かも)” の例文
新字:
そして實際、途徹とてつもなく忙しい一日二日の後に、私達が自分でかもした混沌こんとんの中から段々と秩序を見附け出して來るのは樂しいことであつた。
宇田川町小町とうたはれた非凡の艶色は、死もまた奪ふ由なく、八方から浴びせた提灯の光の中に、凄慘な美しいものさへかもし出して居るのです。
會つたところで、往事、黒田清輝先生の處からその「小督こがう」のデッサンを借りて來て互に感奮して話し合つたやうな氣分は到底かもし出されぬのであらう。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
一旦夕の談理爭でか能く一世の傾向をかもさむ。これを釀す策は衆美を一堂に會して相見る機會を得せしむるに若かず。是れ記實の文の先にすべき所以なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かもし、また垣を作り𢌞して八つの入口を作り、入口毎に八つの物を置く臺を作り、その臺毎に酒のおけをおいて、その濃い酒をいつぱい入れて待つていらつしやい
つみ産婆さんばにもあつた。けれどもなかば以上いじやう御米およね落度おちどちがひなかつた。臍帶纏絡さいたいてんらく變状へんじやうは、御米およね井戸端ゐどばたすべつていた尻餠しりもちいた五ヶげつまへすでみづかかもしたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かつ寺内内閣てらうちないかく議會ぎくわいで、藏原代議士くらはらだいぎし總理大臣そうりだいじんから「ゾーバラくん」とばれて承知しやうちせず、「これ寺内てらうちをジナイとぶがごとし」と抗辯かうべんして一ぜう紛議ふんぎかもしたことがあつた。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ひろやうでもせまいのは滊船きせん航路かうろで、千島艦ちしまかんとラーヴエンナがう事件じけん實例じつれいまでもなく、すこしく舵機かぢ取方とりかたあやまつても、屡々しば/\驚怖きやうふすべき衝突しようとつかもすのに、底事なにごとぞ、あやしふね海蛇丸かいだまる
又一方から見ると作者さくしやあい實際じつさいにその衷心ちうしんからにじみ出てゐる例へば「小さき者へ」の中に於ける、子供に對する主人公のあいといつたやうな場合には、そこにかもされてゐる實感じつかんの強さから
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
憂苦をかもす戰場を離れて武裝改めつ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
冷たき土窟むろかもされて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
酒をかもすはわかうど
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かも瘟疫うんえき瘧病ぎやくへい
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
この言葉が更に新しい間違ひをかもした——それが眞實に觸れたが故に、より惡いものであつた。彼のを失つた唇は瞬間的な痙攣けいれんに引きつゝた。
女のゆがんだ自尊心と、ヒステリツクな我意がもたらした結果には違ひありませんが、最初は、物置の日向ひなたぼつこがかもした、花嫁ごつこの飯事まゝごとが結んだ
きたときは、せたそら次第しだい遠退とほのいてくかとおもはれるほどに、れてゐたが、それが眞蒼まつさをいろづくころからきふくもて、くらなか粉雪こゆきでもかもしてゐるやうに、密封みつぷうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
したがつてその思想しさう人生觀じんせいくわんの凡てを愛を以て裏づけて行かうとする氏の作家さくかとしての今後こんごは、どんな轉換てんくわんを見せて行くかも知れませんが、その理智の人としての弱點じやくてんからかもされて來る何物かは
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
とほしまちかえ、ちかふねかへつとほえ、其爲そのため數知かずしれず不測ふそくわざはひかもして、この洋中やうちゆう難破なんぱせる沈沒船ちんぼつせん船體せんたいすで海底かいていちて、名殘なごり檣頭しやうとうのみ波間はかん隱見いんけんせるその物凄ものすご光景くわうけいとふらひつゝ
ススコリのかもしたお酒にわたしは醉いましたよ。
ももとせの生命のかも
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
山吹色が行燈の灯に反映して、時ならぬ華やかな空氣をかもしますが、事情は息づまるほど緊張して、ガラツ八とお嘉代の眼は、その數を讀む手に吸ひつきます。
また、讀者よ、嫉妬しつとかもすことも多いと、あなた方はお思ひになるだらう——もし私のやうな立場の女がイングラム孃のやうな立場の人を嫉妬するといふことが認められるならば。
泡だちて日はかもされぬ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
その臼にかもしたお酒
お妻はさう言ひ乍ら、自分で自分の言葉のかもし出した感傷にひたつて、聲をあげて泣くのです。
埃臭く、黴臭かびくさく淀んだ大納戸の空氣は、美女の苦惱の聲と折檻に絞り出された汗に薫蒸して、言ひやうもなく不思議な匂ひをかもし出すのを、平次は顏を反けて我慢しました。
小綺麗に調つた六疊、たしなみの鏡臺が一つ、目にみるやうな赤い座布團、そして内儀の地味な青い袷が、不思議な美しい調和をかもし出して、うら寂びた中のなまめかしさです。
後でそれは、美しい掛り人、お近のために用意された部屋と聽いて、主人とお近と、殘された内儀の時代との間に、嫌な三角關係のトラブルがかもし出されてゐたことに思ひ當りました。
一種變つた空氣をかもし出した場所でした。