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駢
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なら
ふりがな文庫
“
駢
(
なら
)” の例文
飯縄山のすぐ北に
駢
(
なら
)
んでいる黒姫山の蒼翠は、この
畏
(
おそ
)
れ入った雲の群集を
他所
(
よそ
)
にして、空の色と共に目もさむるばかり鮮かであった。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
下で寄り集まった眼球がみんな私たちを仰向いているような気がする、その稜角の窪んだ穴の中に、頭を
駢
(
なら
)
べて、横になったのが
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
お
辰
(
たつ
)
と共に手を携え肩を
駢
(
なら
)
べ優々と雲の上に
行
(
ゆき
)
し
後
(
あと
)
には
白薔薇
(
ホワイトローズ
)
香
(
におい
)
薫
(
くん
)
じて
吉兵衛
(
きちべえ
)
を初め一村の老幼
芽出度
(
めでたし
)
とさゞめく声は天鼓を撃つ
如
(
ごと
)
く
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
『大英百科全書』またいわく、時として家馬の
蹄
(
ひづめ
)
の側に、蹄ある小趾を生ずる事あり。稀にはまた三、四趾を
駢
(
なら
)
び生ずるあり。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
更に薏苡と題する詩の中には、「草木各〻
宜
(
よろし
)
きあり、珍産南荒に
駢
(
なら
)
ぶ。絳嚢茘枝を
懸
(
か
)
け、雪粉桄榔を
剖
(
さ
)
く」といふ句がある。
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
▼ もっと見る
すなわち三つに分裂した殻片は存外その質が硬くその舟の様に成っている中央部へ縦に円い小さい種子が
駢
(
なら
)
んで着いている。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
靴紐
(
くつひも
)
や靴墨、
刷毛
(
はけ
)
が店頭の前通りに
駢
(
なら
)
び、
棚
(
たな
)
に製品がぱらりと飾ってあったが、父親はまだ
繃帯
(
ほうたい
)
も取れず、土間の仕事場で靴の底をつけていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
市郎は医師の
手当
(
てあて
)
に
因
(
よっ
)
て、幸いに蘇生したので、
既
(
すぐ
)
に
麓
(
ふもと
)
へ
舁
(
か
)
き去られていたが、安行とお杉と𤢖との
三個
(
みつ
)
の屍体は、まだ
其儘
(
そのまま
)
に枕を
駢
(
なら
)
べていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
日本で沙翁と推されるのは作物の性質上
近松巣林子
(
ちかまつそうりんし
)
であって、近松は実に馬琴と
駢
(
なら
)
んで日本の最大者である。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それで其の飛出した眼球が風早を睨付けてゐるやうに見える。此の眞ツ赤な人體の模造と
駢
(
なら
)
んで、綺麗に眞ツ白に
晒
(
さら
)
された骸骨が巧く直立不動の姿勢になツてゐる。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
両岸には
蒼潤
(
さうじゆん
)
の山が迫り、怪石奇巌
駢
(
なら
)
び立つて、はげしい曲折の水が流れては急渓、湛へては
深潭
(
しんたん
)
——といつた具合で、田山先生も
曾遊
(
そういう
)
の地らしく、
耶馬渓
(
やばけい
)
などおよびもつかない
故郷に帰りゆくこころ
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
世界文明の微光は兵の運動とともに始まり、武備の機関進歩するに従い社会はいよいよその歩を進め、二者並行いまだかつて
轡
(
くつわ
)
を
駢
(
なら
)
べ、
袂
(
たもと
)
を連ねて運動せざることはあらず。吾人は実に断言す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
創造的勢力と馬を
駢
(
なら
)
べて、相
馳駆
(
ちく
)
するものあり、之を交通の勢力とす。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
寺院は随一の
華主
(
とくい
)
なる
豆府
(
とうふ
)
屋の
担夫
(
かつぎ
)
一人、
夕巡回
(
ゆうまわり
)
にまた例の
商売
(
あきない
)
をなさんとて、四ツ谷
油揚坂
(
あぶらげざか
)
なる宗福寺に
来
(
きた
)
りけるが、数十輛の馬車、
腕車
(
わんしゃ
)
、
梶棒
(
かじぼう
)
を連ね輪を
駢
(
なら
)
べて、肥馬
嘶
(
いなな
)
き、道を擁し、
馭者
(
ぎょしゃ
)
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
にむらむらと立
駢
(
なら
)
ぶ
老松奇檜
(
ろうしょうきかい
)
は、
柯
(
えだ
)
を交じえ葉を折重ねて
鬱蒼
(
うっそう
)
として
翠
(
みどり
)
も深く、観る者の心までが
蒼
(
あお
)
く染りそうなに引替え、
桜杏桃李
(
おうきょうとうり
)
の
雑木
(
ざつぼく
)
は、
老木
(
おいき
)
稚木
(
わかぎ
)
も押なべて一様に枯葉勝な立姿
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
幸村槍を
駢
(
なら
)
べて迎え、六文銭の
旌旗
(
しょうき
)
、
甲冑
(
かっちゅう
)
、その他赤色を用いし甲州以来の真田の赤隊、山の如く敢て退かず。午後二時頃城内より退去令の伝騎来って後退した。幸村自ら殿軍となり名退却をなす。
大阪夏之陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
廟堂にずらり頭を
駢
(
なら
)
べている連中には唯一人の帝王の師たる者もなく、誰一人面を冒して進言する忠臣もなく、あたら君徳を輔佐して陛下を堯舜に致すべき
千載一遇
(
せんざいいちぐう
)
の大切なる機会を見す見す看過し
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
其山を御岳や鳥海山などのように附近に肩を
駢
(
なら
)
べる者のない其地方の最高山であると信じていた私は、西方の眺望の広闊なのに引換えて
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
葉縁には
尖
(
する
)
どき細鋸歯が
駢
(
なら
)
んで
扱
(
しご
)
けばよく手を切る事は人の知っている通りである。支那の書物にも「甚ダ快利ニシテ人ヲ傷クルコト鋒刀ノ
如
(
ごと
)
シ」
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
障子
襖
(
ふすま
)
の
燻
(
くす
)
ぼれたその部屋には、持主のいない真新しい箪笥が
二棹
(
ふたさお
)
も
駢
(
なら
)
んでいて、嫁の着物がそっくり中に仕舞われたきり、錠がおろされてあった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
で、やがて娘は
路
(
みち
)
——路といっても人の足の
踏
(
ふ
)
む分だけを残して両方からは
小草
(
おぐさ
)
が
埋
(
うず
)
めている
糸筋
(
いとすじ
)
ほどの路へ出て、その
狭
(
せま
)
い路を源三と
一緒
(
いっしょ
)
に仲好く肩を
駢
(
なら
)
べて去った。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
美妙や紅葉と共に
轡
(
くつわ
)
を
駢
(
なら
)
べて小手先きの芸頭を競争するような真似は二葉亭には出来なかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
其
(
その
)
結果、お葉も討たれ、重太郎も討たれた。𤢖
二人
(
ににん
)
も枕を
駢
(
なら
)
べて死んだ。
究竟
(
つまり
)
双方が
相撃
(
あいうち
)
となった処へ、忠一が
後
(
あと
)
から又
来合
(
きあわ
)
せて、残る
一人
(
いちにん
)
の𤢖も自殺を遂げるような事になったのであろう。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
前者は
武内宿禰
(
たけのうちのすくね
)
などが行った
湯起請
(
ゆぎしょう
)
で国史にも見える。それと記し
駢
(
なら
)
べたるを見ると古く蛇起請も行われたるを、例の通り邦人は常事として特に書き留めなんだが、支那人は奇として記録したのだ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
傷だらけになる、
信濃金梅
(
しなのきんばい
)
の花は、黄色な珠を
駢
(
なら
)
べて、絶頂から裾までを埋めた急斜の、大黄原を作っている、稀に女宝千鳥や、黒百合も交っているが、このくらい信濃金梅の
盛
(
さかん
)
に
団簇
(
だんそう
)
したところは
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
然
(
しか
)
し夫と同じ山脈に肩を
駢
(
なら
)
べている幾座の山が、同じように東京の空を覗いていようとは、夢にも想わなかったのである。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ぽつねんと独り待っているうちに、初夏の軽い雨が降り出し、
瑠璃色
(
るりいろ
)
のタイルで張られた露台に置き
駢
(
なら
)
べられた盆栽が、見る間に美しく
濡
(
ぬ
)
れて行った。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ダアクの
操
(
あやつ
)
り
人形然
(
にんぎょうぜん
)
と妙な
内鰐
(
うちわに
)
の足どりでシャナリシャナリと蓮歩を運ぶものもあったが、中には今よりもハイカラな風をして、その頃
流行
(
はや
)
った横乗りで夫婦
轡
(
くつわ
)
を
駢
(
なら
)
べて行くものもあった。
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
これが山の肩のあたりに三ツ乃至四ツも
駢
(
なら
)
んで懸っている壮観は、北アルプスでなくては見られぬ特色である。
南北アルプス通説
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
彼は
細
(
こまか
)
く切ったその紙片を、
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
なりに筋をひいて紙のうえに
駢
(
なら
)
べていながら、
振顧
(
ふりむ
)
きもしないで応えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この
初陣
(
ういじん
)
の功名に乗じて続いて硯友社の諸豪と
轡
(
くつわ
)
を
駢
(
なら
)
べて二作三作と発表したなら三唖もまた必ず相当の名を成して
操觚
(
そうこ
)
の位置を固めたであろうが、性来の狷介と懶惰とズボラとが文壇にも累をなし
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
此処から木立は全く尽きて短い笹の生えた鍋を伏せたような山が幾つか
駢
(
なら
)
んで、道は其間に縦横に通じている。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
鶴さんは、それはそれとして大事に秘めておいて、自身の生活の単なる
手助
(
てだすけ
)
として、自分を迎えたのでしかないように思えた。
駢
(
なら
)
んで電車に乗ってからも、お島はそんなことを思っていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
山稜は一曲して西を指すようになる、生々しい赭色の大岩——尖ったのや角ばったのが乱杭の頭を
駢
(
なら
)
べて、音もなく流れ寄る霧の中に没しては
又
(
また
)
顕われる。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
東に延びた尾根は四つ
許
(
ばかり
)
の小峰を
駢
(
なら
)
べて、最後に尖った岩峰が目に入る。それが牛王院山(御殿岩)である。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
駢
漢検1級
部首:⾺
16画
“駢”を含む語句
植駢
駢立
立駢
置駢
駢伝
駢列
駢指
駢邑
駢闐
駢雅
駢頭