粉雪こゆき)” の例文
ハッと呼吸いきを引く。目口に吹込む粉雪こゆきに、ばッと背を向けて、そのたびに、風と反対の方へ真俯向まうつむけになって防ぐのであります。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この時は朝から粉雪こゆきが降り続いて、夕刻には、三寸ばかり積り、それからカラリと晴れて、大変な美しい月夜になりました。
風は相変らず轟々ごうごうえて、灰ともけむりともたとえようの無い粉雪こゆきが、あなたの山の方から縦横上下じゅうおうじょうげに乱れて吹き寄せた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
月光を受けている部分は銀のように白く光って、折々、西風が煙のように粉雪こゆきを吹きくっていた。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
さいわいと藤尾がいる。冬をしの女竹めだけの、吹き寄せてを積る粉雪こゆきをぴんとねる力もある。十目じゅうもくを街頭に集むる春の姿に、ちょうを縫い花を浮かした派出はで衣裳いしょうも着せてある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちらちら粉雪こゆきの降っているにもかかわらず私は身体中汗になって、あしが棒のようになるまで探ね廻ったが、もとより住所番地姓名を明細に知っているわけでもないので
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
さて、しかるにその足跡たるや、一刻しばらくもやまない粉雪こゆきのために、薄くおおわれておりますが、これがきわめて大切な点で、ほかの無数の足跡と比べて蔽われ方が著しゅうござる。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はまだけねどふりしきるゆき人足ひとあし大方おほかた絶々たえ/″\になりておろ商家しやうかこゝかしことほ按摩あんまこゑちかまじいぬさけびそれすらもさびしきを路傍みちばたやなぎにさつとかぜになよ/\となびいてるは粉雪こゆき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
松が粉雪こゆきちらつく日のくもり何鳥か啼けりあはれみささぎ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
散りこし粉雪こゆき
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
ハツと呼吸いきく。目口めくち吹込ふきこ粉雪こゆきに、ばツとけて、そのたびに、かぜ反對はんたいはう眞俯向まうつむけにつてふせぐのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一面に降頻ふりしき粉雪こゆきは、戸を明けるのを待って居たように、庭の方からたちまさっと吹き込んで来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きたときは、せたそら次第しだい遠退とほのいてくかとおもはれるほどに、れてゐたが、それが眞蒼まつさをいろづくころからきふくもて、くらなか粉雪こゆきでもかもしてゐるやうに、密封みつぷうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこはかと粉雪こゆきふり
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ときは、粉雪こゆきを、ぐるみ煽立あふりたてますので、したからも吹上ふきあげ、左右さいうからも吹捲ふきまくつて、よくふことですけれども、おもてけやうがないのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
起きた時は、日をせた空がしだいに遠退とおのいて行くかと思われるほどに、好く晴れていたが、それが真蒼まっさおに色づく頃から急に雲が出て、暗い中で粉雪こゆきでもかもしているように、日の目を密封した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くいしばっても、閉じても、目口に粉雪こゆきを、しかし紫陽花あじさいの青い花片はなびらを吸うように思いました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くひしばつても、ぢても、目口めくち粉雪こゆきを、しかし紫陽花あぢさゐあを花片はなびらふやうにおもひました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうは言っても、小高い場所に雪が積ったのではありません、粉雪こゆき吹溜ふきだまりがこんもりと積ったのを、どっと吹く風が根こそぎにその吹く方へ吹飛ばして運ぶのであります。一つ二つのすうではない。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うはつても、小高こだか場所ばしよゆきつもつたのではありません、粉雪こゆき吹溜ふきだまりがこんもりとつもつたのを、どつかぜこそぎにはう吹飛ふきとばしてはこぶのであります。ひとふたつのすうではない。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)