葛飾かつしか)” の例文
葛飾かつしかにそだって、父親はゆうめいなお神楽師かぐらし、虎吉は小さいときから神楽笛を吹きなれて、それがまた、非凡の腕まえだったのです。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
小松川と中川にかこまれた平井ひらいの洲。川のむこうはもう葛飾かつしかで、ゆるい起伏の上に、四ツ木、立石たていし、小菅などの村々が指呼しこされる。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
佐渡は、恐縮して、藩邸から自分の邸に帰ると、すぐ駒の支度をさせ、従者もただ一人連れたきりで、葛飾かつしかの法典ヶ原へいそいだ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一は長助が十八貫めもあった大兵肥満たいひょうひまんの男だったということ、第二はまえにもいったように葛飾かつしか在の草相撲ずもう上がりであったということ
葛飾かつしかの真間の浦廻うらみぐ船の船人さわぐ浪立つらしも」(巻十四・三三四九)という東歌(下総国歌)があるのに、巻七(一二二八)に
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
第一は目黒めぐろ応法寺おうほうじ。酒買い観世音菩薩木像一体かんぜおんぼさつもくぞういったい。第二は品川しながわ琥珀寺こはくじ。これは吉祥天女像きっしょうてんにょぞう、第三は葛飾かつしか輪廻寺りんねじの——
と、葛飾かつしかの生活が目に浮んで来る。私は子鴉とよく話をした。よく遊んだ。しかし、それが今に何の係りがあろう。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
葛飾かつしかから浦粕一帯は海苔のりの産地として知られている、したがって、海苔をくのに使う海苔すだれ(約二十センチ四方ほどの大きさで、細い芦の軸で編んだ物)
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「絵を断念して葛飾かつしかへ帰り土を掘って世を渡ろうかしら」——とうとうこんなことを思うようになった。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「東京? 嘘つけ。東京生れには、幸田君のやうなのはないよ。あれば、葛飾かつしか、四つ木あたりかな……」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
この踊りがうわさに広がって、北は相馬、南は葛飾かつしか、東は佐倉の方面から、小金の町へ人が集まって来ます。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「アノ、わたくしは、葛飾かつしかの三方子ぽうし川尻かわじりの六兵衛と申す漁師の娘で、お露という者でございますが——」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わざわざ鬼の持っている縄で爺の体を巻き付けて天神に願掛けをする。そうして七日目にその縄を解くのだといっております。(願掛重宝記。東京府南葛飾かつしか郡亀戸町)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
松杉椿のような冬樹ふゆきが林をなした小高い岡のふもとに、葛飾かつしかという京成電車の静な停車場がある。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
下総の亭南ていなみ、今の岡田の国生くにふ村あたりが都になる訳で、今の葛飾かつしかの柳橋か否か疑はしいが檥橋ふなばしといふところを京の山崎になぞらへ、相馬の大井津、今の大井村を京の大津に比し
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
遠い葛飾かつしかの江戸川じゃあない、江戸の小石川と牛込のあいだを流れている江戸川で……。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
房総半島に上り、翁は再び望多うまぐさろの笹葉の露を分け進む身となった。葛飾かつしかの真間の磯辺おすひから、武蔵野の小岫ぐきがほとり、入間路いりまじの大家が原、埼玉さきたまの津、廻って常陸の国に入った。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
氷の如く澄める月影に、道芝みちしばの露つらしと拂ひながら、ゆりかけしたけなる髮、優に波打たせながら、畫にある如き乙女の歩姿かちすがたは、葛飾かつしか眞間まゝ手古奈てこなが昔しのばれて、斯くもあるべしや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
さるほどに相添あひそひてより五ねんはるうめころのそゞろあるき、土曜日どえうび午後ごゝより同僚どうりよう二三にんうちつれちて、葛飾かつしかわたりの梅屋敷うめやしきまわかへりは廣小路ひろこうぢあたりの小料理こりようりやに、さけふかくはのまたちなれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのまた兄さんは月に酔う人で、或秋の夜に兄弟両人ふたりして月に浮かれて、隅田川より葛飾かつしかにわたり、田畑の別なく、ひと夜あるき廻り、暁に至りケロリとして寄宿舎に帰って来たことがありました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
葛飾かつしか
沙上の夢 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
半瓦はんがわらの部屋のもんだよ。葛飾かつしかから野菜物がたくさん届いたから、ばば殿のところへもけてやれと親方が仰っしゃるんで、一背負ひとしょい持って来た」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳰鳥(かいつぶり)は水にかずくので、葛飾かずしかのかずへの枕詞とした。葛飾は今の葛飾かつしか区一帯。「にえ」は神に新穀を供え祭ること、即ち新嘗にいなめの祭をいう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「もう一人お富さんという御飯炊きがおりますが、父親が病気で三日ばかり前から葛飾かつしかの在所へ帰っております」
葛飾かつしかから浦粕一帯は海苔のりの産地として知られている、したがって、海苔をくのに使う海苔すだれ(約二十センチ四方ほどの大きさで、細い芦の軸で編んだ物)
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
帆村が調べたところでは、前者は「葛飾かつしか区新宿二丁目三八番地松山」が出したものであり、後者は「板橋区上板橋五丁目六二九番地杉田」が出したものであった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もてあました峰丹波とお蓮様、このうえは源三郎をおびきだして、ひと思いに亡き者にするよりほかはないと、門之丞をだきこんで、ああして葛飾かつしかの寮へひきよせたのだった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
釣りをしている時だけがたのしみであった。与平だけでは二人の子供のめんどうは見られないので、千穂子は与平にたのんで、葛飾かつしかにある、自分の実家の方に二人の子供をあずけた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
煤烟すすけむりたなびくもとに葛飾かつしかの青菜畑ははるばると見ゆ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よしきり葛飾かつしかひろき北みなみ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「もう一人お富さんといふ御飯炊ごはんたきが居りますが、父親が病氣で三日ばかり前から葛飾かつしかの在所へ歸つて居ります」
葛飾かつしかのほうから嫁を貰ったっけだ、そしたら頭あちっとも治らねえで、水汲みい始めただ
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それを、富岡さんに、あんな、意地悪な事を云はれて、……心にこたへないはずつてないでせう? 三人とも、日本人ですよ。——葛飾かつしかだつて、四ツ木だつて、よけいなお世話だわ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
われもひとにも告げむ葛飾かつしか真間まま手児名てこな奥津城処おくつきどころ 〔巻三・四二三〕 山部赤人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
葛飾かつしかの中川は、御留川おとめがわだった。いわゆる禁漁区域で、将軍家の御用網のほかは、打てないことになる。でこの川筋には、魚鱗ぎょりんの光りが押し合っている。これには、梅渓ばいけいも一口のって
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一面の裏田圃……上木下川かみきねがわ下木下川しもきねがわ、はるかに葛飾かつしかの野へかけて、稲田のおもてが、波のようにゆらいでいる。釣鐘堂つりがねどう浄光寺じょうこうじの森は、大樹の梢が風にさわいで、まるで、女が髪を振り乱したようです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
葛飾かつしか真間まま継橋つぎはし夏近し二人わたれりその継橋を
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
沼、川、また沼、あしの湿地。曠野の道でいやなものは、水だった。下総の猿島さしまから、武蔵の葛飾かつしか埼玉さいたま足立あだちの方角をとって歩こうとすれば、大河や小さい河は、縦横無尽といっていい。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ、ふしぎなくらい空腹なんです、三年ばかりまえにいちどこんな事がありました、あれはたしか殿さまのお供をして葛飾かつしかのほうへかもを捕りにいったときでしたが、途中から雨になって」
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
源三郎が急に思いたって、向島むこうじまから葛飾かつしかのほうへと遠乗りにでかけ、門之丞の案内で、不安ながらもお蓮様の門をたたくと、思いがけなくお蓮さま、峰丹波の一党が、数日前からそこにきていた——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは、葛飾かつしかの法典ヶ原で開墾に従事している、宮本武蔵という名であった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
レコードの数がえるのといっしょに、だんだん頭がおかしくなってきたんべえ、それでよ、嫁をもらったら治るべえかって、葛飾かつしかのほうから嫁を貰ったっけだ、そしたら頭あちっとも治らねえで
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
武州岩槻いわつきからくる道と、千住からくる葛飾かつしかの往還とが、ここで一路ひとつになって奥州街道となる幸手さっての宿に入り込んだのは前の四人で、高野橋の袂、網屋という旅籠はたごの一室に陣取り、川魚料理をさかな
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葛飾かつしかのほうの小学校へ転校させた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
するとその夜早や、足立あだち豊島としま葛飾かつしかなどの近郡から
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)