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みじろ
ふりがな文庫
“
身動
(
みじろ
)” の例文
この
身動
(
みじろ
)
ぎに、七輪の
慈姑
(
くわい
)
が転げて、コンと向うへ飛んだ。
一個
(
ひとつ
)
は、こげ目が紫立って、蛙の
人魂
(
ひとだま
)
のように暗い土間に尾さえ
曳
(
ひ
)
く。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
職員四人分の
卓
(
つくゑ
)
や椅子、書類入の戸棚などを並べて、さらでだに狭くなつてゐる室は、其等の
人数
(
にんず
)
に
埋
(
うづ
)
められて、
身動
(
みじろ
)
ぎも出来ぬ程である。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
喜平はそして、いまにも
掴
(
つか
)
みかかろうとするような形相さえ示した。しかし、正勝は喜平の顔に向けてぐっと目を据えたまま、
身動
(
みじろ
)
ぎもしなかった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
姫は凝と瞶めた、物に憑かれたかのやうに
身動
(
みじろ
)
ぎもせず凝と瞶めた。すると、姫の頭に妙な考へが浮むだ。——。
嘆きの孔雀
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
父はエヘンエヘン! と
咳
(
せき
)
払いしながら、相変らず彫像のように突っ立ったまま、
身動
(
みじろ
)
ぎもしなかった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
そのままに
専
(
ひた
)
と思入るのみなりし貫一も、
漸
(
やうや
)
く
悩
(
なやまし
)
く覚えて
身動
(
みじろ
)
ぐとともに、この
文殻
(
ふみがら
)
の
埓無
(
らちな
)
き様を見て、やや
慌
(
あわ
)
てたりげに
左肩
(
ひだりがた
)
より垂れたるを取りて二つに引裂きつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
赤や白の蝶が舞いめぐって、酒機嫌の
酒森の神
(
キテイール
)
のゆがんだ唇からは、水が虹を立てながら大理石の池へ落ちていた。しかしアウレリウスは
身動
(
みじろ
)
ぎもせずにすわっていた。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
かれらの感傷はつねにかれらをつつみ、かれらの人生はつねにかれらをめぐって
身動
(
みじろ
)
がない。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
放射水がやや衰へ、消防夫がそれ以上に攀ぢ登らうとせず、誰ひとり
身動
(
みじろ
)
がうとしない。
「マルテ・ロオリッツ・ブリッゲの手記」から
(旧字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
平生髪を解いて寝る習慣がございますので、これは縛りつけられたのではないかと思うと、背筋から頭の芯までズウンと
痺
(
しび
)
れてしまって、声も出ず
身動
(
みじろ
)
ぎさえ出来なくなりました。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
疑つたが、梅木先生から、
聾
(
つんぼ
)
の眞似は簡易に出來るものでないと聞いて迷つたのさ。鶯谷は
背後
(
うしろ
)
で俺が轉んでも、障子が倒れても
身動
(
みじろ
)
ぎもしなかつたらう。僞聾にはあれは出來ないことだ
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼が荒々しく
硝子戸
(
ガラスど
)
を明けると、仄暗い茶の間の鏡の前に、彼女が
身動
(
みじろ
)
きもしないで坐つてゐた。彼は黙つてその傍を通り抜け書斎の真中へ仰向に身を投げだした。彼はぢつと眼を見開いた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
と
磨
(
みが
)
いて
礪
(
と
)
いで礪ぎ出した
純粋
(
きっすい
)
江戸ッ子粘り気なし、
一
(
ぴん
)
でなければ六と出る、
忿怒
(
いかり
)
の裏の
温和
(
やさし
)
さもあくまで強き源太が言葉に、
身動
(
みじろ
)
ぎさえせで聞きいし十兵衛、何も云わず畳に食いつき、親方
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と同時に、彼は、塀のかげにかくれてゐた幾組かの人影が
身動
(
みじろ
)
き出すのを、認めた。そのとき、他の誰よりも早く、突然一つの木蔭から現れて、彼女のそばに進みよつていつた一人の男があつた。
水族館
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
白き猫
繁
(
しみ
)
み
身動
(
みじろ
)
ぐ毛のつやのしづかを霜は
外
(
と
)
にくだるらし
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
作阿弥はじっと眼をつぶったまま、
身動
(
みじろ
)
ぎもしない。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
幾つかのくわりんの
果
(
み
)
は
身動
(
みじろ
)
げり。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
お妙はその状を見定めると、何を穿いたか自分も知らずに、スッと格子を開けるが
疾
(
はや
)
いか、
身動
(
みじろ
)
ぎに端が解けた、しどけない
扱帯
(
しごき
)
の
紅
(
くれない
)
。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
凝乎
(
じっ
)
と私は空間の一点を凝視したまま、
身動
(
みじろ
)
ぎもしなかったが、妻の肉体を手に入れるどころか! 苦心
惨憺
(
さんたん
)
の結果、やっとここまで漕ぎ付けた妻と私との距離を
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
疑ったが、梅木先生から、聾の真似は容易に出来るものでないと聞いて迷ったのさ。鶯谷は
背後
(
うしろ
)
で俺が転んでも、障子が倒れても
身動
(
みじろ
)
ぎもしなかったろう。偽聾にはあれは出来ないことだ
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
白き猫
繁
(
しみ
)
み
身動
(
みじろ
)
ぐ毛のつやのしづかを霜は
外
(
と
)
にくだるらし
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
が、藤吉は返事どころか
身動
(
みじろ
)
ぎ一つしない。
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
正勝は
身動
(
みじろ
)
ぎながら言った。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
身動
(
みじろ
)
ぎもせず聞き
澄
(
す
)
んだ散策子の
茫然
(
ぼんやり
)
とした目の前へ、
紅白粉
(
べにおしろい
)
の烈しい
流
(
ながれ
)
が
眩
(
まばゆ
)
い日の光で
渦
(
うずま
)
いて、くるくると廻っていた。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いったんかくと決めた心は、もはや微塵の
身動
(
みじろ
)
ぎだにもせず、何らの
躊躇
(
ためらい
)
をも感じていたわけではなかったが、同時に、また別段より緻密なる犯行を考えていたわけでもない。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
瞳
据
(
す
)
ゑつつ
身動
(
みじろ
)
かず、長き
僧服
(
そうふく
)
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その中から、こう俯向き加減に、ほんのりと
艶
(
つや
)
の透く顔を向けて、幽かな
衣
(
きぬ
)
の
身動
(
みじろ
)
ぎで、真三に向直った女があった。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身動
(
みじろ
)
ぎに、この
美女
(
たおやめ
)
の
鬢
(
びん
)
の
後
(
おく
)
れ毛、さらさらと頬に
掛
(
かか
)
ると、その影やらん薄曇りに、
目
(
ま
)
ぶちのあたりに寂しくなりぬ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ははッ、(恐る恐る地につけたる
額
(
ひたい
)
を
擡
(
もた
)
ぐ。お沢。うとうととしたるまま、しなやかに
膝
(
ひざ
)
をかえ
身動
(
みじろ
)
ぎす。
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の
浅葱
(
あさぎ
)
の
褄
(
つま
)
、しっとりと
幽
(
かすか
)
に
媚
(
なま
)
めく)
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「は、」と、
呼吸
(
いき
)
をひいて答えた紫玉の、
身動
(
みじろ
)
ぎに、帯がキと擦れて鳴ったほど、深く身に響いて聞いたのである。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「は、」と、
呼吸
(
いき
)
をひいて答へた紫玉の、
身動
(
みじろ
)
ぎに、帯がキと擦れて鳴つたほど、深く身に響いて聞いたのである。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
身動
(
みじろ
)
ぎに乱るる黒髪。
髻
(
もとどり
)
ふつ、と
真中
(
まんなか
)
から
二岐
(
ふたすじ
)
に
颯
(
さっ
)
となる。半ばを多一に振掛けた、半ばを握って
捌
(
さば
)
いたのを、
翳
(
かざ
)
すばかりに、浪屋の二階を
指麾
(
さしまね
)
いた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身近を通った
跫音
(
あしおと
)
には、心も留めなかった
麗人
(
たおやめ
)
は、鳥の唄も聞えぬか、
身動
(
みじろ
)
ぎもしないで、そのまま、じっと。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
そ
)
の
顔
(
かほ
)
と、
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
、
引返
(
ひきかへ
)
した
身動
(
みじろ
)
ぎに、
飜
(
ひるがへ
)
つた
褄
(
つま
)
の
乱
(
みだ
)
れに、
雪
(
ゆき
)
のやうに
顕
(
あら
)
はれた
円
(
まる
)
い
膝頭
(
ひざがしら
)
……を
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るや
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と振返りざまに
背後
(
うしろ
)
向きに肩を
捻
(
ね
)
じて、茶棚の上へ手を遣った、活溌な
身動
(
みじろ
)
きに、
下交
(
したがい
)
の
褄
(
つま
)
が
辷
(
すべ
)
った。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
貴女は
身動
(
みじろ
)
きもせず、瞳をすゑて、冷かに
瞻
(
みまも
)
りたり。少年は
便
(
たより
)
なげに
紫陽花
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
身動
(
みじろ
)
きに眉を
顰
(
ひそ
)
めて——長屋の窓からお
饒舌
(
しゃべ
)
りの
媽々
(
かかあ
)
の顔が出ているのも、路地口の野良猫が、のっそり居るのも、書生が無念そうにその羽織の紐をくるくると廻すのも——一向気にもかけず
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と女房は暗い納戸で、
母衣蚊帳
(
ほろがや
)
の前で
身動
(
みじろ
)
ぎした。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身
常用漢字
小3
部首:⾝
7画
動
常用漢字
小3
部首:⼒
11画
“身”で始まる語句
身体
身
身上
身装
身扮
身體
身長
身代
身悶
身分