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生々
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なまなま
ふりがな文庫
“
生々
(
なまなま
)” の例文
かまくら時代の百鬼夜行の絵巻物には、この妖怪がへんに
生々
(
なまなま
)
しくかけているが、皆足を持ち、様々な姿態をつくして活動している。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
で、細っこい脛ながら、武道で鍛えた
腱
(
けん
)
の逞ましさ、そいつを蒼白い月光に、
生々
(
なまなま
)
と見せてムキ出しにし、延び延びと立った九十郎
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
無活動を
強
(
し
)
いられた夜や昼を過ごすうちに、あまりに
生々
(
なまなま
)
しい光を恐れ健康の太陽には焼かれるような、種々の思想が起こってくる。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
昨日あたり山から
伐出
(
きりだ
)
して来たといわぬばかりの
生々
(
なまなま
)
しい丸太の電柱が、どうかすると向うの見えぬほど遠慮会釈もなく突立っている。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
如何
(
どう
)
かしてアベコベにこの男に蘭書を教えて呉れたいものだと、
生々
(
なまなま
)
の初学生が無鉄砲な野心を起したのは全く少年の血気に違いない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
その板は丸太の外側を削ったものでできた不完全な
生々
(
なまなま
)
した板で、わたしはそのはじを
鉋
(
かんな
)
で真っすぐにしなければならなかった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
百八十円で買ったとかいう狸の皮の裏には黒い
汚点
(
しみ
)
のあとがところどころに残っていて、それは
生々
(
なまなま
)
しい人間の血であると医師は言った。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だがその反對に、夢の中で感ずる情緒は、現實のそれと比較にならないほど、ひどく
生々
(
なまなま
)
としてレアリスチックに強烈である。
夢
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そして、その白く抜けた
額
(
ひたい
)
に、軽がると降りかかるウエーヴされた断髪は、まるで海草のように
生々
(
なまなま
)
しく、うつくしく見えた。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ただちょっと睡っているようにしか見えない
生々
(
なまなま
)
した死骸であった。趙はその死骸へ手をやって泣いたがそのまま気が遠くなってしまった。
愛卿伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
烈
(
はげ
)
しい生の歓喜を夢のように
暈
(
ぼか
)
してしまうと同時に、今の歓喜に伴なう
生々
(
なまなま
)
しい苦痛も
取
(
と
)
り
除
(
の
)
ける手段を
怠
(
おこ
)
たらないのである。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
工場の人々は、まだ
生々
(
なまなま
)
しい惨事のあとに続いて、どんなことが起ろうとしているかを、早くも
悟
(
さと
)
って、
戦慄
(
せんりつ
)
の悲鳴をあげた。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
獄門橋で落として来たのは
生々
(
なまなま
)
しい事実にちがいないのに、二十日も経った後、どうしてそれが父の机の上にあるのだろうか?
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と女はいって、
牛
(
うし
)
や
馬
(
うま
)
の
生々
(
なまなま
)
しい
肉
(
にく
)
を
切
(
き
)
って
出
(
だ
)
してやりますと、
鬼
(
おに
)
はふうふういいながら、
残
(
のこ
)
らずがつがつして
食
(
た
)
べた
後
(
あと
)
で
人馬
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
髪のある僧侶として自分を考えるには、彼の胸に
躍
(
おど
)
る血潮はあまりに
生々
(
なまなま
)
しく、彼の歩いて来た道はあまりに罪が深かった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
単に
生々
(
なまなま
)
しい色彩に眼を
眩
(
くら
)
まされるのではなく、光と共に陰影を見る眼である。単に事物の分量に驚くのではなく、その質を吟味する眼である。
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
わけてもシゲティーは、日本を再三訪ね、その芸術的な所論も我らの耳に親しく、その演奏もまた我らの感銘に
生々
(
なまなま
)
しい。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
それは、明らかにウルリーケの筆跡であって、インクの痕もいまだに
生々
(
なまなま
)
しかった。彼女は自分の夢を、この章句の下に書きつけておいたのだ。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「まさにそうだな、名状すべからざるものだ。つまり名状とまでゆかない
生々
(
なまなま
)
したものだ。きみはそんな時どうする。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
木魚を置いたわきに、三宝が据って、上に、ここがもし
閻魔堂
(
えんまどう
)
だと、女人を解いた生血と
膩肉
(
あぶらみ
)
に
紛
(
まが
)
うであろう、
生々
(
なまなま
)
と、滑かな、紅白の巻いた絹。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あああなたは
生々
(
なまなま
)
しい真実を好まれないのです。がキリストはそれを好んでいた。キリストは
笞
(
むち
)
を取ってエルサレムの寺院から
奸商
(
かんしょう
)
らを追い放った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ボイルの洋服が、汗でジットリと背について、白い首筋と黒い断髪と、全体がなにか親しい、
生々
(
なまなま
)
しい感じであった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
伏見人形風の彩色の上からニスを塗ったのが如何にも
生々
(
なまなま
)
しくて、椿岳の作としては余り感服出来ないものである。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
生々
(
なまなま
)
しくどぎつい感じのために、あまり見ばえがしないばかりでなく、一般にこの髪の色をした人間は、皮膚の
艶
(
つや
)
もわるく、ソバカスが多くて、その上
「にんじん」とルナアルについて
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
事件が終ってから、
大分
(
だいぶ
)
月日がたったので、ある恐ろしい疑惑は
未
(
いま
)
だに解けないけれど、私は
生々
(
なまなま
)
しい現実を遠ざかって、いくらか
回顧的
(
かいこてき
)
になっている。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
風呂の方が肉体に近く、肉体の方が昔と今とを結びつけるに
生々
(
なまなま
)
しい効果をもっているというせいでもあろうか。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
然かも黄泉の道行をば、
恰
(
あたか
)
も現実にでもあるかの如くに
生々
(
なまなま
)
しく表現して居るところに、憶良の歌の強味がある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
蒸せたか蒸せないかを知るには
小楊子
(
こようじ
)
かあるいは外の細いものを真中へ通してみて何も附かなければよし、
生々
(
なまなま
)
しい処が附いて来ればまた
暫
(
しばら
)
く蒸します。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
なるほどよく見ると、体はやせ細り、
尻尾
(
しっぽ
)
の先には
生々
(
なまなま
)
しい傷があって、寒さにぶるぶる震えています。
天下一の馬
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
函の廻りは黒山のような人
集
(
だか
)
りなのであったが、なるほどよく見れば確かにそれは木乃伊に違いなかったであろう。決して
生々
(
なまなま
)
しい人間の屍体なぞではなかった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
傲慢
(
ごうまん
)
なほど一直線であった彼女の熱情——あの人の生き力は、前にあるものを押破って、バリバリとやってゆく、冷静な学者の魂に
生々
(
なまなま
)
しい熱い血潮をそそぎかけ
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
けさの記憶のまだ
生々
(
なまなま
)
しい
部屋
(
へや
)
の中を見るにつけても、激しく
嵩
(
たか
)
ぶって来る情熱が妙にこじれて、いても立ってもいられないもどかしさが苦しく胸に
逼
(
せま
)
るのだった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まだ
生々
(
なまなま
)
としてはいたが、氷や霜だけから見ても、少なくも、
夜半
(
よなか
)
の十二時までには落命していたものであることが
素人
(
しろうと
)
にでもわかったし、医師の意見もそうだった。
誰が何故彼を殺したか
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
其紺靛の雲を
背
(
うしろ
)
に、こんもりした隣家の杉樫の木立、孟宗竹の
藪
(
やぶ
)
などが
生々
(
なまなま
)
しい緑を
浮
(
う
)
かして居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
生々
(
なまなま
)
しい実況写真で、ストリッパァが舞台のうえから
注
(
つ
)
ぎかけるビールを、かぶりつきにいる石田氏が、コップにもらって飲んでいるところが、無類の鮮明さで写っていた。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その間に
狡
(
ずる
)
さを働かして耳学問を盗み合い、捥ぎ取る利益も彼等には
歓
(
よろこ
)
びであった。鼈四郎が東洋趣味の幽玄を
高嘯
(
こうしょう
)
するに対し、檜垣の主人は西洋趣味の
生々
(
なまなま
)
しさを誇った。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それはどこから
伐
(
き
)
って来たか、
生々
(
なまなま
)
しい実際の葉柳だった。そこに警部らしい
髯
(
ひげ
)
だらけの男が、年の若い巡査をいじめていた。
穂積
(
ほづみ
)
中佐は番附の上へ、不審そうに眼を落した。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まあごらん遊ばせ、これなんぞは、こんなに
生々
(
なまなま
)
しい、さわると手がこの通りでございます
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところが、翌朝早くキーシュは
悠々
(
ゆうゆう
)
と村の中へ入って来ました。きまりの悪そうな顔などしていません。背中には殺した
獣
(
けもの
)
から切りとったばかりの
生々
(
なまなま
)
しい肉を背負っています。
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
それが私の見た二度目の死で、一度目の死の悲しみが私の心にまだ
生々
(
なまなま
)
しかったのだ。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
副院長の心を
計
(
はか
)
りかねて、何ともいえない
生々
(
なまなま
)
しい不安に襲われかけたからであった。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
新しい「気運」は随所に
生々
(
なまなま
)
しい彩りをみせ、激しい、用捨のない響きをつたえた。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
そこで少しその琴をお寄せになつて
生々
(
なまなま
)
にお彈きになつておいでになつたところ、間も無く琴の音が聞えなくなりました。そこで火を
點
(
とも
)
して見ますと、既にお
隱
(
かく
)
れになつていました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
生々
(
なまなま
)
とした割れ目がある。その傷口を眺めながらどうすることもできないのだ。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
肌に浸みる冬の感覚ももはや
生々
(
なまなま
)
しく記憶の上に再現することが不可能だ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この
生々
(
なまなま
)
しい感動を理窟で説明しようとしてはなるまい。こゝに終始せんとする決意が、すべて古典や古寺に向はんとするものの根本態度ではなからうか。過去とは愛と信仰の冷却に他ならない。
帰依と復活
(新字旧仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
長いあいだ憶い出しもせずにいたその出来事が、
生々
(
なまなま
)
しくお増の心に浮んで来た。村で
葡萄
(
ぶどう
)
を栽培したり、葡萄酒の醸造に腐心したりしていたという、その叔父の様子なども目に見えるようであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
生々
(
なまなま
)
しい顔をした友よ
小熊秀雄全集-05:詩集(4)小熊秀雄詩集2
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
戦争のさなかに、しかも、
生々
(
なまなま
)
しい新戦場の一室で、こんな楽しい夜を過せようとは英夫も祥子も、夢にも思っていなかった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
まだ、女の
髪油
(
かみあぶら
)
が、
生々
(
なまなま
)
と、曇っている。見つめていると、ありし日の女の姿が、ぼっと、眸にひろがって来る気さえする。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
々
3画
“生々”で始まる語句
生々世々
生々的
生々流転
生々殿
生々動流
生々流々
生々流相
生々溌剌