わっし)” の例文
「いや、わっしにはよく判る。気の毒だが番頭さん、子分の者に送らせるから、しばらく八丁堀の笹野様の役宅へでも行っていて下さい」
じゃアまアわっしと一緒においでなさい、どうせ彼方あっちへ帰るんですからお連れ申しましょう、其の代りお嬢様に少しおねげえがあるんでげす
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
きたねえな! ってわっしあ本当にうっかり。それが何です、山河内やまこうちという華族の奥方だったんですって、華族だって汚えんですもの。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうかと思うと、「へえ仁王だね。今でも仁王をるのかね。へえそうかね。わっしゃまた仁王はみんな古いのばかりかと思ってた」
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんなわけだからね、この五十銭で二三日のところを君がここで辛抱してりゃ、わっしが向地から旅用の足しぐらいは間違いなく送ってあげらあ、ね。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
昨年の暮ごろからでございますよ、元は無邪気で、きびきびして、始終しょっちゅう旦那に小遣をねだって、旦那がうるさがると、わっしが仲へたってもらってあげるものだから、戦争から帰ってらしても、わっし
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
首領かしら。見捨てて行くんですかい、こんなになっておるわっしを……』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「でも、それでわっしが返事をして、用が足りたらいいでしょう」
「だって……だって聞いてた何もかも表で。わ、笑わしたなあこのわっしなんだ。そ、そいつが元で小勇ン畜生め、手前の下手ァ棚に上げやがって、師匠にあんな恥ィかかして。ええ畜生。小勇も小勇なら大師匠もまた……」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
わっしあ伊豆の大島へ行きましたがね、から、唐人みたようなお百姓でも、刃あたりが違うと見えて、可いなアーッていやあがるんで。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其の人が着物を着替る時に、紺縮緬の胴巻がバタリと落ちたら慌てゝかくすから、わっしア取りやアしないったら、ニヤリと笑顔わらいがおをして居たが
こんなわけですよ親分、叔父の孫右衛門が取込んだわっしの親の金は、三千両や四千両じゃありませんが、大負けに負けて二千両で我慢しましょう。
ねえ君、こうしてわっしのように、旅から旅と果しなしに流れ渡ってて、これでどこまで行着きゃ落着くんだろう。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
おおかたそんなこったろうと思ってた。実あ、わっしもあの隠居さんをたよって来たんですよ。——なにね、あの隠居が東京にいた時分、わっしが近所にいて、——それで知ってるのさ。いい人でさあ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わっしはチューブッフ(牛殺の意)」
「そうかも知れません、わっしあ御存じの土地児とちっこじゃないんですから、見たり、聞いたり、透切すきぎれだらけで。へい、どうして、貴方?」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音「それはまアお嬉しい事で、わっしはそればかり案じて居ましたが、それはまア何よりの事で、それに勇助は達者で居りますか」
利かして死んなすったにしても、ね、前々からこういうわけだということが、例えばわっしの口からでもれたとしたら、佃の方の親方が黙って承知はしめえでしょう
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「ああ、造兵かね、わっしの友達にも四五人居るよ。中の一人は、今夜もお不動様で一所だっけ。そうかい、そいつは頼母たのもしいや。」
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
由「旦那、只何うもわっしが今日驚きましたのは、のツク乗りで、何うもさかさまに紐へ吊下ぶらさがって重次郎さんがさがって参ります処には驚きました」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっしもね、これでも十二三のころまでは双親ともにいたもんだが、今は双親はおろか、家も生れ故郷も何にもねえ、ほんの独法師ひとりぼっちだ、考えてみりゃ寂しいわけなんさね。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
わっしったねえ、押入の中で、ぼうとして見えた時は、——それをね、しなしなと引出して、膝へ横抱きにする……とどうです。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音「心配しなますな、何うかわっしが才覚をしようから待って居てくんなまし、大引おおびけ過までには何うかして見ましょう」
「お上さん、お寂しゅうがしょうね。わっしにもどうかお線香せんこを上げさしておくんなさい」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
わっしが、私が参りますよ、串戯じょうだんじゃない。てッて、飛出すのも余り無遠慮過ぎますかい、へ、」と結んだ口と、同じ手つきで天窓あたまを掻く。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おっかねえ、からもう憎まれぐちを利くから村の者はたれわっしをかまって呉れません、ヘエ、御免なすって、えゝ此の間一寸ちょっとねえさんを見ましたが、えゝあれはあのお妹御様いもうとごさま
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっしゃ金さんてえ人のとこへ遊びにおいででしょうって、そう言っときましたぜ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
横ッちょに曲ってかかってるんですが、わっし過日いつか中から気になってならないんで、直すか直すかと思ってるとやっぱり横ッちょだ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勝「何うにも斯うにも、何うあっても昨夜ゆうべねえてんです、彼奴あいつわっしも昨夜はちっとも寝ねえんですもの、ガラリ夜が明ける、うちけえるとお人だから、すぐに来やしたんで」
わっしもそう言ったんで、島野さんも、生命いのちにゃあ別条はないっていうけれどね、早く手当をしてくれ、破、破、破傷風になるって騒ぐんで
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
由「でも、ピイー/\と川へ響けて大層聞えますね……何だかわっしア気がきますから、旦那徐々そろ/\支度をなさいな…大きに姉さんお世話さま、お茶代は此処へ置きましたよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
馬鹿にしねえ、大親分が居て、それからわっしが居た土地だ。大概てえげい江戸ッ児になってそうなもんだに、またどうして、あんな獣が居るんだろう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曲「あ痛うごぜえやす、何う云う訳だって、全く覚えがねえんでごぜえやす、只慌てゝわっしが……」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
口に税を出すくらいなら、はばかんながらわっしあ酒もくらわなけりゃ魚も売らねえ。お源ちゃんのめえだけれども。おっとこうした処は、お尻の方だ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うも御気象な事で、まアどうもお嬢さまがお小さい時分、確か七歳なゝつのお祝の時、わっしがお供を致しまして、鎮守様から浅草の観音様へめえりましたが、いまだに能く覚えております
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「早いにも、織さん、わっしなんざもう御覧の通りじじいになりましたよ。これじゃ途中で擦違すれちがったぐらいでは、ちょっとお分りになりますまい。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そりゃア何うも先生のめえでげすが、アヽやってお嬢さんもぶらぶら塩梅あんべえが悪くッておいでなさるし、何うかお気の紛れるようにと思って、わっし身許みもとから知ってるかてえ芸人でげすから
火の玉め、鍍金の方が年紀上としうえで、わっしあ仏の銀次だなんて、はじめッから挨拶がしゃくに障ったもんだから、かねてそのつもりだったと見えまさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それからお嬢様を此方こっちへ呼んでおふくろはあんな事を云いますが、おまえさんは何処どこまでも粂之助さんと添いたいという了簡があるなれば、わっしがまア何うにでもしてお世話を致しましょう
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぬたをの……今、わっし擂鉢すりばちこしらえて置いた、あれを、鉢に入れて、小皿を二つ、いか、手綺麗てぎれいよそわないと食えぬ奴さね。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ギラ/\するやつをひっこ抜いてわっしの鼻っ先へ突付け云わねえけりゃア五分だめしにしちまう、松蔭の家来だろう、三崎の屋敷に居たろう、顔を知ってるぞ、さア何うだと責められて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今度八丁堀のわっしの内へ遊びに来ておくんなせえ。一番ひとつ私がね、嚊々左衛門かかあざえもんに酒を強請ねだる呼吸というのをお目にかけまさ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勝「エ、御尤もで、じゃアわっしは是からすぐに行って参ります、申訳がありませぬから、あの野郎、本当に何うもふざけやアがって、引張って来て横ずっぽう撲飛はりとばして、屹度きっと申訳をいたします」
や、素敵なものだと、のほうずな大声で、何か立派なのとそこいらの艶麗あでやかさに押魂消おったまげながら、男気おとこッけのない座敷だから、わっしだって遠慮をしました。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わっしア小平という胡麻のへいでございやす、先刻さっき番頭さんにいう通り、八右衞門という荷主が山口屋へ為換かわせを取りにくと云うから、少しでもそう云う事を聞いちゃア打捨うっちゃっちゃア置けねいから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっしは日暮前に、その天幕張テントばりの郵便局の前を通って来たんでございますよ。……ちょうど狼の温泉へ入込いりこみます途中でな。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あらっぽい仕事だが頭で突いて毒をませ、生空なまぞらを遣って此方こっちの店へ来た所が、山出しの多助の畜生に見顕みあらわされた上からは、わっしア縄にかゝって出るのは承知さ、わっちがどじを組んだって外とは違い
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お道さんが手拭を畳んでちょっと帯に挟んだ、茶汲女ちゃくみおんなという姿で、湯呑を片手に、半身で立ってわっしの方をましたがね。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
正「今度こんだわっしの番だ、此ん畜生め親父を殺しやアがって此ん畜生め」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御入用のお客様はどなただか早や知らねえけれど、何でもわっし研澄とぎすましたのをお持ちなさると見えるて、御念の入った。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)