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枷
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かせ
ふりがな文庫
“
枷
(
かせ
)” の例文
わたくしは池上に嫉妬の
枷
(
かせ
)
でぎゅう/\締めつけられながら、ついに思い切った
反噬
(
はんぜい
)
もせず、他愛もない形で二月も過ぎ三月も過ぎ
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
恩のヘチマのと、義理
枷
(
かせ
)
があっちゃ、面白くねえ。お前さんの身の振り方がつくなら、いつだって、黙って、出て行っておくんなさい。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども、ときには彼の心も情けないと感じることがあるくらい、好意の
枷
(
かせ
)
が体中に、ドッシリと重く重く懸っていたのである。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
あの人を
枷
(
かせ
)
にして津ノ正から金をゆするつもりになった、自分があのうちの勝手へ忍びこんだのはそのためだ、と男は云った。
ひとでなし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし運動性の狂躁は鎮まるどころか、
却
(
かえ
)
って募る一方だった。
枷
(
かせ
)
から自由になろうとして、彼は何時間もぶっ通しの
執拗
(
しつよう
)
な努力を試みた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
▼ もっと見る
綱の塩梅をし、棒を
枷
(
かせ
)
にして締めだしたが、うまくいかないので、べつな綱をとりに行こうとした。その足音を聞いて朝霞が顔から帛をとった。
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
恩人は恩を
枷
(
かせ
)
に
如此
(
かくのごと
)
く
逼
(
せま
)
れども、我はこの枷の為に屈せらるべきも、彼は
如何
(
いか
)
なる
斧
(
をの
)
を以てか宮の愛をば割かんとすらん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そうすると神尾主膳は、先程はやや
甲走
(
かんばし
)
っていた声がようやく落着いて、提灯を
枷
(
かせ
)
に使いながら、一人舞台のように主張をはじめてしまいました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
枷
(
かせ
)
にして
詰
(
つ
)
め寄るとなにとぞどこへなとお
遣
(
や
)
りなされて下さりませ一生独り身で
暮
(
く
)
らす私に足手まといでござりますと
涼
(
すず
)
しい顔つきで云うのである
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
官で人をやって詮議をさすと果して揚大年という者がいたので、捕えて
枷
(
かせ
)
を入れて詮議をしてみると罪状を白状した。
陸判
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一方を
逃
(
のが
)
れようとしてまたそこに
桎梏
(
しっこく
)
の
枷
(
かせ
)
を打たれてしまった。それからの四、五年は播重と呂昇との暗闘であった。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
子供等は先きに望みがあるからと思つて来たけれども、足
枷
(
かせ
)
手枷の煩ひに堪へられなくて逃げ出してくるのである。
死線を越えて:02 太陽を射るもの
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
その妹だね、可いかい、私の
阿母
(
おふくろ
)
が、振袖の年頃を、困る処へ附込んで、
小金
(
こがね
)
を溜めた按摩めが、ちとばかりの貸を
枷
(
かせ
)
に、妾にしよう、と追い廻わす。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてその一言を聞いた同じ耳が、首手
枷
(
かせ
)
のなかで群集の笑い物にさらされながら、
削
(
そ
)
ぎ落とされるのであった。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
両刑事は彼をどうかして自白させようと、或いは脅し、或いは
誑
(
だま
)
し
賺
(
す
)
かして妻子を
枷
(
かせ
)
に彼を釣ったかも知れない。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
自分
(
じぶん
)
も
恁
(
か
)
く
枷
(
かせ
)
を
箝
(
は
)
められて、
同
(
おな
)
じ
姿
(
すがた
)
に
泥濘
(
ぬかるみ
)
の
中
(
なか
)
を
引
(
ひ
)
かれて、
獄
(
ごく
)
に
入
(
いれ
)
られはせぬかと、
遽
(
にはか
)
に
思
(
おも
)
はれて
慄然
(
ぞつ
)
とした。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
住職に対する同情か、或いはこれを
枷
(
かせ
)
にして今後の飲み
代
(
しろ
)
をいたぶるつもりか、彼は死骸の始末を自分に任せてくれと云って、佐藤の屋敷から中間の鉄造を呼んで来た。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
氷の
枷
(
かせ
)
がはじからはじまで裂けたように、砲声ほど大きい、びっくりさせるような音をたてて、夜中に氷が割れるのを聞き、数日中にそれが急速に解けていくのを見る。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
生れて来た子供は、よかれあしかれ、そんな運命の
枷
(
かせ
)
の中で苦しまねばならないのだ。その子供は歴史を作るどころか、定められた歴史の網に
縛
(
いまし
)
められた小鳥に過ぎない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
変心の暁は
是
(
これ
)
が口を
利
(
きき
)
て必ず
取立
(
とりたて
)
らるべしと汚き
小判
(
こばん
)
を
枷
(
かせ
)
に約束を
堅
(
かた
)
めけると、
或書
(
あるしょ
)
に見えしが、
是
(
これ
)
も
烏賊
(
いか
)
の墨で文字書き、
亀
(
かめ
)
の
尿
(
いばり
)
を印肉に
仕懸
(
しかく
)
るなど
巧
(
たく
)
み
出
(
いだ
)
すより
廃
(
すた
)
れて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そうして人質に取った嬢次殿を
枷
(
かせ
)
にして是非とも貴女を
靡
(
なび
)
かせようと謀っている者である。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
白いほおのえくぼは、小指の先の大きさでも、
大
(
だい
)
の男を吸いこむだけの力はある。彼がしきりに母上、母上と呼ぶのは、そうでも言って絶えず自分の心に
枷
(
かせ
)
を加えようという気持なので。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
だから、三浦が、太刀川の足の
枷
(
かせ
)
をほどくことはなんでもなかったのだ。
太平洋魔城
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お蘭は木綿の
枷
(
かせ
)
というものを繰って細々と渡世し、好きもきらいも若い一時の
阿呆
(
あほ
)
らしい夢、親にそむいて家を飛び出し連添ってみても、何の事はない、いまはただありふれた貧乏
世帯
(
じょたい
)
の、とと
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は少しも悪びれずに、役人のするがままに腕を縛られ脚
枷
(
かせ
)
をかけられました。私はその顔を見るに
堪
(
た
)
えませんでした。何故なら、彼は人間を超越した冷静な眼付でじっと私を見つめていたからです。
自責
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
しかし忍び忍びに御姫様の御顔を拝みに参ります事は、隠れない事でございますから、ある時、それを
枷
(
かせ
)
にして、御同輩の誰彼が、手を換え品を換え、いろいろと問い落そうと御かかりになりました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
退
(
の
)
かせじとする
枷
(
かせ
)
にして
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
或
(
ある
)
時は鉄の
枷
(
かせ
)
の
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「この畜類めらが首、滅多には斬るな。手足を、
枷
(
かせ
)
に
噛
(
か
)
ませ、
糺問
(
きゅうもん
)
に糺問した上で、河原にひき出して、
頭
(
かしら
)
を
刎
(
は
)
ねい」と、
罵
(
ののし
)
った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
枷
(
かせ
)
に友達の想い者を横から取り、文句を云えば旧悪をばらすぞってよ、まるっきりぺてん師のやるこっちゃねえか、おめえさんそれでも侍のつもりかえ
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
件
(
くだん
)
の如き
首
(
くび
)
っ
枷
(
かせ
)
の芸当を以て京の町外れまで一散に走りましたが、そこで、米友は、がんりきの肩から下り、がんりきは
脚絆
(
きゃはん
)
の
紐
(
ひも
)
を結び直したけれども
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分
(
じぶん
)
もかく
枷
(
かせ
)
を
箝
(
は
)
められて、
同
(
おな
)
じ
姿
(
すがた
)
に
泥濘
(
ぬかるみ
)
の
中
(
なか
)
を
引
(
ひ
)
かれて、
獄
(
ごく
)
に
入
(
いれ
)
られはせぬかと、
遽
(
にわか
)
に
思
(
おも
)
われて
慄然
(
ぞっ
)
とした。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
明日の
勤
(
つとめ
)
のほどが——と誰も頼まない、酔ったのを
枷
(
かせ
)
にして、不参、欠席のことわりを言うのである。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
加賀屋の娘は熊谷の里にいた時に、何か内証の男でも
拵
(
こしら
)
えていたので、その秘密を知っている隣り村の安吉が、それを
枷
(
かせ
)
にかれらを苦しめているのであろうと半七は推量した。
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その人の望みによって武子さんの生涯は定まってしまったのに、それを望んだ人は死んでしまって、妻という名の、
桎梏
(
しっこく
)
の
枷
(
かせ
)
をはめられて残された武子さんの感慨は無量であったろう。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
今までは、貧しくこそあれ一文の貸しもない代りに、また借りもなく、家内中の者が家内中の手で暮していられた彼等の生活には、絶えずジリジリと生身に喰いこんで来る重い重い
枷
(
かせ
)
が掛けられた。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この趣旨により当法廷は、上述犯罪の廉をもって、右ダニエルを首手
枷
(
かせ
)
に掛け、その耳を枷に釘付けとし、その額には左の文言を認めたる紙片を貼布すべきことをここに宣告し、命令するものなり。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
どうにも成らない女という身——後家という身——又、大名の奥住居という境遇を冷たい
枷
(
かせ
)
にもだえて
呪
(
のろ
)
ったか知れなかった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すわこそ一大事、直ちに高札
触書
(
ふれがき
)
を撤去しなければならぬ、かの酷烈無比を極めた生活の
枷
(
かせ
)
、あらゆる食糧物資の統制と制限令を、もし監察使に見られたら最後だ。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
まず恋愛を教えられたその
枷
(
かせ
)
なので——恋愛あるが故に妻があり、妻あるが故に子があり、子があるが故に隣り社会のお附合いに柔順にならなければならない弱味を
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
助十と助八は
捨臺詞
(
すてぜりふ
)
にて鬪つてゐる。雲哲と願哲は思案して、權三の家の土間から駕籠を持ち出し、與助も手傳ひて、よき隙を見て助十と助八のあひだに突き出し、その駕籠を
枷
(
かせ
)
にして二人を
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
どうしたらこの堪えきれぬ
枷
(
かせ
)
からのがれることが出来るだろうか?
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「しょせん、一庵の巣に隠れて、乱世をよそに、
藪雀
(
やぶすずめ
)
のような気ずい気ままはしてはおれまい。……そのうえ、妻子の
枷
(
かせ
)
を求めるなどはやりきれん」
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お気の毒ながら厩橋侯」と彼はまた口の中で云った、「貴方には従四位下の少将と、幕府閣老という
枷
(
かせ
)
がある。この甲斐をしめるにはその枷が邪魔になるでしょう」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お松はこれから、恩義の
枷
(
かせ
)
でその中へ送られて行かねばならぬ。言いようのない
辛
(
つら
)
さ。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「なまじっか矜りがあって反抗でもしたら、それこそ足
枷
(
かせ
)
だ。」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「君。廢語があるんなら、復活語もありさうなもんぢやないか」「もちろん、ありますとも」「たとへば?」「たとへばですね。——子は
三界
(
さんがい
)
の
首
(
くび
)
つ
枷
(
かせ
)
」
折々の記
(旧字旧仮名)
/
吉川英治
(著)
あの人でなしがあたしを
枷
(
かせ
)
に、お金をねだりにいったということは、あとで聞きました、あなたはいやな顔もなさらずに貸して下すったって、あの人は平気であたしにそう云いましたわ
ひとでなし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
首
(
くび
)
っ
枷
(
かせ
)
の一幕を見せられた献上隊は、
呆気
(
あっけ
)
に取られて、これを追及することも忘れたのでありますが、その首っ枷の早いこと、軽便蒸汽もはだしの有様なので、みるみる姿を見失った後に
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分ら臣下としては、一日もはやく、この君の
枷
(
かせ
)
を解き、
質子
(
ちし
)
という
隷属的
(
れいぞくてき
)
な存在から、小さくとも、三河一城の独立した主君に御復帰せしめなければならない。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“枷”の解説
かせ#名詞:枷
(出典:Wikipedia)
枷
漢検1級
部首:⽊
9画
“枷”を含む語句
連枷
足枷
首枷
手枷
鉄枷
手枷足枷
手械足枷
枷鎖
械枷
首手枷
阿枷桶
金枷
猿尾枷
口枷
木枷
手枷首枷
或囚禁枷鎖