乗りかゝった船、
此儘
(
このまま
)
左様ならと指を
噉
(
くわ
)
えて
退
(
の
)
くはなんぼ
上方産
(
かみがたうまれ
)
の
胆玉
(
きもだま
)
なしでも
仕憎
(
しにく
)
い事
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お雪は又、
附添
(
つけた
)
して、
仮令
(
たとい
)
倒死
(
のたれじに
)
するとも一旦
嫁
(
とつ
)
いだ以上は親の家へ帰るな、と堅く父親に言い含められて来たことなどを話した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
仮令
(
たとい
)
、警察当局の方では、単なる呉一郎の発狂から起った事件として放棄しているにしても、精神科学応用の犯罪を研究する学者として
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
仮令
(
たとい
)
先生はさう云ふおつもりでなかつたにしても、先生は、どちらにもよく思はれたいと云ふ気持はたしかにおありになつたとおもひます。
S先生に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
それこれより高緯度の地方に生ずる者に在ては
仮令
(
たとい
)
よくその土に適して繁茂し、土地固有の産を成すと雖ども、容易に花を出さざる者あり。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
然し、一定時間睡眠をとれば、それが
仮令
(
たとい
)
三十分
乃至
(
ないし
)
一時間の短時間であっても、余ほど知覚神経の麻痺は回復するものだ。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
私も
最早
(
もう
)
貧乏には本当に飽き/\した。……
仮令
(
たとい
)
月給の仕事があったって私は、文学者は嫌い。文学者なんて偉い人は私風情にはもったいない。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ああ
如何
(
いかん
)
して可ならん、
仮令
(
たとい
)
女子たりといえども、
固
(
もと
)
より日本人民なり、この国辱を雪がずんばあるべからずと、
独
(
ひと
)
り
愁然
(
しゅうぜん
)
、苦悶に沈みたりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
奇怪至極の邪法を使いまする、これを召捕らんことには、
仮令
(
たとい
)
在家の
老若
(
ろうにゃく
)
を何千人何万人召捕らるるとも、邪法の種を絶やすことはできんと思います
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
陥れて手柄にしようなどと——
仮令
(
たとい
)
贋首でごまかしたって、俺は、大作を討ちに行っているぞ。それだけでも、俺の朋輩中では、俺が一番えらいのだ
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
然し現在の母が子の抽斗から盗み出したので、
仮令
(
たとい
)
公金であれ、子の情として訴たえる
理由
(
わけ
)
にはどうしてもゆかない。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
仮令
(
たとい
)
当人の顔は見ずとも連て居る犬を確に見ましたもの、犬は藻西に連られて来る
度
(
たび
)
に私しが可愛がッて
遣
(
や
)
りますから昨夜も私しの室へ来たのです
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
今の人だと
仮令
(
たとい
)
同じ場合に臨んでも、「湖に」と大きな語を点ずることを敢てしないかも知れぬ。元禄の句の面白味はこういう大まかな所にもある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「ウム……言われて名乗るも
烏滸
(
おこ
)
がましいが、
練塀小路
(
ねりべいこうじ
)
に
匿
(
かく
)
れのねえ、
河内山宗俊
(
こうちやまそうしゅん
)
たァ俺のことだッ」とでもやられて見ろ、
仮令
(
たとい
)
その扇子が親譲りの
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
仮令
(
たとい
)
泥棒にもせよ、貴様程の奴が、姿を現してくれたのだから、一概に
野暮
(
やぼ
)
な業もせぬつもりだ。こう申したとて、貴様を
威
(
おど
)
そうとする気持ではない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
いやしくも本体を失している以上は人間としては通用しない、獣類である。
仮令
(
たとい
)
模写模型にせよ獣類の人間と伍するのは貴女の品位を害する訳である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
信ずる者は幸福である。
仮令
(
たとい
)
其信仰の為に財産をなくして人の
物笑
(
ものわらい
)
となり、政府の心配となるとも、信ずる者は幸福である。彼等の多くは無学である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
登恵子は経済が少し楽になると
流石
(
さすが
)
に病床の良人が想われて、毎夜毎夜家をあけることがかわいそうになったので、
仮令
(
たとい
)
遅い乍も店がはねてから帰って
女給
(新字新仮名)
/
細井和喜蔵
(著)
仮令
(
たとい
)
お手紙を上げたとて、
虚
(
うそ
)
が
信
(
まこと
)
になりもせず、涙をどれ程
注
(
そそ
)
いでも死んだものが生き戻りはいたしますまい。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
仮令
(
たとい
)
目的は達しられないでもいい。しかし万一そういう事が行われるなら、それに越した悦びはない——。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
その恋人が東京に居ては、
仮令
(
たとい
)
自分が芳子をその二階に置いて監督しても、時雄は心を安んずる暇はなかった。二人の相逢うことを妨げることは絶対に不可能である。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
目的がその事を写すにある以上は
仮令
(
たとい
)
うるさいまでも精密にかかねば、読者には
合点
(
がてん
)
が行き難い。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
仮令
(
たとい
)
、友人の情で怒らぬかもしらんが、面白くないだらう、さ、其れを心に隠して居て、何も云はない、知らん顔して居る、と云ふ処で何事も美くしう行くのではないか。
俺の記
(新字旧仮名)
/
尾崎放哉
(著)
仮令
(
たとい
)
有力なる競争者が出来得ざるにせよ、敵なき故に怠るように見えるは尚更見苦しく存候。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
左
(
と
)
に
右
(
か
)
く現に文学を以て生活しつつある以上は
仮令
(
たとい
)
素志でなくても文学にもまた十分身を入れてもらいたい、人は必ずしも一方面でなければならないという理由はないから
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
仮令
(
たとい
)
、晴天はなくとも、風静かにして雨
滋
(
しげ
)
き国は何処かにないであろうか。若しあれば、その国に移り住んで、僕は再び前世の蛙か田螺に
還元
(
かえ
)
る憧憬と勇気とを持ち合せている。
雨の日
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
「あれ、丈太郎様、何を仰しゃいます。
仮令
(
たとい
)
何のような事があろうと、私は、私は——」
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
また法水が、象形文字から推定して、黙示図に知られない半葉があるとするのは、
仮令
(
たとい
)
論理的であるにしても、すこぶる実在性に乏しく、結局彼の狂気的産物と考えるほかにない。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
仮令
(
たとい
)
弥縫以て一時を瞞着するも史学の進歩は何の時にか之を看破せずして止まん。
史論の流行
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
(著)
仮令
(
たとい
)
藩主だけは、いたわって落し参らせるとしても、世子や近習の者は本丸を守って、終にはここで一同枕を並べて死なねばならぬと思うと、今から何だか変な気になったことである。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
竈
(
かまど
)
の側には、薪が三把ほど転がっている、防寒具を整えて来なかったが、これで
焚火
(
たきび
)
に事欠かないと解って、
仮令
(
たとい
)
天候が悪くっても、泊る宿があるという気強さが、
頓
(
にわか
)
に胸に溢れて来る。
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
されば、
仮令
(
たとい
)
今我に罪ありとするも、太子は
刃
(
やいば
)
を加えることが出来ぬ筈だ。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
仮令
(
たとい
)
酔漢であろうともこのエレベーター係りは
容易
(
たやす
)
く果されるわけだった。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
仮令
(
たとい
)
私達の声がどうかして、そこまで届くとしたところで、今朝は誰もいなかったその小屋に、折りよく登山者が来ているかどうか疑問である、幸いに誰かいるとしたところで、又、幸いに
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
又一は入営兵の
留主中
(
るすちゅう
)
たるも、先ず牧塲の無事に維持あるを謝すると、尚本年は無事に経過あらん事を祈ると共に、最も衣喰を初め
仮令
(
たとい
)
僅少にても節約を守り、物品金員を貯えて牧塲費に当てて
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
その
比露子夫人
(
ひろこふじん
)
が、
仮令
(
たとい
)
多少の距離があったにしろ、そして又、仮令もう一人の百姓の証人——彼はダンスのイロハも知らない素朴な農夫だ——が、そう言っているにしろ、ダンスをし始めるのと
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
仮令
(
たとい
)
居たとて役にも立たず、お政は、あの如く、娘を愛する心は有りても、その道を知らんから、娘の道心を
縊殺
(
しめころ
)
そうとしていながら、しかも
得意顔
(
したりがお
)
でいるほどゆえ、
固
(
もと
)
よりこれは
妨
(
さまたげ
)
になるばかり
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
仮令
(
たとい
)
命
(
いのち
)
を失ふとも心を金石のごとくに堅くして義を守るべし。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それを兼実は頻りに歎いて、「それでは
仮令
(
たとい
)
房籠りの折と雖もわしの身に異例でもあるような時には見舞いに来て下さるだろうな」
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
木履を持ちまして
私
(
わたくし
)
の肩を蹴って、二度目にまた耳のところを蹴ましたから、捨て置かれんと存じました、
仮令
(
たとい
)
修行を致す身の上でも
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
立役
(
リーディングロール
)
は一人の背に負わされていても、何かの必要から一旦舞台へ立ったら、
仮令
(
たとい
)
椅子の足になっても、心をすっぽかしていてはなるまい。
印象:九月の帝国劇場
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その二つの性が合って始めて一つの音色が出るので、
仮令
(
たとい
)
どんな名器同志の皮と胴でも、性が合わなければなかなか鳴らない。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
仮令
(
たとい
)
それが犯罪現場に落ちていたにもせよ、常さん自身の持物なれば、何も花壇へ埋めたりしないで、黙って使用していればよいではないか。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
仮令
(
たとい
)
その書の文が短くてもこれを
翫読
(
がんどく
)
して見るとそこにその要点が微妙に捕捉せられているのが認められる。和名をオオヒエンソウと称する。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
“仮令”の意味
《形容動詞》
かりに、よしんば。
(出典:Wiktionary)
仮
常用漢字
小5
部首:⼈
6画
令
常用漢字
小4
部首:⼈
5画
“仮”で始まる語句
仮
仮面
仮借
仮名
仮初
仮髪
仮声
仮病
仮睡
仮寝