ちやん)” の例文
雅さんのところへくときまつて、その為に御嫁入道具までちやん調こしらへて置きながら、今更外へゆかれますか、雅さんも考へて見て下さいな。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それで周三は、毎日まいにち畫架ぐわかに向ツて歎息ばかりしてゐながら、定期ていきの時間だけちやんと畫室に入ツて、バレツトにテレビン繪具ゑのぐ捏返ねりかへしてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『おゝ、』と飛附とびつくやうな返事へんじかほしたが、もとよりたれやうはずい。まくらばかりさびしくちやんとあり、木賃きちんいのがほうらかなしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またある若者わかもの奈何云どういふう生活せいくわつたらいかと相談さうだんけられる、と、他人たにんづ一ばんかんがへるところらうが、貴方あなたには其答そのこたへはもうちやん出來できてゐる。解悟かいごむかひなさい、眞正しんせい幸福かうふくむかひなさい。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「すゞめ三羽さんばはと一羽いちはといつてね。」とちやん格言かくげんまで出來できた。それからおもふと、みゝづくをもつて、たちま食料問題しよくれうもんだいにする土地とち人氣にんきおだやかである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
残念ながら致方が無い、とちやんとお分疏ことわりを言うて、そして私は私の一分いちぶんを立ててから立派に縁を切りたいのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あの……木葉船こツぱぶねはの、ちやん自然ひとりでうごくでがすよ……土地とちのものはつとります。で、さぎ船頭せんどう渾名あだなするだ。それ、さしつたとほり、五位鷺ごゐさぎぐべいがね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「就きましては、私一言いちごん貴方に伺ひたい事が有るので御座いますが、これはどうぞ御遠慮無く貴方の思召す通をちやん有仰おつしやつてお聞せ下さいまし、よろしう御座いますか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
吾輩わがはいにはちやんわかつてる。位置ゐち方角はうがくのこらずつてる、——ゆびさしてへば、土地とちのものはのこらずつてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それく……お前樣まへさま途中とちうでありませう。とほりがかりから、行逢ゆきあうて、うやつて擦違すれちがうたまでの跫音あしおとで、ようれました。とぼ/\した、うはそらなのでちやんわかる……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おいでなすつた、とちやん心得こゝろえるくらゐで……電車でんしやなかでもこれる。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……たとひ、かうして、貴女あなたひろつてくださるのが、ちやんきまつた運命うんめいで、當人たうにんそれつてて、芝居しばゐをするで、たゞ遺失おとしたとおもふだけのことをしてろ、とはれても、可厭いやです。金輪際こんりんざい出來できません。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)