つかれ)” の例文
されどかのグアスコニアびとが未だ貴きアルリーゴをあざむかざるさきにその徳の光は、かねをもつかれをも心にとめざる事において現はれむ 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
清君は、一晩ぐっすり寝たので、もうすっかりつかれがなくなっている。ただ服がないので、艦長のだぶだぶの大きな軍服を着ているのが、滑稽こっけいだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
三四郎はめしも食はずに、仰向あほむけに天井をながめてゐた。時々とき/″\うと/\ねむくなる。あきらかに熱とつかれとに囚はれた有様である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一日野良に出て働いて、夕暮になると、みんなは月の下でこうして踊り、その日のつかれわすれるのでありました。
月と海豹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まじ/\してたが、有繋さすがに、つかれひどいから、しんすこ茫乎ぼんやりしてた、なにしろしらむのが待遠まちどほでならぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たつた一人の俺の陣地に忍びこんで来て、俺のつかれと寂寥とに僅ばかりの慰安をでも与へてくれるのは此女だけである、俺は安心して此女の腕によりかかつて眠れる。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
うかゞへばひるつかれかすや/\とやす寢入ねいり居り夜具の上よりゆかとほれと氷のやいばなさけなくも只一つき女は苦痛くつうの聲も得立ずあへなくもいきたえたれば仕濟しすましたりととこの下よりくだん服紗包ふくさつゝみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ささやかな工場を持つ鍛冶屋かじやの大将こと金谷鉄造は、親類の不幸を見舞いにいった帰り、思いがけぬひどい目にあったが、そのつかれを休めるいとまもなく、もう仕事場に出て
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妹婿は昼間のつかれで、飯台にもたれたまま眠ってるし、鷲尾はいつものように台所へいって水枕をつくると、子供たちのそばにいって横になったが、とても寝つけそうでなかった。——
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
も幾年の学びたる力一杯鍛いたる腕一杯の経験修錬しゅれんうずまき起って沸々ふつふつと、今拳頭けんとうほとばしり、うむつかれも忘れ果て、心はさえさえ渡る不乱不動の精進波羅密しょうじんはらみつ、骨をも休めず筋をも緩めず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
明くる八月一日は、場所が気に入ったので、貴重な一日ではあるが滞在してつかれを休めることにした、実際又其必要があったのだ。朝と夕方に雨がまた降り出したが、大降りにはならなかった。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
蛋白石色オパアルいろ薔薇ばらの花、後宮こうきゆう香烟かうえんにつつまれてやす土耳古トルコの皇后、蛋白石色オパアルいろ薔薇ばらの花、絶間無たえまななでさすりのつかれ、おまへの心はしたたかに滿足した惡徳の深い安心を知つてゐる、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
弥撒ミサを行ふ間は、わが心自づと強く、身もしまつて、尊い葡萄酒のかゞやきは眼に満ちわたり、聖なる御油みあぶらに思も潤ふが、このわが廊堂の人げない処へ来ると、此世のつかれ崩折くづをれて、くゞまるともかまひない。
法王の祈祷 (新字旧仮名) / マルセル・シュウォッブ(著)
「けふのつかれさぞあらむ。まかりていこひ玉へ。」と人して部屋へいざなはせぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
差向き僕らは体のつかれを休めようと欲してサロンを辞した。そして廊下で一人の女中に通り過がったが、その女中は僕らに会釈をして通って行った。さらに部屋に帰って見れば、「籠る感じ」である。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「旅のおつかれのところを、お伺いいたします御無礼をおゆるし下さい」
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そしてけさつかれが直って、おれの足の下で息をしている。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そしてけさつかれが直って、己の足の下で息をしている。
何に疲れたとも知れぬつかれがある。
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あゝ永遠とこしへつかれの衣よ、我等は心を憂き歎きにとめつゝ彼等とともにこたびもまた左にむかへり 六七—六九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
美しい女の美と見えたものは、実は心の栄養の全く不充分な、そしてやまひつかれとが産んだ反自然はんしぜん畸形児かたはものであつたのだ。現にここにかうして向合つて居る女がそれだ。俺がそれだ。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
帆村は、だんだんつかれを感じてきた。そしてついには、うとうとと眠気ねむけをもよおしてきた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つかれひどいから、しんは少しぼんやりして来た、何しろ夜の白むのが待遠まちどおでならぬ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし相手はつかれで、語尾はすぐ眠りの中にれてしまう。——
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
もう大ぶおつかれが見えている。3300
肉體とともにこゝに來りてつかれ甚しきわが魂を、ねがはくは少しくこれをもて慰めよ。 一〇九—一一一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おな道理だうりで、さかる/\鈴鹿すゞかくもる=といひ、あはせりたや足袋たびへて=ととなへる場合ばあひには、いづれもつかれやすめるのである、無益むえきなものおもひをすのである、むし苦勞くらうまぎらさうとするのである
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
坂は照る照る鈴鹿すずかくもる=といい、あわせりたや足袋たび添えて=と唱える場合には、いずれもつかれを休めるのである、無益むえきなものおもいを消すのである、むしろ苦労をまぎらそうとするのである、うささんじよう
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)