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淙々
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そうそう
ふりがな文庫
“
淙々
(
そうそう
)” の例文
波は岩を、岩は波を噛んで、ここに
囂々
(
ごうごう
)
、
淙々
(
そうそう
)
の音を
成
(
な
)
しつつ、再び変圧し、転廻し、
捲騰
(
けんとう
)
し、
擾乱
(
じょうらん
)
する豪快無比の壮観を現出する。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
水
淙々
(
そうそう
)
、風
蕭々
(
しょうしょう
)
、夕闇とともにひどく冷気も迫って、謙信の胸は、なお帰らぬ
麾下
(
きか
)
の将士のうえに、
傷
(
いた
)
み
哀
(
かなし
)
まずにはいられなかった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
空はと見上げれば星一つない。雲の往来も分らぬ、真の闇でそよとの風も吹かぬ夜を、早川の渓音が
幽
(
かす
)
かに、遠く
淙々
(
そうそう
)
と耳に入る。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
そのしずけさの底に、
淙々
(
そうそう
)
と水の流れる音がする……のは、この家の裏からおりた
谷間
(
たにあい
)
にささやかな渓流のあることを示しているので。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
岩も小さくなった。水は浅い瀬を成して
淙々
(
そうそう
)
と流れて行く。あの力任せに岩をこづきながら奔下する
勢
(
いきおい
)
はまるでなくなっている。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
目をつぶってどっしりと坐り込んでいると、戸一枚を
隔
(
へだ
)
てた多摩川の流れが、夜の静かなほどに
淙々
(
そうそう
)
たる響きを立てます。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
気を落ちつけて聞くと
淙々
(
そうそう
)
と鳴りひびく川音のほかに水車のことんことんと廻る音がかすかに聞こえるようでもある。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その初雪が解けて流れてくるのであろうか、裏秩父の
神流
(
かんな
)
川には、水晶のように清い水が
淙々
(
そうそう
)
と音を立てている。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
谷川というと、考えただけで
淙々
(
そうそう
)
の音が耳に迫るような感じがするが、一概にそうきめてかかるわけにも行かぬ。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
漸
(
やうや
)
く千本松を過ぎ、進みて
関谷村
(
せきやむら
)
に到れば、人家の尽る処に
淙々
(
そうそう
)
の響有りて、これに
架
(
かか
)
れるを
入勝橋
(
にゆうしようきよう
)
と
為
(
な
)
す。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
女形
(
おやま
)
、二枚目に似たりといえども、
彰義隊
(
しょうぎたい
)
の落武者を父にして旗本の血の流れ
淙々
(
そうそう
)
たる巡査である。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
泣いたのと暴れたので
幾干
(
いくら
)
か胸がすくと共に、次第に疲れて来たので、いつか其処に
臥
(
ね
)
てしまい、自分は
蒼々
(
そうそう
)
たる大空を見上げていると、川瀬の音が
淙々
(
そうそう
)
として聞える。
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
河水は、
日増
(
ひまし
)
に水量を加えて、軽い
藍色
(
あいいろ
)
の水が、処々の川瀬にせかれて、
淙々
(
そうそう
)
の響を揚げた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しばらく沈黙の座に聞澄している
淙々
(
そうそう
)
とした川音は、座をそのままなつかしい国へ押し移す。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
汀について水門のほうへ行くと、
淙々
(
そうそう
)
とはげしい水音がきこえ、築山の影が迫って、ひときわ濃くなった暮れ色のなかで、鶴が嘴を胸にうずめ、片脚だけで
寂然
(
せきぜん
)
と立っていた。
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
川の水は、辛うじてここに辿りついたこれらの人間が、あんなに困苦して
穿
(
うが
)
った路とは反対に、
淙々
(
そうそう
)
と自分の路を流れて行った。やがて
蜿蜒
(
えんえん
)
としたイシカリ川に合するのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
淙々
(
そうそう
)
たる渓流の響。闊葉樹林。駒鳥の声。雪渓。
偃松
(
はいまつ
)
。高山植物を点綴した草野。そして
辿
(
たど
)
り着いた尾根上の展望。三人はここにルックを投げだして
暫
(
しばら
)
く楽しい憩いを続けるであろう。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
岩は
斜
(
ななめ
)
に流れを
裂
(
さ
)
いて、
淙々
(
そうそう
)
とたぎる春の水に
千年
(
ちとせ
)
の
苔
(
こけ
)
を洗わせていた。この大岩を
擡
(
もた
)
げる事は、
高天原
(
たかまがはら
)
第一の
強力
(
ごうりき
)
と云われた
手力雄命
(
たぢからおのみこと
)
でさえ、たやすく出来ようとは思われなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
前を
遶
(
めぐ
)
る
渓河
(
たにがわ
)
の水は、
淙々
(
そうそう
)
として遠く流れ行く。かなたの森に鳴くは
鶇
(
つぐみ
)
か。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
おなつはほかの女中たちとはべつに、内所と主婦の居間とに挾まれた三畳の部屋を与えられたが、そこの障子をあけると、正面に岩根山が見え、谿流の音が高く爽やかに、絶えず
淙々
(
そうそう
)
と聞えてきた。
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
庭の夏草の根を洗って流れる水は、床の下に
淙々
(
そうそう
)
と流れている。
二つの庭
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「変ったのう」しみじみと、範宴はいって、ふと、橋の
欄
(
らん
)
から見下ろすと、そこを行く加茂の水ばかりは、
淙々
(
そうそう
)
として変りがない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もはや逃れられぬ運命が、瞬間が、しんしんと、
淙々
(
そうそう
)
と、その目前に鳴っている、待っている、澄んでいる、閃めいている。と、ものの一尺ばかり
遣
(
や
)
り過して
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
淙々
(
そうそう
)
千万年の流れをうたう
五十鈴川
(
いすずがわ
)
の水音に、心を洗った若い日の泰軒先生は、根が無邪気な人ですから、日本を思い、おそれ多いことですが皇室をしのびまつって
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
札幌のような静かな処に比べてさえ、七里
隔
(
へだ
)
たったこの山中は
滅入
(
めい
)
るほど淋しいものだった。ことに日の暮には。千歳川の川音だけが
淙々
(
そうそう
)
と家のすぐ後ろに聞こえていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
四方の山は
桶
(
おけ
)
を立てたようで、桂川へ落ちる笹川の渓流が
淙々
(
そうそう
)
として縁の下を流れています。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ことに今日、大学の前を通っていると、清麗な水が
淙々
(
そうそう
)
たる音を立てて、流れ下っている小溝に、白河の山から流れてきたらしい真赤な木の実が、いくつも流れ下っているのを見た。
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
オン・ユアー・マーク、ゲットセッ、道子は
弾条
(
ばね
)
仕掛のように飛び出した。昨日の如く青白い月光に照らし出された堤防の上を、遥かに下を多摩川が銀色に光って
淙々
(
そうそう
)
と音を立てて流れている。
快走
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
窓の闇から、西川渓谷の瀬音が、ただ
淙々
(
そうそう
)
と響く。
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
淙々
(
そうそう
)
たる水音を知ると、渓谷そのままな岩盤に、危うげな丸木橋があり、それを渡り終えると、初めて、広い芝生が、眼の前に展開する。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
淙々
(
そうそう
)
と、瀬の音が耳に入ってくるのは、激流岩にくだけて
飛沫
(
ひまつ
)
を上げる
大谷
(
おおや
)
川が、ほど近い。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
前後は杉の木立で、足下では沢の水が
淙々
(
そうそう
)
と鳴って、
空山
(
くうざん
)
の間に響きます。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
流勢が勝って手に
逆
(
さから
)
うとき水はまた
淙々
(
そうそう
)
と響く。
呼ばれし乙女
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一面
淙々
(
そうそう
)
たり。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
金剛山は
藍
(
あい
)
のなかに、四日月の光が細い。そして千早川の水音だけが、地底からのものみたいに
淙々
(
そうそう
)
と俄に寒さをおもわせる。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
シーンと静まり返ったなかに、すぐそばを流れる三方子川の水音が
淙々
(
そうそう
)
、また
淙々
(
そうそう
)
……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
脚下に、木曾上流の
淙々
(
そうそう
)
たるをのぞみ、若みどりの燃ゆる四月に近い青空の下にたつと、彼は、寸刻も惜しまれた。彼の血はなお若かった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ暗い冬の夜と、寒々しい枯野のなかを、湊川の水音は
淙々
(
そうそう
)
とすぐそこに聞える。——
建武
(
けんむ
)
、
延元
(
えんげん
)
の
雄
(
お
)
たけびを思わすような風の声もして。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人々が
寝
(
しん
)
についてからは、よけいに
寂
(
せき
)
として、かなり離れている白河の水音までが、
淙々
(
そうそう
)
と松風にまじって聞こえてくる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何処かでは、
淙々
(
そうそう
)
と水のひびき、
松籟
(
しょうらい
)
の
奏
(
かな
)
でがしている。それに消されてか、いつまでも返辞はなかった。するうちに
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
漠々
(
ばくばく
)
として白雲はふかい。
淙々
(
そうそう
)
として
渓水
(
たにみず
)
の音は
空
(
むな
)
しい。母親の乳ぶさから打ち捨てられた
嬰児
(
あかご
)
のように、城太郎は地だんだを踏んで泣きわめいた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さあれ、十年と経てば、この水のように、
淙々
(
そうそう
)
と、すべては
泡沫
(
うたかた
)
の跡形もない。——平家の、源氏のと、憎しみおうた人々の戦の跡には何もない」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寄手の陣地も、味方の城も、いまは銃声一つなく、深い
静寂
(
しじま
)
の底にある。——
淙々
(
そうそう
)
とつねに遠く聞えるのは、石垣の根を洗ってゆく滝川の
奔流
(
ほんりゅう
)
だった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
冬の梢は、青空を透かして見せ、
百禽
(
ももどり
)
の声もよく澄みとおる。
淙々
(
そうそう
)
とどこかに小さい滝の音がするかと思えば、
颯々
(
さっさつ
)
と
奏
(
かな
)
でている一幹の巨松に出会う。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
淙々
(
そうそう
)
と瀬の水の戯れは、月の白い限りの天地を占めて独り楽しんでいる。上流から下流まで、ここは奥丹波の風の通路のように
冷々
(
ひえびえ
)
と夜気が流れている。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甲山の緑は若く、
笛吹川
(
ふえふきがわ
)
の水はことしも強烈な夏を前に、
淙々
(
そうそう
)
と永遠の生命を歌っていたが、別るる山河に
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
焔々
(
えんえん
)
、馬も人も、その
喘
(
あえ
)
ぎに燃えてゆく。
大枝
(
おおえ
)
の山間を
繞
(
めぐ
)
りまた降って、
淙々
(
そうそう
)
と聞く渓流のすぐ向うに、松尾山の山腹が壁のように迫って見えたときである。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
向こう
側
(
がわ
)
の
傾斜
(
けいしゃ
)
を見ると、
芝
(
しば
)
を
掃
(
は
)
いたようなやわらかさである。しかし、その傾斜は目がまわるほど深く、きわまるところに、白い
渓流
(
けいりゅう
)
が
淙々
(
そうそう
)
と鳴っている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
関
(
せき
)
の
明神
(
みょうじん
)
の高い石段は、さっき右手にみて左へ折れた薄おぼえがある。道はいつかダラダラ上りにかかっていて、緑の濃い竹林の中に、
淙々
(
そうそう
)
としてゆく水の声がある。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
千曲の水の
岐
(
わか
)
れが、
淙々
(
そうそう
)
と近くを流れている。過ぐる日の大戦に、味方はどこで苦戦したろうか。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
淙
漢検1級
部首:⽔
11画
々
3画