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要
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かなめ
ふりがな文庫
“
要
(
かなめ
)” の例文
太閤様を笑わせ、千利休を泣かせるのは
曾呂利
(
そろり
)
新左衛門に任す。白刃上に
独楽
(
こま
)
を舞わせ、扇の
要
(
かなめ
)
に噴水を立てるのは
天一天勝
(
てんいちてんかつ
)
に委す。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
扇の
要
(
かなめ
)
の一寸ばかりの所に見事に突き刺さり、扇は空に舞いあがり、きりきりと一つ二つ舞っていたが、さっと海に落ちていった。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
落ちると、トンと
幽
(
かすか
)
な音。あの力なさは足拍子でない。……畳に
辷
(
すべ
)
った
要
(
かなめ
)
の響。日ざしの白い静かさは、
深山桜
(
みやまざくら
)
が散るようである。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
八五郎が火事の最中、窓格子を蹴飛ばすと、格子は
要
(
かなめ
)
のこはれた扇のやうにバラバラになつて口をあいたのはそのためであつたのです。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
まさに、九州九ヵ国の重鎮とは、この家のことであり、朝廷の意向も「——九州の
抑
(
おさ
)
えは菊池を
要
(
かなめ
)
に」と
恃
(
たの
)
むところにあったであろう。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
と丁重に述べておいて、下げた頭をあげると、動作のゆっくりした湯川氏が手をださぬうちに扇の
要
(
かなめ
)
をくるりと向けかえて
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
六郎は
己
(
じぶん
)
が怪しい女房を刺すとともに、
扇
(
おうぎ
)
の
要
(
かなめ
)
でも
除
(
と
)
ったように
主家
(
しゅか
)
の乱脈になったことを考えずにはいられなかった。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と云いながら十三間の平骨の扇で続け
打
(
うち
)
にしても又市は手を放しませんから、
月代際
(
さかやきぎわ
)
の所を扇の
要
(
かなめ
)
の
毀
(
こわ
)
れる程強く突くと、額は破れて流れる血潮。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そのわずかに開いた扇状地の
要
(
かなめ
)
どころを、一髪に渡って汽車は走る。たちまち谷の上空に、高くしかも近く、顎を伸ばしている雪もつ峯を瞥見する。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
のき打ちの門、
要
(
かなめ
)
もちの垣、それから竿に干した洗濯物、——すべてがどの家も変りはなかつた。この平凡な
住居
(
すまひ
)
の
容子
(
ようす
)
は、多少信子を失望させた。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
伊予の松山は日露戦争
以来
(
このかた
)
俘虜の収容地になつてゐるので、そんな事から
彼地
(
あすこ
)
の実業家井上
要
(
かなめ
)
氏は
色々
(
いろん
)
な方面の報道を集めて俘虜研究を
行
(
や
)
つてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
扇の
要
(
かなめ
)
がぐるぐる廻って、
地紙
(
じがみ
)
に塗った
銀泥
(
ぎんでい
)
をきらきらさせながら水に落ちる景色は定めてみごとだろうと思います。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分が重臣会議に出ないようにしているのは、一門宿老の確執反目にまきこまれたくないのと、これが
要
(
かなめ
)
という大事をしっかり見ていたいためである。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
反戦・反軍ということと「犯罪」という観念とを直結した用語の方法のうちにこそ、一九五一年度の、日本人民の人権擁護の
要
(
かなめ
)
石がむき出しにされている。
修身
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
たとえば、玄関先の雪駄の紅い鼻緒にしろ、
要
(
かなめ
)
の若葉の朱いのにしろ、その前庭の土の工合までが、一つ一つ懐しいもののように目に触れてくるのであった。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
自給自足が最後のものではないけれども、自給自足から出立というのが彼のこの植民地の
要
(
かなめ
)
となっている。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところが、浮いているのは、血漿や脂肪だけで、肝腎
要
(
かなめ
)
の血が、この水の中にどうしても見出せないのだ。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この問ひよくわが願ひの
要
(
かなめ
)
にあたれり、されば望みをいだけるのみにてわが
渇
(
かわき
)
はやうすらぎぬ 三七—三九
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
それを丁度扇の
要
(
かなめ
)
に当る所に一段と高い台があって、其処に看守が陣取り、皆を一眼に見下している。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
利休は、腰から扇子を抜き取り、
要
(
かなめ
)
の方を先にして右手に持ちかえました。やや屈みながら、歩き幅の間隔ずつに、扇の要口を庭の面の雪中へ突込むのであります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
例えば
轆轤
(
ろくろ
)
に集中する傘の骨、
要
(
かなめ
)
に向って走る
扇
(
おうぎ
)
の骨、中心を有する
蜘蛛
(
くも
)
の巣、光を四方へ射出する
旭日
(
きょくじつ
)
などから暗示を得た縞模様は「いき」の表現とはならない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
それゆえ指導者を選ぶということが肝心
要
(
かなめ
)
である。選び方が悪ければ、道を踏みはずすより外はない。教わらない方がまだいいことになってくる。美は遊戯ではないのである。
雲石紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかし
要
(
かなめ
)
は、それが子供にいい事だか悪い事だか判断に迷った。ぜんたい「子供々々」と云うが、既に十歳以上になれば、気の廻り方は格別大人と変ったことはないのである。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もう一度繰り返せば雑炊の
要
(
かなめ
)
は、種の
芳香
(
ほうこう
)
を
粥
(
かゆ
)
にたたえて喜ぶこと。熱いのを吹き吹き食べる安心さ。なんとなく気ばらぬくつろぎのうまさなど、今や雑炊の季節ともいいうる。
夜寒に火を囲んで懐しい雑炊
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
どうしてしまったのか肝心
要
(
かなめ
)
の青山さんが、とんと姿を見せなかったんですからね……
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そっちはそれでよいとして、さて肝心
要
(
かなめ
)
のお豊姫の一条だが、とにかく武男さんの火の手が少ししずまってから、食糧つきの行儀見習いとでもいう
口実
(
おしだし
)
で、無理に押しかけるだな。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「イヤイヤ滅多な事を言出して取着かれぬ返答をされては」ト思い直してジット
意馬
(
いば
)
の
絆
(
たづな
)
を
引緊
(
ひきし
)
め、
藻
(
も
)
に住む虫の我から苦んでいた……これからが肝腎
要
(
かなめ
)
、回を改めて伺いましょう。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その立縞の縞と縞との間の地面をよく見ると、その左の方の一角を
要
(
かなめ
)
にして、上に開いた扇形に、三角形に、何時もの地面の緑色が、どういふわけか、黒い紫色に変つて居るのである。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
で、大体、肝心
要
(
かなめ
)
のことだけを講じ、後は他の諸氏の講義を参考にしていただきたく思うのである。大衆小説といっても小説であるからには小説の書き方に根本変りのあろうはずはない。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
この
御仁
(
ごじん
)
は、如何なるお人であるのだろう? 如何にもあの時の、わたしの構えは、あの刀が振り下ろされたら、
躱
(
かわ
)
したと見せて、咽喉元を、銀扇の
要
(
かなめ
)
で、突き破ってやるつもりだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この簡単なる
経典
(
おきょう
)
は、ただに『大般若経』一部六百巻の真髄、骨目であるのみならず、それは実に、仏教の数ある経典のうちでも、最も肝腎
要
(
かなめ
)
の重要なお経だということを表わしているのが
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
冷酷な、利害の
要
(
かなめ
)
をしっかり
把
(
と
)
って放さないような声である。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
画は、自慢で、かつて扇に、
時鳥
(
ほととぎす
)
を画いたのを、
長明
(
ながあきら
)
親王にさしあげた。親王が、なにげなく、扇を開かれると、
要
(
かなめ
)
が、キキと鳴ったので
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、その手に從つて、格子はバラバラにはづれ、
要
(
かなめ
)
の取れた扇のやうに口を開くと、先づ男が一人、窓の中から飛出しました。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
すっぱり縁を切ったなあさすがに
豪
(
えら
)
いや、へん、
猪口
(
ちょこ
)
の受取りようを知らねえような二才でも、学問をした
奴
(
やつ
)
あ
要
(
かなめ
)
が利かあ、大したもんだね
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
又
安心起行
(
あんじんきぎょう
)
の
要
(
かなめ
)
は念死念仏にありといって、「いずるいき。いるいきをまたず。いるいき。いずるいきをまたず。たすけたまえ。阿弥陀ほとけ。南無阿弥陀仏」
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……その一方、誰を射手に選ぼうかといろいろ相談をした結果、森脇右門作、赤川平五郎、
要
(
かなめ
)
七之助の三人を射手と定め、それぞれその旨を達した。さてその翌日。
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
名誉ある本命の血から帝政と王制復古の馬鈴薯を生やしたかという
要
(
かなめ
)
が解剖されていないならば、こんにちの日本のわたしたちにとって読むべき真実の価値はないだろう。
なぜ、それはそうであったか:歴史・伝記について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
黒縮緬の
宗十郎頭巾
(
そうじゅうろうずきん
)
を
冠
(
かぶ
)
って、
要
(
かなめ
)
の抜けた扇を顔へ当てゝ、小声で
謡
(
うたい
)
を唄って帰ります所へ、物をも言わず
突然
(
だしぬけ
)
に、水司又市一刀を抜いて、下男の持っている提灯を切落すと
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それからあとは何本打とうと、扇の
要
(
かなめ
)
のところを中心にすれば適当に打ってよい。そうすると、手で持つのに便利であるし、焼けても扱うたびに身がこわれるという憂いはなくなる。
甘鯛の姿焼き
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そしてとうとう肝心
要
(
かなめ
)
のD50・444号の貨物列車が通り過ぎてしまったんです。
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
要
(
かなめ
)
はさっきからオブシーン・ブックのオブシーンである
所以
(
ゆえん
)
のところを見付け出そうとしているのだが、彼の手にしている一巻のうちには第一夜から第三十四夜までが収めてあって
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
生活の
要
(
かなめ
)
として衣、食、住の様式の中にますます発達さして行きたいと思います。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
狎
(
な
)
れるといっても
涜
(
けが
)
すには至らず、諸事万事御意の
随意々々
(
まにまに
)
曾て抵抗した事なく、しかのみならず……此処が肝賢
要
(
かなめ
)
……他の課長の遺行を
数
(
かぞえ
)
て暗に盛徳を称揚する事も折節はあるので
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
冬の庭の
要
(
かなめ
)
を鏡のやうに磨き立てるものでなければならぬ。
冬の庭
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
ちがう。尊氏の意はちがう。どうなろうと、天皇はやはり至上の上にあがめおきたい。この国の美だ、また
要
(
かなめ
)
だ。もしそれを
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それだけですと、物事の廻り合せと思い
諦
(
あきら
)
めておりますが、今度は、肝心
要
(
かなめ
)
の番頭の忠五郎が、同じ容体になって、もう枕も上がらない有様でございます。
銭形平次捕物控:168 詭計の豆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今まで風も入れなんだ扇子を抜いて、ぱらぱらと開くと、
恭
(
うやうや
)
しく
要
(
かなめ
)
を向うざまに畳の上に押出して
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腰には
厳
(
いか
)
めしき刀を差し、時々は
扇子
(
せんす
)
の
要
(
かなめ
)
を
柄頭
(
つかがしら
)
のあたりに立てて、思い出したように
町並
(
まちなみ
)
や、道筋、それから仰いで
朧月
(
おぼろづき
)
の夜をながめているのは、いつのまにこの地へ来たか
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どうしても
要
(
かなめ
)
になる手がうかびませんでした、一年ちかくも練りあげ練り直しているうちに、或る夜ふと、相い長屋の一軒で誰かのうたう声を聞いたのです、耳馴れない音調で
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
要
常用漢字
小4
部首:⾑
9画
“要”を含む語句
必要
不要
要求
肝要
要素
要領
要慎
要用
要之
主要
重要
緊要
要所
要約
大要
要諦
不得要領
要心
要訣
要害
...