ふれ)” の例文
旧字:
は母のふところにあり、母の袖かしらおほひたればに雪をばふれざるゆゑにや凍死こゞえしなず、両親ふたおや死骸しがいの中にて又こゑをあげてなきけり。
繼「そうして斯う男と女と二人で一緒に寝ますと、肌をふれると云って仮令たとえおかしな事は無くっても、訝しい事が有るとおんなじでございますとねえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふれれば益々痛むのだが、その痛さが齲歯むしばが痛むように間断しッきりなくキリキリとはらわたむしられるようで、耳鳴がする、頭が重い。
さて本月一日大洪水、堅固なる千住橋ならびに吾妻橋押流し、外諸州の水災など惨状、こは追々新聞等にて御聞ごぶんふれ候はん。略之これをりゃくす
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
あるいは人の名前の名から起ったかは知らぬがとにかく今日の大字や坪・組またはふれというのに当るので、荘園の慣例として一つの名は一家に属し
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夕暮の徒然つれづれ、老母も期せずしてこの処に会したので、あえて音楽に関して弟子に対するほかは、面会日が水曜とふれの出た令夫人が、次のへやに居合せたり
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
願の通りその御扶持まいめしか粥になって来れば、私は新銭座しんせんざ私宅近処きんじょの乞食にふれを出して、毎朝来い、わしてると申して、私が殿様から戴いた物を
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これがまたきまって当時の留書とめがきとかおふれとか、でなければ大衆物即ち何とか実録や著名なだい戯作げさくの抜写しであった。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「七日の夜。……あの騒ぎのございました前日の、夜の五ツ頃(八時)、御用金は、八日朝の辰の刻(八時)までに川便でおくれというふれがとどきました」
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
二重に出でて向を見込みて突立ち「聞いた/\、おふれのあつた内侍六代ないしろくだい、維盛弥助を引つくくつて金にすらあ」
寛政のむかし山東庵京伝さんとうあんきょうでん洒落本しゃれぼんをかきて手鎖てぐさりはめられしは、板元はんもと蔦屋重三郎つたやじゅうざぶろうふれにかまはず利を得んとて京伝にすすめて筆を執らしめしがためなりといひ伝ふ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「木戸や辻番にふれが廻ったようですから、一人でいらっしゃると疑われるかもしれません、よろしかったら私の家へ寄って、夜明けまで休んでゆかれたらいかがですか」
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あし不自由ふじゆうであるにもかかわらず、四十にちかかおには、ふれればげるまでに白粉おしろいって、ときよりほかには、滅多めったはなしたことのない長煙管ながぎせるを、いつもひざうえについていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
後来攘夷じょうい的運動の伏線となり、大義名分は、何となく幕府に対する敵愾心てきがいしんの標幟の如く、今はすでに冷硬なる理窟にあらず、ふれればまさに手を爛焼らんしょうせんとする宗教的赤熱を帯び来れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
これは壜の周囲の空気が斯うなつたので、空気は壜にふれると冷えて湿気が垂れるやうになつたのだ。若し壜に氷が詰つてゐてもつと冷めたくなつてゐたら、垂れる水はもつと多くなるのだ。
しばらくして二人は穀物の作ってある畑の中の道に出た。道が狭いので二人は跡先に歩いている。外套のすそが作物の茎にふれてさらさらと鳴る。少し歩いて横へ曲って木の茂っている森の中へ這入はいった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
時の王鬼おうおに島中にふれを下し
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
太鼓が廻ってふれが廻って
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
海の中から飛道具で手向いするもんだにって、うにも手に負えねえてんだ、そこで御領主様から誰か船の中へ忍び込んで討取る者へは褒美を出すてえふれが出ただ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょうにいて贅沢ぜいたくをした御前方おまえがたには珍しくもあるまいが、この頃は諸事御倹約の世の中、衣類から食物たべものまで無益な手数をかけたものは一切いっさい御禁止というきびしいおふれだから
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何も宵啼をすりゃこうと、政府おかみからおふれが出たわけじゃないけれども、うがすかい、心持だ。悪いことはいませんや、お前さんのおためにその方がかろうと思うからね。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どういう訳だかお尋ねものがあるのなんのと厳しくって、只のうちへ旅人をとめる事がならねいというおふれになって居りやんすから、泊る事にはなりやすめえ、貴方あんたし困るなら
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
吉原よしわら追遣おいやってお女郎じょろうにしてしまうからと、それはそれは厳しいおふれで御座います。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
新「イヽエ私もそれが知れゝば失敗しくじって此家こゝには居られないから、唯一寸ちょっと並んで寝るだけ、肌を一寸ふれてすうっと出ればそれで断念あきらめる、唯ごろッと寝て直ぐに出てくから」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)