裏通うらどほ)” の例文
清正公樣せいしやうこうさままへ煎豆屋いりまめやかど唐物屋たうぶつやところ水天宮樣すゐてんぐうさま裏通うらどほり、とそツち此方こつちで、一寸々々ちよい/\えなくつたらしいんですが、……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まるい月は形が大分だいぶちひさくなつて光があをんで、しづかそびえる裏通うらどほりのくら屋根やねの上、星の多い空の真中まんなかに高く昇つてた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まがると先程さきほど糸屋いとやまへ眞直まつすぐけば大通おほどほりへ仕舞しまひますたしか裏通うらどほりとおほせで御座ございましたが町名ちやうめいなんまをしますか夫次第それしだい大抵たいていわかりませうと問掛とひかけたり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つくればイエそれにはおよびませぬ裏通うらどほりをけばつい其處そこなりなべうちのことがいそがしう御座ございますツイゆきてツイかへるにともなどゝは大層たいそうすぎます支度したくなにりませぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毎夜まいよとまりのきやく連込つれこ本所ほんじよ河岸かし宿屋やどやて、電車通でんしやどほりでそのきやくとわかれ、道子みちこ裏通うらどほりにあるアパートへかへつてると、まどしたとなりてら墓地ぼちになつてゐるから
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
まへなるえん障子しやうじけた、十しよく電燈でんとうあかりとゞかない、むかし行燈あんどんだと裏通うらどほりにあたる、背中せなかのあたりくらところで、がブーンとく……の、陰氣いんきに、しづんで、殺氣さつきびた樣子やうす
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつか、吉原よしはら大火たいくわもおなじであつた。しかもまだだれわすれない、あさからすさまじい大風おほかぜで、はなさかりだし、わたし見付みつけから四谷よつや裏通うらどほりをぶらついたが、つちがうづをいてけられない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
落葉おちばたくなるけふりすゑか、れかあらぬかふゆがれの庭木立にはこだちをかすめて、裏通うらどほりの町屋まちやかた朝毎あさごとなびくを、金村かなむら奧樣おくさまがお目覺めざめだとひとわるくちの一つにかぞへれども、習慣ならはしおそろしきは朝飯前あさはんまへの一風呂ふろ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)