露地ろぢ)” の例文
緑町みどりちやう二丁目——かな。なんでもあの辺は膝位ひざくらゐまででしたがね。僕はSと云ふ友だちと一しよにその露地ろぢの奥にゐるもう一人ひとりの友だちを見舞ひに行つたんです。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
喜多きた食堂しよくだう飮酒のみく。……あのてつぼうにつかまつて、ぶるツとしながら繋目つなぎめいた踏越ふみこすのは、長屋ながや露地ろぢ溝板どぶいた地震ぢしんおもむきあり。あめ小留をやみにる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとの通らない軒燈けんとうばかりあきらかな露地ろぢを抜けて表へると、風が吹く。北へ向き直ると、まともにかほあたる。時を切つて、自分の下宿の方からいてくる。其時三四郎は考へた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
露地ろぢ打水うちみづなにかしてらう、先方せんぱう茶人ちやじんだから客はほかになければおまへ一人だから広間ひろまとほすかも知れねえが、おまへ辞儀じぎ下手へたで誠に困る、両手をちごはごにいてはいけねえよ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふのが情婦いろで、「一所いつしよにキヤツとつて、跣足はだし露地ろぢくらがりを飛出とびだしました。それつきり音信いんしんわかりませんから。」あわててかへつた。——知合しりあひたれとかする。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもけずまた露地ろぢくちに、抱餘かゝへあままつ大木たいぼく筒切つゝぎりにせしよとおもふ、張子はりこおそろしきかひな一本いつぽん荷車にぐるま積置つみおいたり。おつて、大江山おほえやまはこれでござい、らはい/\とふなるべし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みち太郎稻荷たらういなりあり、奉納ほうなふ手拭てぬぐひだうおほふ、ちさ鳥居とりゐ夥多おびたゞし。此處こゝ彼處かしこ露地ろぢあたりに手習草紙てならひざうししたるがいたところゆ、いともしをらし。それより待乳山まつちやま聖天しやうでんまうづ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
引返ひきかへして、木戸口きどぐちから露地ろぢのぞくと、羽目はめ羽目はめとのあひだる。こゝには一疋いつぴきんでない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのしたにありける露地ろぢいへ飛込とびこんで……打倒うちたふれけるかはりに、二階にかい駈上かけあがつたものである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……ずゐぶん露地ろぢ入組いりくんだ裏屋うらやだから、おそる/\、それでも、くづがはらうへんできつくと、いたけれども、なか人氣ひとけさらにない。おなじくなんけてるのであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもてからは、木戸きどひと丁字形ちやうじがた入組いりくんだほそ露地ろぢで、いへいへと、屋根やね屋根やね附着くツついてところだから、珊瑚さんごながれは、かべひさしにしがらんで、かるゝとえて、表欄干おもてらんかんからたのとくらべては
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
露地ろぢ細道ほそみち駒下駄こまげたで——
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)