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朧気
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おぼろげ
ふりがな文庫
“
朧気
(
おぼろげ
)” の例文
旧字:
朧氣
室の中もうす明く見えだして、昨日の山路、今日の行くてのことが
朧気
(
おぼろげ
)
ながら頭に浮んで来る。同行者も皆眼を覚ましているようだ。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
私はこの月に本能の尊重を知り、宇宙の真の運命と云うものはどう云うものであるかと云う事が
朧気
(
おぼろげ
)
ながら分ったことを有がたく思う。
日記:03 一九一六年(大正五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
測定者・木戸——とサインされてある
此
(
こ
)
の貴重な三つの曲線の意味は、
漸
(
ようや
)
く助手の丘数夫の頭脳に
朧気
(
おぼろげ
)
ながら理解されるに至った。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
他の注意を
惹
(
ひ
)
く
粧飾
(
しょうしょく
)
としても身に着けておきたかった。その困難が今の彼に
朧気
(
おぼろげ
)
ながら見えて来た時、彼は彼の
己惚
(
おのぼれ
)
に
訊
(
き
)
いて見た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そしてこれまで
朧気
(
おぼろげ
)
にしか意識に上らなかった死というものが、この頃何を見る目にもつきまとって来たように感じられるのであります。
春風遍し
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
朧気
(
おぼろげ
)
ながら持っている平生の意見が期せずして一致し、話せば話すほど、実行方法の細部にわたる点までが同感であるのを発見しました。
文化学院の設立について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
詩形とやらむ、規模とやらむ、技倆とやらむを云々するに非ず(略)おのれは晩唐諸家の文学に近きやと
朧気
(
おぼろげ
)
ながら見受け申候。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ここに
可笑
(
おか
)
しい事がある。己は奥さんの運動を覚えているが、その静止しておられる状態に対しては記憶が
頗
(
すこぶ
)
る
朧気
(
おぼろげ
)
なのである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
年
経
(
へ
)
て
朧気
(
おぼろげ
)
なる一個の写真ぞ安置せらる、
是
(
こ
)
れ此の伯母が、
未
(
いま
)
だ
合衾
(
がふきん
)
の式を拳ぐるに及ばずして
亡
(
な
)
き
数
(
かず
)
に入りたる人の影なり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
それがもうみんなとうの昔に故人になったしまって、それらの記念すべき諸
国手
(
こくしゅ
)
の面影も今ではもう
朧気
(
おぼろげ
)
な追憶の霧の中に消えかかっている。
追憶の医師達
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
記憶は至つて
朧気
(
おぼろげ
)
である。が、私の両親は余り高田家を訪ふ事がなかつた様である。叔父だけは毎日の様に来た。叔母も余り家を出なかつた。
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そうして、
朧気
(
おぼろげ
)
に迫ってくる恐怖に、ひしと悶えて日を送るうちに、いよいよ法水の肝入りで、一座の東都初登場となった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
つい十日ほど前に、熱いお雑炊を、ふうふう吹いていた横顔が目に浮びました。涙と香の煙の立迷うのとで、そこらはただ
朧気
(
おぼろげ
)
に見えました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「何者なればかくしばしば予を
訪
(
と
)
い苦しむるぞ。ああ人生のわずらわしさ。永久の眠りこそ望ましいわい」という
朧気
(
おぼろげ
)
な声がきこえてきました。
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
全然二人の予期した返答は無かったが、ここに至って、此の紛れ入り者は、何の様な者かということが
朧気
(
おぼろげ
)
に解って来た。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
田万里、祖父江出羽守、伴大次郎——という名を耳にしたかの女のこころに、
朧気
(
おぼろげ
)
ながら、恐ろしい思い出が
甦
(
よみがえ
)
ってくる。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夫婦
(
ふうふ
)
が
毎夜
(
まいよ
)
夢
(
ゆめ
)
の
中
(
なか
)
に
続
(
つづ
)
けざまに
見
(
み
)
るあの
神々
(
こうごう
)
しい
娘
(
むすめ
)
の
姿
(
すがた
)
……
私
(
わたくし
)
どもの
曇
(
くも
)
った
心
(
こころ
)
の
鏡
(
かがみ
)
にも、だんだんとまことの
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
が
朧気
(
おぼろげ
)
ながら
映
(
うつ
)
ってまいり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
そこで一杯のお茶を盆に乗せて、誰にでも出す。買物をしてもしなくても、同様である。図519によってこの店の外観が、
朧気
(
おぼろげ
)
ながら判るだろう。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
そうして其日の夕刻彼は漸く一人の墓地人夫を探し当てゝ、
朧気
(
おぼろげ
)
ながらに当時の有様を知る事が出来たのだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それももう六年前の出来事で、銭形平次も、徳五郎の失踪と余市の処刑を
朧気
(
おぼろげ
)
に記憶しているだけの事でした。
銭形平次捕物控:049 招く骸骨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて、その土間の広くなった処へ
掛
(
かか
)
ると、
朧気
(
おぼろげ
)
に、縁と障子が、こう、幻のように見えたも道理、外は七月十四日の
夜
(
よ
)
の月。で、雨戸が外れたままです。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自然の真相は普通人に分らぬ、詩人が其主観を
透
(
とお
)
して描いて示すに及んで、始めて普通人にも
朧気
(
おぼろげ
)
に分って人間の宝となる、とか聴かされて、又感服した。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私の
朧気
(
おぼろげ
)
に感ずる処によれば、多分貴方はその方法を欲しないだろうと思うのですが——。どうでしょうね?
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
透
(
すか
)
せば
朧気
(
おぼろげ
)
に立木の数も数えられるのであった。源八郎の眼は長沼正兵衛すらも驚いているのであった。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
すると
朧気
(
おぼろげ
)
ながら、あの兇行の時間に、一つの一致を見る事が出来たのです。だが灯の消えたのは事実です……けれどもあれは消したのではなく、消えたのです。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
七月の末まで待つうちに、節子の前途に開けかかった進路のいとぐちが
朧気
(
おぼろげ
)
ながら岸本には見えて来た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この事は古い統計にも載っているそうで、江戸ッ子は只新しく仲間入りをする田舎者で補充されて、やっとその命脈を保って来たらしいことが
朧気
(
おぼろげ
)
ながら推測される。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
どうかした拍子でふいと自然の好い
賜
(
たまもの
)
に触れる事があってもはっきり覚めている己の目はその
朧気
(
おぼろげ
)
な
幸
(
さいわい
)
を明るみへ引出して、余りはっきりした名を付けてしまったのだ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
風は
和
(
な
)
いだ。曇っては居るが月が上ったと見え、雲がほんのり白らんで、
朧気
(
おぼろげ
)
に庭の様子が判る。
浜菊
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
その内に女が
朧気
(
おぼろげ
)
な記憶から、ふと汽車の事を口にし、それからだんだんに生まれた家の模様、親たちの顔から名前を思い出し、ついには村の名までいうようになったが
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私は今まで書物や絵で見ていた江戸時代の数ある名園の有様をば
朧気
(
おぼろげ
)
ながら心の
中
(
うち
)
に
描出
(
えがきだ
)
した。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
極月の月光は曖昧の
朧気
(
おぼろげ
)
を潔癖性のように
排斥
(
はいせき
)
するので、天地は真空ほどにも浄まっています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
中田はどうやら、この荒涼たる原が、どの辺だかを、
朧気
(
おぼろげ
)
ながら想像することが出来てきた。
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
飛び上った道庵は、月の光で
朧気
(
おぼろげ
)
に立札の文字を読むと、平水の時は一人前五十文と書いてある——そこで百文の銭を取揃えて、舟板の上に並べて置いて、申しわけをしたつもり。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「汐汲み」を踊って、楽屋で
乳母
(
ばあ
)
やのおっぱいを飲んだことを
朧気
(
おぼろげ
)
に覚えています。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
見惚
(
みと
)
れて居ります中に
朧気
(
おぼろげ
)
に
幽邃
(
ゆうすい
)
なる
高雪峰
(
こうせつほう
)
いな
兜卒天上
(
とそつてんじょう
)
の
銀光殿
(
ぎんこうでん
)
かと思わるる峰の間から、幾千万の真珠を集めたかのごとき
嫦娥
(
つき
)
が得もいわれぬ光を放ちつつ静かに姿を現わして
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
故意
(
わざ
)
と気のつかない風を装つてゐることなどが、
朧気
(
おぼろげ
)
に少しづつのみこめて来た。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
そして、小さくなって、
湯槽
(
ゆぶね
)
の隅へ入った。
朧気
(
おぼろげ
)
に、四人の男の影が見えていた。
寺坂吉右衛門の逃亡
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
両脚に負傷したことはこれで
朧気
(
おぼろげ
)
ながら分ったが、さて合点の行かぬは、
何故
(
なぜ
)
此儘にして置いたろう?
豈然
(
よもや
)
とは思うが、もしヒョッと味方敗北というのではあるまいか? と、まず
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
十五日から十七日までのことは記憶が
朧気
(
おぼろげ
)
であるが、十八日の午前であったか、午後であったか、余らが枕頭に控えていると居士は数日来同じ姿勢を取ったままで音もなく眠って居た。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
が、
遽
(
にわ
)
か
仕込
(
じこ
)
みに集積される
朧気
(
おぼろげ
)
な知識は焦点のない空白をさまよっていた。紙の上で学んだ機械の構造が、工場の組織が、技術の流れが……彼にはただ悪夢か何かのようにおもわれる。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その部屋はひどく
埃
(
ほこり
)
臭かった。勿論電灯は消えていたが、両側の窓の
鎧扉
(
よろいど
)
が下りていないので、
硝子窓
(
ガラスまど
)
から星空の光が入って来るため、部屋の様子は
朧気
(
おぼろげ
)
ながらもよく見ることが出来た。
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だがそれに答えるのには、窓の外からの
朧気
(
おぼろげ
)
な隙見丈けでは不充分だ。僕は薄闇の悪夢から醒めて、現実の社会人の立場から、殺人事件発見者として適当の処置をとらなければならない。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ハイ、どうやら
朧気
(
おぼろげ
)
ながらも解ったようでございます」一学は初めて頷いた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
霧の立おほふて
朧気
(
おぼろげ
)
なれども
明日
(
あした
)
は明日はと言ひて又そのほかに物いはず。
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
併し、私には、それで、患者の発病の原因が、
朧気
(
おぼろげ
)
ながらわかって来て、患者は、外科の医学生か、或いは大学を出たばかりの外科医者で、笠松と云う医者の助手をしていたのに相違なかった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その時分の事も
朧気
(
おぼろげ
)
には記憶しております。
幕末維新懐古談:02 私の子供の時のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その中には、子供ばかりではない、こういう自分や自分の細君なども、必竟どうするんだろうという意味も
朧気
(
おぼろげ
)
に
交
(
まじ
)
っていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その火影は寒さに
凝
(
こ
)
って、
穂尖
(
ほさき
)
が細く、
心
(
しん
)
が赤くなって、折々自然にゆらゆらと
閃
(
ひら
)
めくのが、翁の姿を
朧気
(
おぼろげ
)
に照していた。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
国から
態々
(
わざわざ
)
逢
(
あ
)
いに出て来た大石という男を、純一は頭の中で、
朧気
(
おぼろげ
)
でない想像図にえがいているが、今聞いた話はこの図の
輪廓
(
りんかく
)
を少しも
傷
(
きずつ
)
けはしない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
朧
漢検1級
部首:⽉
20画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“朧気”で始まる語句
朧気乍