仕様しよう)” の例文
旧字:仕樣
下僕しもべは「それでもいうたら大変に怒られるから仕様しようがない。」「そんならこの儘打棄うっちゃって置いてもよいか。一月かかってもよいのか。」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
けれど、どうにも仕様しようがなかったのでせめてこの金だけでも返そうと思った。けれど、河田さんはその金をさえ受け取らなかった。
私は日本大学の教科を悪いと云うのではない、けれども教育の仕様しようが余り厳重で、荷物が重過ぎるのを恐れて文部大学を避けたのです。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
どうにもこうにも仕様しようがなくなった人の中の一人か二人かがやって見たくなるステキなステキな、この上もない無鉄砲な遊びで
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たまに同じ地方へ旅行しているかと思うと、まるで年代が違ったりするのです。さあそうなると、不思議で仕様しようがないのですね。
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは若い時は仕様しようのない放蕩者ほうとうものでもあったであろうが、それは時代と環境の罪もあって、彼ばかりがわるいとは言えない。
けれども事件がここまで進展して来た以上、後の二人の来ない中に女を抱いてでも逃れるよりほか仕様しようがなかった。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
彼は、いやでいやで仕様しようがなかったけれど、隊長に命令で呼ばれて、いかないわけにもいかなかったので、唇をかみしめながら、隊長室の扉を叩いた。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし用心をしろと云ったって別段用心の仕様しようもないから打ちって置くから構わないが、うるさいには閉口だ
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かねて見向みむきもしない村の人達が、殊更ことさらにお世辞を云って、お祝いに来たりした。恵美のうちのお祖父じいさんも来た。私は、なんだかうれしくて仕様しようがなかった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
仕事しごとったって、えたいのれぬにおいが、半纏はんてんにまでしみんでるんで、外聞げえぶんわるくッて仕様しようがありやァしねえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それに、生徒監せいとかんはとても愛想あいそよく母親ははおやむかえて、さんざんおわびをいったのだから、その上どう仕様しようがあろう?
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
「一緒に居ますが、面白くなくて/\、むねがむしゃくしゃして仕様しようがないものですから、それで今日こんにちは——」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
得ようというのだとおっしゃるのでしょう。しかし、あなたには得られますまい。その理由は簡単です。化け物の仕業という以外には説明の仕様しようがないからです
「こんなに亜麻をつけては仕様しようがねえでねえか。畑が枯れて跡地には何んだって出来はしねえぞ。困るな」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
家捜やさがしまでして何も見出さぬから最う吾々の役目はすんだじゃ無いか、好い加減においとま仕様しよう、さア君、さア
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
仕様しようむないこと言いな。お前みたな気イで冷やし飴売りに歩いてたら、飴が腐敗くさってしまう……」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「ひとりで着物も著られない、歩くことも出けんと云うなら、わし等のほうにも仕様しようがあるんじゃ」
狂女 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
相談の敵手あいてにもなるまいがかゆ脊中せなかは孫の手に頼めじゃ、なよなよとした其肢体そのからだを縛ってと云うのでない注文ならば天窓あたまって工夫も仕様しようが一体まあどうしたわけ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なあに、太夫、俺たちの交際つきあいは今日明日に限ったものでもない。お前も知らぬ土地に来て、当分、苦労を仕様しようというには、俺のような男でも、いつか又、用になろうとも知れぬ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
たださへ狭くなつたところへ、こゝで又、奥行を一間二尺も切りちぢめられちやあ仕様しようがないが、それもまあ世間一統いっとうのことですから、わたしのうちばかりが苦情を云つても始まらないと
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
不思議な暴力がいて来たがしかしどうとも仕様しようがなかった。その中に幸子の大きくなってから一生彼女の心を苦しめる不幸を思うと、もう彼は暗い小路の中に立ち停ってしまった。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
お前さんと同棲いっしょになってから三年になるが、その間真実ほんとうに食うや食わずで今日はと思った日は一日だって有りやしないよ。私だって何も楽を仕様しようとは思わんけれど、これじゃあんまりだと思うわ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「もたなかッたら、それまでの寿命とあきらめてもらうより仕様しようがない」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仕様しようねえ餓鬼だな。——何か食わせやしなかったのか、李でも。」
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
オランダ商館長のカロンの仕様しようには、間口十二間、奥行十五間の地面に、相向いに五軒の小屋を建て並べ、そこから四町ほど離れたところに、大臼砲を据える土壇をつくるように指示されているが
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
美伃 須貝さんのがっかり仕様しよう、大変ですのね。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
ソコで無事に港についたらば、サアどうも彼方あっちの人の歓迎とうものは、それは/\実に至れり尽せり、この上の仕様しようがないと云うほどの歓迎。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「チェッ……仕様しようがないな。ドウモそういう風にどこまでも先入主になって来られちゃかなわない……いいかい。聞き給え……こうなんだよ」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから、今しばらく、みんなのことをよくきいて、おとなしくして辛抱しんぼうしていなさい。それよりほかに仕様しようがない……
無智な奴って、仕様しようがないものだね。個人としての社長をうらむなんて、飛んでもない見当違いじゃありませんか。
結局これは心霊波の元締もとじめをやって居る守護神しゅごじんというものに頼んで、その電波をめて貰うより仕様しようがない、あなたをひとつ心霊研究会へ御紹介するから
「だからね。おいらァくなってるが、いまもそいったとおり、帳場ちょうばかけてからがみっともなくて仕様しようがねえんだ。あんなにおいなか這入へえっちゃいかれねえッてのよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
今までの道徳はそうだから、たといその道徳は不都合であるとは考えていても、別に仕様しようがないからまあそれに従って置こう、というような余裕のある、そんな自己ではない。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お初は、仕様しようことなく、赤ん坊を抱いて立上ったが、不安は依然として去らない。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
父様ととさま御帰りになった時はこうしてる者ぞと教えし御辞誼おじぎ仕様しようく覚えて、起居たちい動作ふるまいのしとやかさ、仕付しつけたとほめらるゝ日をまちて居るに、何処どこ竜宮りゅうぐうへ行かれて乙姫おとひめそばにでもらるゝ事ぞと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「馬鹿な。生きていたって、仕様しようがないじゃないか、いったい、これから、何をしようっていうんだ。もう俺もお前もするだけのことは、すっかりしてしまったじゃないか。思い出してみるがいい。」
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
お前はよく友達に誘われると、イヤとも云いかねて、一所に線路伝いをしているようだが、あんな事は絶対にめる事に仕様しようじゃないか。いいかい。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もう見込みがない、いつまで立っていても仕様しようがない。帰ろう、と私は決心した。で、少し早いがそこを引きあげた。
「……ちょっ、仕様しようがねえやつだ。これじゃ云訳いいわけが立たないや。明日の朝は——これはえれえことになったぞ」
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
当局の御家老の身になって見ればまたう思う通りに行かないもので、矢張り今の通りよりほか仕様しようがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あなたは随分ずいぶんひどい方です。お酒の上とは云えあんな乱暴な人とは知りませんでした。しかし今更いまさら云っても仕様しようがありません。私はあれは夢であったと思って忘れます。あなたも忘れて下さい。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
役人は意地悪い顔つきで、私をにらみつけている。仕様しようがない。なけなしの財布の底をはたくよりほかに途がない。
だけど、その時の妾はもう大胆にも何にも仕様しようのない位ヘトヘトに疲れていたんですもの。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを思うと、私は兄が気の毒で仕様しようがないのでございますよ
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうか。それは本当じゃな。男の言葉に二言にごんはないな——というて相手がお前じゃ仕様しようがないが……」
「そんなら、いいじゃないか……僕が会いたくて仕様しようがないんだから……」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「だめだよ、どっちへいっていいかわからないのに、帆を作ったって仕様しようがないじゃないか」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おまけに痛んで仕様しようがないもんだから、副院長さんの執刀で今朝けさ早く手術しちゃったのよ。バンカインの局部麻酔が利かないので、トウトウ全身麻酔にしちゃったけど、それあ綺麗な肌だったのよ。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……あなたって人は……ほんとに仕様しようのない人ね」
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)