)” の例文
仕舞には話がこゝに書いてある通に、確かにきまつて、近処に住む老若男女共、皆なくその始終を知つて居るやうになりました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
またようむしの事語りていわく、博士なにがしは或るとき見に来しが何のしいだしたることもなかりき、かかることはところの医こそく知りたれ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いまのお話をくお聞き下さいまし、左内さまは太刀取りを押止め、静かに御藩邸を拝し、声を忍んで泣かれたのです、刑場にかれた以上
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
く見れば白髪をそめた者だ、シテ見ると老人だナ(大)ハイ私しも初めは老人と見込をつけましたが猶お考え直して見ると第一老人は身体も衰え
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
當時わがいよ/\まことのみなしごになりしをば、まだくも思ひ得ざりしかど、わが穉き心にも、唯だ何となく物悲しかりき。
蝋燭の淡い光でくは判らぬが、にかく其処そこに一種の光る物があるらしい。こんな処だから何が棲んでいるか判らぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは別荘の窓はこと/″\く開け放つてあるのに、只一箇所の窓丈鎖してあると云ふ事である。く視れば、この二つの窓は重げな扉で厳重に閉ぢてある。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
最初に出来たのを、リイケの皿に取つて遣ると、まだく焼けてゐなかつたので、はじけて形がめちや/\になる。
妻は私の田舎をく知らなかった。それで「兵さん」と言っても、それが誰であるかを知らないらしかった。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
けれどまたく考えると、春泉はるずみの婢と小歌とが話合って居た始終の詞に、あれだとかそれだとか符牒のようなことのあったのが、なお幾分の疑いをむねのこして
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
又推察を逞くして見れば、此男は胃に力が無くなつて、「時間」も消化することが出来にくいので、その一分一分を精一ぱいく咬み砕いてゐるかとも思はれる。
老人 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
さればお定は、丑之助がお八重を初め三人も四人も情婦を持つてる事はく知つてゐるので、或晩の如きは、男自身の口から其情婦共の名を言はしてくすぐつてつた位。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ほんに思えばあのうれしさの影をこの胸にぴったりき寄せるべきであったろうに。あの苦労の影をく味ったら、そのうちからどれ程嬉しさがいたやら知れなんだ物を。
以前くお前に話し/\したことだが、朝く寝入っていて知らぬ間にそっと音の立たぬように新聞を胸の上に載せて貰って、その何とも言えない朝らしい新らしい匂いで
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
剛勇ではあり、多勢ではあり、案内はく知っていたので、たちまちに淀の城を攻落せめおとし、与二は兄を一元寺いちげんじ詰腹つめばら切らせてしまった。その功で与二は兄の跡に代って守護代となった。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「でも、くおツてゐらツしやるんだもの、惡いわ。」と今度はまるい柔な聲がする。基れはお房で。周三は何といふことは無くじつと耳を澄ました。眼はパツチリ覺めて了つた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
其家そのいへまへなる一ぽんしたには洋卓テーブルが一きやくいてあつて、三月兎ぐわつうさぎ帽子屋ばうしやとが其處そこちやんでると、一ぴき福鼠ふくねずみ其間そのあひだすわつてましたが、やがねむつてしまつたので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
人間に性慾の錯乱があるのは、誰でもがく知つてゐる事だが、鳥類にもそれがある。たゞ鳥類にそんな間違があるからといつて、余りやかましく言ひ立てる事だけはして貰ひたい。
原稿が一度なくなるとまた容易に稿をあらため難いことは、我も人もく承知している所である。この大切な品がどんな手落で、遺失粗相などがあるまいものでもないという迷信を生じた。
それからく耳をすましてきゝますと人の息をするようでげすな。
つかの間であったがく眠ったと思う。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つたなき心には何ともわきまへがたく候、この文差上げ候ふ私の心お前様にく分り候はんや覚束おぼつかなく候へども、先ほど申し候ふとおりそれはどうでもよろしく
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さればお定は、丑之助がお八重を初め三人も四人も情婦をんなを持つてる事はく知つてゐるので、或晩の如きは、男自身の口から其情婦共の名を言はしてくすぐつて遣つた位。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
公子。そはいらぬ禮儀なり。われはかれと相知れり。汝は我友なれば、渠はことさらに紹介をば求めざるべし。渠は唯だおん身を知ることを得たるを喜ぶならんといふ。
「蒲生家でなければ再び主取りはしないという、その珍重な志操を生かしたい、残念ながら蒲生家にはもう再興の望みはござらぬ、く御思案のうえ当家へお仕えなすってはどうか」
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ですから生れ附の縮毛には必ず何所かにひらたい所が有る、若し夫が無ければ本統の縮毛では無い、所で私しが此毛を疏末そまつな顕微鏡に掛けてっく視ました所もとからすえまで満遍なく円い
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
変にまたぎ心地が悪うございますから、けて通ろうといたしますと、右の薄光りの影の先を、ころころと何か転げる、たちまち顔があらわれたようでございましたっけ、く見ると、うさぎなんで。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なる程先生が生得雷を嫌ふことは、わたくしはく知つてゐた。それに嘗て躋寿館にゐて落雷に逢つてからは、これを嫌ふことが益甚しくなつてゐたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくて一日ごとに我が受くるところの恩澤は加はりゆくなり。姫。否、さる筋の事をいふにはあらず。わが二親ふたおやのおん身を遇し給ふさまをば、此幾日の間に我く知れり。
夫に逆毛で無い後の二本をく検めて見ると其根の所が仮面めんや鬘からぬけた者で無く全くはえた頭から抜た者です夫は根の附て居る所で分ります殊に又合点の行かぬのはこのちゞれ具合です
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
世事にうとい旦那さまを遺して死ななければならない、それがどんなにお辛いことか、私には骨に徹るほどよくわかりました、女同志でなければわからない辛さが、私にはくわかったのです
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかしもう大分それを見せられた時よりは智識ちしきが加わっているのだから、その時よりはく分った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
くは知らない。交際は万事如才なくて、少し丁寧過ぎるやうな処がある。色の白い小男で、動作が敏捷びんせふなせいでもあるだらうが、何処かなめらか過ぎるやうな感じがする。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お前は本当に清さんを呼ばせる気か、はい本当に呼んでおもらひ申す気でございます、小花さんに済まぬとは私にもく分つてをれど、清さんならと思ふもうからなれば
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
けてまた人を遣り、あの竪樋たてどいの音に負けぬやうにと、三谷が得意の一中いっちゅう始まりて、日の暮るるをも知らざりけり、そもそも堀田原の中屋なかやといつぱ、ここらにはく知れ渡りたる競呉服せりごふくにて
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)