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杜鵑
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ほととぎす
ふりがな文庫
“
杜鵑
(
ほととぎす
)” の例文
谷あいの草原を飾る落葉松や白樺の夢のように淡い
翠
(
みどり
)
、物寂びた
郭公
(
かっこう
)
の声、
咽
(
むせ
)
ぶような山鳩のなく音、谷の空を横さまに鳴く
杜鵑
(
ほととぎす
)
秩父の渓谷美
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
メルルと云つて日本の
杜鵑
(
ほととぎす
)
と鶯の間の樣な聲をする小鳥が夜明には來て啼くが、五時になると
最早
(
もう
)
雀の啼き聲と代つて仕舞ふ。
巴里にて
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
たとえば江上の
杜鵑
(
ほととぎす
)
というありふれた取り合わせでも、その句をはたらかせるために芭蕉が再三の
推敲
(
すいこう
)
洗練を重ねたことが伝えられている。
俳諧の本質的概論
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
いつか四月も打ち過ぎて、山
杜鵑
(
ほととぎす
)
啼き渡る
五月上旬
(
さつきはじめ
)
とはなったけれど、一勝一敗のセリ戦さ、どうやら持久戦になったらしい。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
青々の
達吟
(
たつぎん
)
に至つては実に驚くべきものであるが、さりとて
杜鵑
(
ほととぎす
)
二百句といふに至つてはさすがの先生、無邪気に
遣
(
や
)
つてのけた所は善いが
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
初夏の山の中は
嫩葉
(
わかば
)
に飾られて、見おろす
路
(
みち
)
の右側の谷底には銀のような水が黒い岩に
絡
(
から
)
まって見えた。
杜鵑
(
ほととぎす
)
の鳴くのが谷の方で聞えていた。
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
深い谷間には
檜葉
(
ひば
)
の木が沢山生えて居りますが
杜鵑
(
ほととぎす
)
は月の出たのを悦びてか
幽邃
(
ゆうすい
)
なる谷の間より美しい声を放って居ります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
山の嶮しい姿と言ひ、杉の青みといひ、徂徠する雲といひ、必ず
杜鵑
(
ほととぎす
)
の居さうな所に思はれたが、雨の烈しいためか
終
(
つひ
)
に一聲をも聞かなかつた。
鳳来寺紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
わしはな、ストラスブールグの大時計の味方だ。シュワルツワルト(黒森山)の
杜鵑
(
ほととぎす
)
の声を出すだけの目ざまし時計より、それの方がずっとよい。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「
一声
(
ひとこえ
)
でほととぎすだと
覚
(
さと
)
る。二声で好い声だと思うた」と再び床柱に
倚
(
よ
)
りながら嬉しそうに云う。この髯男は
杜鵑
(
ほととぎす
)
を生れて初めて聞いたと見える。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
持統天皇の吉野行幸は前後三十二回にも上るが、
杜鵑
(
ほととぎす
)
の
啼
(
な
)
く頃だから、持統四年五月か、五年四月であっただろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
その
咏風
(
よみぶり
)
に
大方
(
おほかた
)
は誰と知らるゝが多かれど、時に予想外なるがありて、こは君なりしかとうち驚かる。
杜鵑
(
ほととぎす
)
の歌に
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一度もまだはいって行ってみたことのない村の、
黝
(
くろず
)
んだ茅屋根は、若葉の出た果樹や杉の樹間に隠見している。前の杉山では
杜鵑
(
ほととぎす
)
や鶯が
啼
(
な
)
き交わしている。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
隣村も山道半里、
谷戸
(
やと
)
一里、いつの
幾日
(
いつか
)
に誰が死んで、その
葬式
(
とむらい
)
に参ったというでもござらぬ、が
杜鵑
(
ほととぎす
)
の一声で、あの山、その谷、それそれに聞えまする。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たちまち助七の、
杜鵑
(
ほととぎす
)
に似た悲鳴が聞えた。さちよは、ひらと樹陰から躍り出て、小走りに走って三木の背後にせまり、傘を投げ捨て、ぴしゃと三木の頬をぶった。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
雲はその平地の向うの果である雑木山の上に
横
(
よこ
)
たわっていた。雑木山では絶えず
杜鵑
(
ほととぎす
)
が鳴いていた。
蒼穹
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
私はこの話を昼も
杜鵑
(
ほととぎす
)
の鳴く青葉の山へ行っても、晩の歓迎会の席でも、また宿屋へ帰っても古いことを知ってそうな年寄りを見つけると、訊ねて聞き取ったのである。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
月が変わって、今日は宇治へ行ってみようと薫の思う日の夕方の気持ちはまた寂しく、
橘
(
たちばな
)
の香もいろいろな
連想
(
れんそう
)
を起こさせてなつかしい時に、
杜鵑
(
ほととぎす
)
が二声ほど鳴いて通った。
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
杜鵑
(
ほととぎす
)
のあの一声は耳の
食
(
じき
)
です。残念ながら耳の遠い人は、耳の形だけはありますが、
肝腎
(
かんじん
)
の聴神経が
麻痺
(
まひ
)
しているので、せっかくの山ほととぎすの初音も聞こえないわけです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
邵子
(
せうし
)
に至つて、面白い言を云つた、『自然の外、別に天なし。』——邵子は易を祖述して、一派の哲理を考へ出した人で、人物もなか/\面白い,天津橋上で
杜鵑
(
ほととぎす
)
の聲を聽いて
神秘的半獣主義
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
彼が夢幻的な一曲をひき終わった時、掛時計の
杜鵑
(
ほととぎす
)
が鳴きだした。クリストフは飛び上がって怒鳴り声を立てた。クンツはびっくり我れに返って、驚いた大きな眼玉を動かした。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この『小桜縅』から
田山花袋
(
たやまかたい
)
が出身したは
鶯
(
うぐいす
)
の巣から
杜鵑
(
ほととぎす
)
が
巣立
(
すだち
)
したようなものだ。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
杜鵑
(
ほととぎす
)
をきいて明かすというわけにもゆきませんから、虫の音でもしんみりと聞きながら——なんぞと来ると、この女も相当に憎らしい奴に相違ないが、これはそういう風流気はさて置き
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雷電はオリムプス山上におけるツォイス神の怒であり、
杜鵑
(
ほととぎす
)
の声はフィロメーレが千古の怨恨であった(Schiller, Die Götter Griechenlands を
看
(
み
)
よ)
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
鰻や時には
鼈
(
すっぽん
)
や、或は禁を犯して
杜鵑
(
ほととぎす
)
など、肺病に利くという魚鳥を捕って持ってゆくと、いつも充分の金をくれた上に、樽からじかにコップへ注いで、野田の旦那が飲ましてくれる酒だった。
特殊部落の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
杜鵑
(
ほととぎす
)
がしきりに啼く、湯治の客が、運んだ
飜
(
こ
)
ぼれ種子からであろうが、
栂
(
つが
)
の大木の下に、菜の花が、いじけながらも、黄色に二株ばかり咲いていた、時は七月末、二千
米突
(
メートル
)
の峠、針葉樹林の蔭で!
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
川水牛角なきを
異
(
あや
)
しみ訳を聞いて貰い泣きしてその水
鹹
(
から
)
くなる、
杜鵑
(
ほととぎす
)
来り訳を聞き悲しみの余り眼を
盲
(
つぶ
)
し商店に止まって哭き、店主貰い泣きして失心す、ところへ王の婢来り
鬱金
(
うこん
)
を求めると胡椒
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
田圃の小川では、
葭切
(
よしきり
)
が口やかましく
終日
(
しゅうじつ
)
騒
(
さわ
)
いで居る。
杜鵑
(
ほととぎす
)
が
啼
(
な
)
いて行く夜もある。
梟
(
ふくろう
)
が鳴く日もある。
水鶏
(
くいな
)
がコト/\たゝく
宵
(
よい
)
もある。螢が出る。
蝉
(
せみ
)
が鳴く。蛙が鳴く。蚊が出る。ブヨが出る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「あ、
杜鵑
(
ほととぎす
)
だ。」
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
杜鵑
(
ほととぎす
)
が啼く
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
美濃路信濃路の山となるのであらう。さうした大きな景色を眺めてゐると、我等の坐つた懸崖の眞下の森を啼いて渡る
杜鵑
(
ほととぎす
)
の聲がをり/\聞えて來た。
鳳来寺紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
白い
靄
(
もや
)
の
罩
(
こ
)
めた湯川の谷を隔てて対岸の盛な青葉の茂みの中に、山百合の花が点々と白く浮き出している。時折谷の空で鳴く
杜鵑
(
ほととぎす
)
の声が、水音にも紛れず耳に響く。
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
一行はいま私が講演した会場の寺院の山門を出て、町の名所となっている大河に臨み
城跡
(
しろあと
)
の山へ向うところである。その山は青葉に包まれて昼も
杜鵑
(
ほととぎす
)
が鳴くという話である。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いにしへのこと語らへば
時鳥
(
ほととぎす
)
いかに知りてか
古声
(
ふるごゑ
)
に
啼
(
な
)
く」と言いたいような
杜鵑
(
ほととぎす
)
が啼いた。
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ホチヨカケタカ! ホトトトトと、
杜鵑
(
ほととぎす
)
も藪地で唄い出した。
長閑
(
のどか
)
な世界となったのである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
元来その国は物産および景色に至るまで実に立派なもので、気候のごときも一年中大抵
杜鵑
(
ほととぎす
)
が
啼
(
な
)
いて居るというような場所もあるそうですから、とにかく非常に優美な国である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
月の影、川風、思、画堂、青潮、水の音、初夏、中津川、ほたる、
杜鵑
(
ほととぎす
)
……これはと思ふ心地よき題もなきに、我まづ
聊
(
いささ
)
かひるみたれど、稚なきものも交れる今宵なればと、人々心したりと見ゆ。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
梓はその感情をもって、その土地で、しかも湯島
詣
(
もうで
)
の
朝
(
あした
)
、
御手洗
(
みたらし
)
の前で、
桔梗連
(
ききょうれん
)
の、若葉と、
幟
(
のぼり
)
と、
杜鵑
(
ほととぎす
)
の
句合
(
くあわせ
)
の
掛行燈
(
かけあんどう
)
。雲が切れて、
梢
(
こずえ
)
に残月の墨絵の新しい、
曙
(
あけぼの
)
に、蝶吉に再会したのである。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
皇子の御歌には
杜鵑
(
ほととぎす
)
のことははっきり云ってないので、この歌で、杜鵑を明かに云っている。そして、額田王も
亦
(
また
)
古を追慕すること痛切であるが、そのように杜鵑が啼いたのであろうという意である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
夕かな雨
杜鵑
(
ほととぎす
)
坐禅豆 同
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
アフリカの
杜鵑
(
ほととぎす
)
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼女は暫くも同じ所に留まつてゐない。而して殆んどその姿を人に見せた事がない。
杜鵑
(
ほととぎす
)
も朝が滋い。これは必ず其處等での最も高い梢でなくては啼かぬ。
山寺
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
眼を開けると、
片破月
(
かたわれづき
)
に照らされた天幕の布が夜露を浴びて、しっとりと重く垂れている。湯川の谷では
杜鵑
(
ほととぎす
)
が
盛
(
さかん
)
に鳴いて、断続した水声が
其
(
その
)
間から
幽
(
かす
)
かに聞える。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
一行はいま私が講演した会場の寺院の山門を出て、町の名所となっている大河に臨み城跡の山へ向うところである。その山は青葉に包まれて昼も
杜鵑
(
ほととぎす
)
が鳴くという話である。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
宵を過ごした初夏の夜で、
衣笠
(
きぬがさ
)
山の方へでも
翔
(
か
)
けるのであろう、
杜鵑
(
ほととぎす
)
の声が聞こえてきた。
血ぬられた懐刀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
長く省みなかった自分が
訪
(
たず
)
ねて行っても、もう忘れているかもしれないがなどと思いながらも、通り過ぎる気にはなれないで、じっとその家を見ている時に
杜鵑
(
ほととぎす
)
が
啼
(
な
)
いて通った。
源氏物語:11 花散里
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私達は世に
謂
(
い
)
う深山
幽谷
(
ゆうこく
)
というのは真にこういう所を言うのであろうというような恐ろしい深山幽谷の間を歩いて参りますと、カックー、カックーという
杜鵑
(
ほととぎす
)
の声が幾度か聞こえます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
狂
(
くる
)
ひ
女
(
め
)
が
万古
(
ばんこ
)
の
暗
(
やみ
)
に
高空
(
たかぞら
)
の悲哀よぶとか啼く
杜鵑
(
ほととぎす
)
(残紅)
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私の學生時代のころ、この森に來て
杜鵑
(
ほととぎす
)
を聞いたこともあつた。(書き落したが前の皇族墓地では春のころよく雉子が鳴いた、これは恐らく今でも聽く事が出來るだらう。)
樹木とその葉:29 東京の郊外を想ふ
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
疲れた体や手足を伸して
凝
(
じっ
)
と湯に浸っていると、心地よいぬくもりが皮膚を撫でて体内にしみこんでゆく、うつらうつらと眠くなった耳へ遠い谷の空で鳴く
杜鵑
(
ほととぎす
)
の声が二声三声
白馬岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
杜
漢検準1級
部首:⽊
7画
鵑
漢検1級
部首:⿃
18画
“杜鵑”で始まる語句
杜鵑花
杜鵑之介
杜鵑管
杜鵑目