あやま)” の例文
封建思想のあやまれることを科学的に説破したのは、実に医者の知識であった。従って当時の人傑は皆相当に科学的知識を有していたのである。
わがはかるところ(こはあやまることあらじ)によれば、汝思へらく、正しき罰いかにして正しく罰せらるゝをうるやと 一九—二一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あにあやまらずや。世人あるいは美術のわが邦に進歩したるを見てわが邦の光栄となすものあり。しかれどもこれあに誇称すべきものならんや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
戊戌つちのえいぬ即ち天保九年の)夏に至りては愈々そのことなるを覚えしかども尚悟らず、こは眼鏡めがねの曇りたる故ならめとあやまり思ひて
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
心のつのを折るものなりとありて、原意は、ともかく、当時専らあやまり入って来る者を、強いて苦しめる事はならぬというたとえに用いたと見える。
西洋人も勿論道を尊んでおり、道は全人類の共通のものであり、古今に通じてあやまらず、中外に施してもとらざるものである。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
君の談話や手紙を総合した僕のこれまでの想像はあやまっていない事を僕に信ぜしめる。しかし僕はこの上の想像を避けよう。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
私はあやまつて居た、余り接近したのは悪い。絶交は謹んで受ける。そして私は孤独を守つて飽迄製作に従事する積りと書きかけた。K—氏へのである。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
丁度その頃僕達の市街にもいろいろの料理屋などが出来て、思想の定まらない青年達はその感覚の魔界におぼれて随分その前途をあやまったものが多かった。
数多い伊曾の情婦たち——自ら甘んじて伊曾の腕に黄色い肉体を投じたこれらの女たちのうちで、劉子だけはあやまつて伊曾に愛された女性とふべきであつた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
予をしてあやまたざらしめば、首尾好くがんの満ちたるより、二十日以来張詰はりつめし気の一時にゆるみたるにやあらん。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もちろん、夫子の云われる所は九りんまで常にあやまり無き真理だと思う。また夫子の行われる所は九分九厘まで我々の誰もが取ってもってはんとすべきものだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これを見ても彼等が漸次しだいに退化したことが證明しょうめいされる。忠一は自己の想像のあやまらざりしことを心ひそかに誇った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
われは讀み畢りて、ポツジヨが滑稽の天性にして、世の人のそを假面めん看做みなすことのあやまれるを信ぜんとせり。
長次郎は先見のあやまらなかったことを口に出しては言わないが、温厚な彼の顔にも得意の色が漂うていた。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ここで無謬というのは完全であるという意味ではなく、不完全なままにあやまりのない世界に受取られることをいうのである。だから誤謬のままで無謬になるのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
これは全く人間本来の性質を誤解したために起こるあやまりで、もとより毫も根拠のない空論に過ぎぬ。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
たとえ、どんなあやまりを、たがいに犯していても、みな、この謬りをふみしめて、耐えに耐えて、さらに創りあげ、創造しようとしている技術でないものはないのである。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
あるいは職業のまったく相異なるものあらば、よくその働きの難易軽重を計り、異類の仕事にてもただ働きと働きとをもって自他の比較をなさば大なるあやまりなかるべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼はあたかも遠征を思い立ちし最初の日の夕のごとくはたけの人の帰るを測りて表の戸より立ち出でたり、彼が推測はあやまらず、圃の人は皆帰り尽し、鳥さえねぐらに還りてありし
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
神にきての観念が、何故にかくもあやまって居るかに関しては、そこに別な理由がないでもない。
すっとまた切られて同型同吋の長さとなって、一枚一枚と、大きな卓上に、寸分のあやまりも無く、はらりはらりと辷り止まって、積り、積ってまたその層を高めてゆくのだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
笹村は、女に対する自分の態度のあやまっていることが判るような気がした。お銀に柔順すなおな細君をいながら、やはり妾か何かを扱うような荒い心持が自分にないとも言えなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
自由に腕をふるうことのできるポストが待っている。その土地に於ける自分の行動にはあやまりが無いものと思っていた。云うならば、彼もまた、卒然として蝉脱せんだつして官僚になったのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
リベラール党とコムニスト党との論はまったく相表裏すれどもともにあやまれり
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
もしわが説があやまつて居るならば、教を聞きたいものである。(七月二十九日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
シカモ手ヲ握ツテ傾倒スルモ崖岸がいがんニ立タズ、晨夕盤桓しんせきばんかんシテあやまツテ知己ヲ以テ許サルヽ者我ガ家里誠県ノ如キハシ。誠県資稟しひん明敏、容儀閑雅ナリ。わかクシテ斎藤拙堂翁ニ従ツテ古文ヲ学ブ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
任はその金が二成が持って来た金に似ているので、剪刀はさみで断ってしらべてみた。模様も色も完全に備ってすこしのあやまりもないものであった。そこで任は金を受け取って地券を大成に、かえした。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ここに舊辭の誤りたがへるを惜しみ、先紀のあやまあやまれるを正さまくして、和銅四年九月十八日を以ちて、臣安萬侶に詔して、稗田の阿禮が誦める勅語の舊辭を撰録して、獻上せよと宣りたまへば
古今に通じてあやまらず、中外に施してもとらざる、ものの道理、それが、とりも直さず真理です。西洋のことわざに、「真理は時代の娘」という言葉がありますが、真理こそ、永遠の若さをもったものです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
恐くは我が至誠のかがみは父が未然を宛然さながら映しいだしてあやまらざるにあらざるかと、事の目前まのあたりの真にあらざるを知りつつも、余りの浅ましさに我を忘れてつとほとばし哭声なきごゑは、咬緊くひしむる歯をさへ漏れて出づるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此言語解釈法が根柢からあやまつて居る如く、誤りを等しくして居る思想史や、文明史は、変つた考へ方から、すつかり時代の置き換へをして見ねばならない。定見家や、俗衆のためには、自己讃美あれ。
叙景詩の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さいはひに累代上台の家より出でゝ、あやまって過分顕赫けんかくの任に至る。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、検事の起訴理由には、寸毫すんごうあやまりもないのである。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかしその教育には、何かあやまったところがあった。
六三制を活かす道 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
爾等なんぢら聖書せいしよをもかみちからをもらざるによつてあやまれり。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは一つの大きいあやまりであると思う。
あやまれる思ひをもて自ら己をおろかならしむ。是故にこれを棄つれば見ゆるものをも汝は見るをえざるなり 八八—九〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「未開は決して健康ではないぞ。怠惰が健康でないやうに。あやまつた文明逃避ほど危險なものは無い。」
「弱いんぢや無い。僕ア今まで世間をあやまつて見て居た。少くとも僕だけは他に信じられると思ふから、思ふ存分に我儘もやり強情も張つて居たんだ。馬鹿だつたね。」
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
この女王蛇口にフルてふ玉を含み、夜中空に吐き飛ばすと、日のごとく輝くと。これいわゆる蛇の長競べが、海狗オットセイ蝦蟆がま同様、雌を争うて始まるをあやまり誇張したのだ。
若し私の考えるところがあやまっていないなら、これまで一般に認められていた利己主義なるものは、きわめて功利的な、物質的な、外面的な立場からのみ考察されてはいなかったろうか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかし、歴史の永い伝統は、その証拠が、長い長いあやまりをふみしめ、あるいは、足をたびたびふみ滑らしながらも、より高く、より高く立ちあがってきていることを示しているのである。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
なほかつぬしある身のあやまりて仇名あだなもや立たばなど気遣きづかはるるに就けて、貫一は彼の入来いりくるに会へば、冷き汗の湧出わきいづるとともに、創所きずしよにはかうづき立ちて、唯異ただあやしくもおのれなる者の全くしびらさるるに似たるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
B「お説によると、植物漢字名のあやまりは夥しいようですね」
「未開は決して健康ではないぞ。怠惰が健康でないように。あやまった文明逃避ほど危険なものは無い。」
これは霊狸の陰辺に霊狸香シヴェットを排泄する腺孔あるを見て牡の体に牝を兼ぬるとあやまったので古来斑狼ヒエーナが半男女だという説盛んに欧州やアフリカに行われたのも同じ事由と知らる。
砒石ひせきの用法をあやまった患者が、その毒の恐ろしさを知りぬきながら、その力を借りなければ生きて行けないように、葉子は生の喜びの源を、まかり違えば、生そのものを虫ばむべき男というものに
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この創造の自由が、宇宙の中に、出現したことは、まことに、驚異であるけれども、そのことはまた、宇宙の中にあやまちを犯すという「原罪」ともいうべき新しい歴史が生まれたともいうべきであろう。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
天文元年の著なる『塵添壒嚢抄じんてんあいのうしょう』八に、蛇が竜になるを論じ、ついでに蛇また鰻にるといい、『本草綱目』にも、水蛇がはもという魚に化るとあるは形の似たるよりあやまったのだ。