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はな
ふりがな文庫
“
洟
(
はな
)” の例文
夜は夜で、君の雑誌だの本だのを読みふけって、大事な時間をつぶしたものだ。——今じゃそんなもの、
洟
(
はな
)
も引っかけやしないがね。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「ぼくとのことは、一回だけです。まるで強姦でしたが、途中からマリは抵抗はしなかった」
洟
(
はな
)
をすすり、彼は早口にしゃべった。
演技の果て
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
ここ
迄
(
まで
)
は妙子は、始終両
頬
(
ほお
)
に涙の
条
(
すじ
)
を引きながら、時々
洟
(
はな
)
を
擤
(
か
)
んだりしたけれども、割合に落ち着いて、理路整然と、事細かに話した。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だが俺は、いくら貴様が、入壇したからといっても、まだ乳くさい
十歳
(
とお
)
やそこらの
洟
(
はな
)
ッ
垂
(
た
)
れを、一人前の
沙門
(
しゃもん
)
とは、認めないのだ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
以前は私なんかに
洟
(
はな
)
も引っかけなかった連中まで、一度今度の計画が知れると、まるで手の平を返すように、どこへ行っても別扱いです。
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
▼ もっと見る
黙って父は、ただマジャルドーと酒ばかり
酌
(
つ
)
ぎ合って、ナフキンで
髭
(
ひげ
)
ばかり拭いていた。母も黙って
洟
(
はな
)
をすすって、一言も言わなかった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「左様でございます」と、お鉄は
洟
(
はな
)
をつまらせながら答えた。「いろいろの無理を云って、わたくし共を
窘
(
いじ
)
めるのでございます」
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「段て野郎は信用できねえ野郎だった」とべつの男が云った、「あいつはいつも千二百円札で
洟
(
はな
)
をかむようなことばかり云ってやがった」
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
栄介も耳たぶに感覚がなくなり、
洟
(
はな
)
がしきりに出た。もうこれ以上我慢が出来ないという心境になった時、やっと式が終った。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「へエ、私も若かつたもので、そんな氣になつたこともありますが、あの人は氣が強くて利口で、私などには
洟
(
はな
)
も引つかけてくれませんよ」
銭形平次捕物控:280 華魁崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
洟
(
はな
)
をすすりあげたチョビ安、そのまま筵をはぐって河原へ出たかと思うと、大声にうたい出した。澄んだ、
愛
(
あい
)
くるしい声だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「なにを寝ぼけてやがる。——どじを踏んでみろ。皆から
洟
(
はな
)
もひっかけられねえぜ。お前の腕は確かだろうね。焼きが廻っているんじゃないか」
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
年中帯をだらしなく巻き、電車の踏切のあたりで、垂れかけた帯をしめ直し、トラホームの目をこすり、ついでに袖の先で
洟
(
はな
)
をこすつてゐるのだ。
古都
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「年寄は皆鼻をかむものだが、私の
洟
(
はな
)
のひどく濃いのは、脳味噌がだんだん溶けて出るのらしいよ」といわれるので、「まさか」といって笑います。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
と、せわしくそれぞれ八人の子供に声を分ち、うるんだ眼でうなずいて見せ、帽子を振り、ハンカチで
洟
(
はな
)
をかんだ。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
襖
(
ふすま
)
の蔭で小夜子が
洟
(
はな
)
をかんだ。つつましき音ではあるが、
一重
(
ひとえ
)
隔ててすぐ
向
(
むこう
)
にいる人のそれと受け取れる。
鴨居
(
かもい
)
に近く聞えたのは、
襖越
(
ふすまごし
)
に立っているらしい。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手洟
(
てばな
)
をかんで、指についた
洟
(
はな
)
をそこらへなすりつけるのは平気になっていた。上に臍のついた黒い縁なし帽子をかむり、服も、靴も、支那人のものを着けている。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
愛子がいつものように
素直
(
すなお
)
に立ち上がって、
洟
(
はな
)
をすすりながら黙って床を取っている間に、葉子はおりおり往来のほうから振り返って、愛子のしとやかな足音や
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
芭蕉の床の裾の方に控へてゐた、何人かの弟子の中からは、それと
殆
(
ほとんど
)
同時に
洟
(
はな
)
をすする声が、しめやかに
冴
(
さ
)
えた座敷の空気をふるはせて、断続しながら聞え始めた。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
階下でしきりに寿江の
洟
(
はな
)
をすする音がいたします、家庭的(!)でしょう。では今年のおしまい、ね。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その
時
(
とき
)
の
爺
(
じい
)
やの
歓
(
よろこ
)
びは
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
、『お
二人
(
ふたり
)
で
斯
(
こ
)
うしてお
揃
(
そろ
)
いの
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
ると、まるで
元
(
もと
)
の
現世
(
げんせ
)
へ
戻
(
もど
)
ったような
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
しまする……。』そんなこと
言
(
い
)
って
洟
(
はな
)
をすするのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
はじめさんは子供の間によく見かける
洟
(
はな
)
たらしの一人で、常にはな紙で拭うよりは早くその両袖を活用していたからである。大柄で色黒で団十郎のような大眼玉をしていた。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
友達もない、金もない、只、亀の子のように、のこのこ
日向
(
ひなた
)
を歩きまわっている。まるで私は乞食のような哀れさだ。だれもめぐんでなんかくれない。
洟
(
はな
)
もひっかけやしない。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「さうだに
洟
(
はな
)
垂
(
た
)
らしてるものげはやんねえことにすべえ」
口々
(
くち/″\
)
に
揶揄
(
からか
)
つた。
子供等
(
こどもら
)
は一
齊
(
せい
)
に
洟
(
はな
)
を
啜
(
すゝ
)
つてさうして
衣物
(
きもの
)
で
横
(
よこ
)
に
拭
(
ぬぐ
)
つた。
白
(
しろ
)
い
紙
(
かみ
)
が一
枚
(
まい
)
づつ
子供等
(
こどもら
)
の
前
(
まへ
)
に
擴
(
ひろ
)
げられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
教室で咳をしたり
洟
(
はな
)
をかんだりする者は一人もなかったから、放課の鐘がなるまでは、教室の中に人がいるのかいないのか、とんと分らないくらいだった、などとさも満足そうに
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
時々戸を開けては
洟
(
はな
)
たれ顔で覗いたり、目をつぶって舌を出してみせたりした。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
世子がちょっとでも物を書かれた紙の反古は小姓が持ち下って、御火中という或る籠へ入れる。また
洟
(
はな
)
をかむとか唾を吐くとかせられた紙は、これも持ち下って、御土中という籠へ入れる。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
新しく掘り動かされた墓穴のまわりの、狭い縁石に、三人ともひざまずいた。無言のうちに涙が流れた。オリヴィエはしゃくりあげていた。ジャンナン夫人はたまらなそうに
洟
(
はな
)
をかんでいた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「みんな尻からげを落せえ! たすきをとれえ!
洟
(
はな
)
をすゝりこめえ!」
文化村を襲つた子ども
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
私の子は遊びをやめて、私のほうに真正面向いて、私の顔を仰ぎ見る。私も、子の顔を見下す。共に無言である。たまに私は、
袂
(
たもと
)
からハンケチを出して、きゅっと子の
洟
(
はな
)
を拭いてやる事もある。
父
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
善三は、一生懸命に竹を削りながら、ずるずるっと
洟
(
はな
)
をすすりあげた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
縊死
(
くびくくり
)
が楽だというけれどというので、いやですわ、
洟
(
はな
)
を出すのがあるといいますもの、水へはいるのが
形骸
(
かたち
)
を残さないで
一番好
(
い
)
いと思うと言いますと、そうかしら、薬を
服
(
の
)
むのは苦しいそうだね。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お葉は、ちょっと、口を
噤
(
つぐ
)
んだ。袂から、塵紙を出して、
洟
(
はな
)
をかんだ。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それから幾度も幾度も
洟
(
はな
)
をかみ、眼を拭いて、こう云うのだった。
寡婦
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
うれしくてうれしくて吾はいくたびも
洟
(
はな
)
をかむなり
飯
(
いひ
)
食
(
を
)
しにつつ
小熊秀雄全集-01:短歌集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
洟
(
はな
)
っ
垂
(
たれ
)
の一人が、不服そうに遠くから呶鳴り返してきた。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
しくしくと
洟
(
はな
)
をすすり始めた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と差配は、チンと
洟
(
はな
)
をかむ。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
洟
(
はな
)
をかみなさい!」
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
私までが三人の子供の父親でもなければ医者でもなく、まだあの頃の
洟
(
はな
)
っ垂らしのような錯覚が起ってきてならなかったのです。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
喊声
(
かんせい
)
も、どよめきも、しいんと
熄
(
や
)
んでしまった。そして彼方此方の暗がりで、
洟
(
はな
)
をすする声がながれた。手放しで泣いている兵もあった。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おなじ
年明
(
ねんあ
)
きを引摺り込むにしても、もう少し眞人間らしいのを連れて來ればいゝのに、權三の奴めも見かけによらねえ
洟
(
はな
)
つ
垂
(
た
)
らし野郎だ。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それから彼は手の甲で
洟
(
はな
)
をすすりあげ、大きな黒眼鏡の枠をゆすぶり直すと、両手を後に組んで、ぶらぶらと歩き出した。
心臓盗難:烏啼天駆シリーズ・2
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お石はまた激しく泣きだし、泣きながら又五郎の手に
縋
(
すが
)
りついた。——するとそこにもここにも、眼を拭いたり、
洟
(
はな
)
をかんだりする音が聞えた。
おれの女房
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は卓のナプキンで
洟
(
はな
)
をかみながら立ち上った。卓に紙屑をころがし、そのついでになに気なく赤革の手帖をつかむと、ポケットにすべりこませた。
赤い手帖
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「じょ、冗談でしょう。お種はこちとらに
洟
(
はな
)
も引っかけちゃくれませんよ。昔はそんな気になったこともありますが」
銭形平次捕物控:349 笛吹兵二郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
気性
(
きしょう
)
が単純で、むかっ腹がつよくて、かなり不良で、やせぎすで、背が高くて、しじゅう蒼み走った顔をしていて、すこし
吃
(
ども
)
りで、女なんど
洟
(
はな
)
もひっかけないで
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
洟
(
はな
)
が二本、長く垂れて目を赤くむいて生きて狂つてゐるやうにギラギラしてゐるのが見えたのである。
オモチャ箱
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
女は帯の間から桜紙をとり出し、それを唇でとって
洟
(
はな
)
をかんでから、銀杏返しの両鬢をぐっと掻き上げた頸筋にだけ白粉の残っている横顔を伏せ、
巻莨
(
まきたばこ
)
をすい始めた。
帆
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして膏薬を貼ってやり、手拭を裂いて
繃帯
(
ほうたい
)
をしてやる間も、ナオミは一杯涙をためて、ぽたぽた
洟
(
はな
)
を
滴
(
た
)
らしながらしゃくり上げる顔つきが、まるで頑是ない子供のようでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“洟(
鼻水
)”の解説
鼻水(はなみず)は、鼻から出る流動性あるいは半流動性の液体。鼻汁・洟(はな)ともいう。
また、鼻水から水分が抜け固体となったものを鼻糞(はなくそ)という。
(出典:Wikipedia)
洟
漢検1級
部首:⽔
9画
“洟”を含む語句
水洟
洟垂
鼻洟
洟水
洟汁
手洟
青洟
洟紙
水鼻洟
洟打去
青洟垂