トップ
>
断乎
>
だんこ
ふりがな文庫
“
断乎
(
だんこ
)” の例文
旧字:
斷乎
しかもわが口よりして、あからさまに秘密ありて人に聞かしむることを得ずと、
断乎
(
だんこ
)
として謂い出だせる、夫人の胸中を推すれば。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし、長老の
快川国師
(
かいせんこくし
)
は、
故信玄
(
こしんげん
)
の
恩
(
おん
)
にかんじて、
断乎
(
だんこ
)
として、
織田
(
おだ
)
の要求をつっぱねたうえに、ひそかに三人を
逃
(
の
)
がしてしまった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分の名誉のために刀を
以
(
もっ
)
て立ち向って
呉
(
く
)
れた彼の
断乎
(
だんこ
)
たる態度、それだけでどんな恥辱も拭い去られるような気がしたのである。
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
実際、あの御隠居が
断乎
(
だんこ
)
として和親貿易の変更すべきでないことを彼に許した証拠には、こんな娘のたとえを語ったのを見てもわかる。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すべて他の点に関しては
断乎
(
だんこ
)
たる返事をする資格のない高柳君は自己の本領においては
何人
(
なんびと
)
の前に出てもひるまぬつもりである。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
豊臣家譜代の連中が、関東方に附いて城攻に加っているのに、譜代の臣でもない幸村が、
断乎
(
だんこ
)
大阪方に殉じているなど会心の事ではないか。
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
道江の予期に反して、次郎の答えは
断乎
(
だんこ
)
としていた。しかし、彼はすぐ何かにはっとしたように、
固
(
かた
)
く唇をむすび、じっと道江の顔を見つめた。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
そのためには、何より人間活動の通俗を恐れぬ精神が必要なのだ。純粋小説は、この
断乎
(
だんこ
)
とした実証主義的な作家精神から生れねばならぬと思う。
純粋小説論
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その
断乎
(
だんこ
)
たる言葉をきいて、ジャヴェルはそれでもじっと市長を見つめた、そして深い敬意をこめながらもなお言った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「しかし僕は惚れてなんか居ないよ」と天願氏は
断乎
(
だんこ
)
として言い放った。私はただうつむいて酒を飲んだ。言い様のない
寂寥
(
せきりょう
)
が私を襲ったのである。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
張教仁の言葉には
断乎
(
だんこ
)
たる決心が見えていた。その決心に押されたのか、相手の男も沈黙した。車内は
寂然
(
ひっそり
)
と物凄い。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼が罪なくて牢獄の人となった時には
勿論
(
もちろん
)
人を
恨
(
うら
)
まなかった、弟子などが
集
(
あつま
)
って来て、
頻
(
しき
)
りに弁護せよ弁護せよと勧告するけれど
断乎
(
だんこ
)
として
肯
(
うけが
)
わない。
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかるに
医学博士
(
いがくはかせ
)
にして、
外科
(
げか
)
専門家
(
せんもんか
)
なる
彼
(
かれ
)
が
父
(
ちち
)
は、
断乎
(
だんこ
)
として
彼
(
かれ
)
が
志望
(
しぼう
)
を
拒
(
こば
)
み、もし
彼
(
かれ
)
にして
司祭
(
しさい
)
となった
暁
(
あかつき
)
は、
我
(
わ
)
が
子
(
こ
)
とは
認
(
みと
)
めぬとまで
云張
(
いいは
)
った。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
何うかそれを造り
更
(
か
)
へて呉れろと頼んでも、村の故老は
断乎
(
だんこ
)
としてそれに応じようともせぬとの事である。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
或は
権力
(
けんりょく
)
と不正に極端な
抵抗
(
ていこう
)
意識をもって
俗習
(
ぞくしゅう
)
を
断乎
(
だんこ
)
拒否せんとする態度もどこかに残っているようだ。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
もしぼくが私情がましき
行為
(
こうい
)
があったら、どうか
断乎
(
だんこ
)
として、僕を
責
(
せ
)
めてくれたまえ、ねえドノバン
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
この一家の主人にして
妄
(
みだり
)
に発狂する権利ありや否や? 吾人はかかる疑問の前に
断乎
(
だんこ
)
として否と答うるものなり。試みに天下の夫にして発狂する権利を得たりとせよ。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そりゃ大変だ。じゃ私も暫く考えてみましょう」と帆村は
断乎
(
だんこ
)
として云った。「その間に別の部屋を検べて来ましょう。西郷さん、調餌室というのを案内して下さい」
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
此れを熟考する時は、予が如き愚なるも平生潔白正直を取るの応報として、
冥々裡
(
めいめいり
)
に於て予を恵みたるかを覚えたり。実に予が愚なるもかかる
断乎
(
だんこ
)
たる説を
立
(
たて
)
たるを感謝す。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
その上特に彼の気分がああした状態になっていた時に、ことさらやって来たのだろう? しかもその時の状況は、この遭遇が彼の運命に
断乎
(
だんこ
)
たる、絶対的な影響を及ぼすのに
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
だいち男と女の関係についての考えからが、私に
断乎
(
だんこ
)
たる定見がないのだ。昨年の秋だったがね。唯円が私に恋の事をしきりにきいていた。恋をしてもいいかなどと言ってね。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
健策は
断乎
(
だんこ
)
とした態度でこう云い切った。云い知れぬ昂奮に全身を震わせながら……。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
発して其儘寝台に
尻餠
(
しりもち
)
搗
(
つ
)
き「えゝ、是でさえ
最
(
も
)
う充分の苦みだのに此上、此上、何事も問うて下さるな、最う
何
(
ど
)
う有ても返事しません」
断乎
(
だんこ
)
として言放ち再び口を開かん様子も見えず
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ヒゲは最も
断乎
(
だんこ
)
としたことを、人なつこさと、一緒に云い得る少数の人だった。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
私の仕事は、訪問客を
断乎
(
だんこ
)
として追い返し得るほどの立派なものではない。その訪問客の苦悩と、私の苦悩と、どっちが深いか、それはわからぬ。私のほうが、まだしも楽なのかも知れない。
新郎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
僕は
断乎
(
だんこ
)
として、今までのそんな怪談に心をみだされまいと決心しながら、船長とこの問題について、なおいろいろの議論を闘わした。僕は、どうもあの部屋には何か悪いことがあるらしいと言った。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
二葉亭もまたこの一種の天才ある教師の指導を受けて
何時
(
いつ
)
とはなしに芸術的興味を長じ、進んで専門文人となるまでの
断乎
(
だんこ
)
たる決心は少しもなかったが、知らず
識
(
し
)
らずに偶然文人の素地を作っていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこで、一方では男の顔も保たねばならないし、一方では家計の方にも影響してくるというので、すでに三人の子までなした仲だったが、大叔父は
断乎
(
だんこ
)
としてその妻を離縁した。そして後妻を迎えた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そこには信念的な実証論者がおり、
断乎
(
だんこ
)
たる不可知論者がいる。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
その上で、
断乎
(
だんこ
)
たる処分に出ようとする
意嚮
(
いこう
)
をほのめかした。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
だが、彼女は
断乎
(
だんこ
)
として前言をひるがえさなかった。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それほど兼松の調子が
断乎
(
だんこ
)
としていたのです。
銭形平次捕物控:104 活き仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
トムスキイは
断乎
(
だんこ
)
たる口ぶりで答えた。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
と私は
断乎
(
だんこ
)
として答えよう。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「わが世子たりとも軍法をみだすにおいては、
断乎
(
だんこ
)
免じ難い。
荀攸
(
じゅんゆう
)
、
郭嘉
(
かくか
)
、其方どもはすぐ
曹丕
(
そうひ
)
を召捕ってこい。斬らねばならん」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いわば、徳川恩顧の士であるのに、そのうえ陽明学者として高い識見があるのにしかもなお、彼は
断乎
(
だんこ
)
として幕府に矢を引いた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかしこのくらい
断乎
(
だんこ
)
として、現に
梯子段
(
はしごだん
)
から手を離しかけた、最中に首を出すくらいだから、相手もなかなか深い勢力を張っていたに違ない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
断乎
(
だんこ
)
たるオースチン師の言葉に、鬼王丸は失望したか、何事も云わず下
俯向
(
うつむ
)
いた、一座
寂然
(
しん
)
として言葉もない。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
常に人類の危機と社会の
開闢
(
かいびゃく
)
とに交じっていて、一定の時機におよんで
断乎
(
だんこ
)
として決定的な一言を発し、電光のひらめきのうちに一瞬間民衆と神とを代表した後
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
かくは
断乎
(
だんこ
)
として言放ち、大地をひしと
打敲
(
うちたた
)
きつ、首を縮め、杖をつき、
徐
(
おもむ
)
ろに歩を
回
(
めぐ
)
らしける。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ロシアにはまだ、まるで何一つない。過去にたいする
断乎
(
だんこ
)
たる態度ももたず、われわれはただ哲学をならべて、
憂鬱
(
ゆううつ
)
をかこったり、ウオッカを飲んだりしているだけです。
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
幾多の誤解と反対と悲憤との声を押し切ってまでも
断乎
(
だんこ
)
として公武一和の素志を示すことが慶喜になかったとしたら、おそらく、慶喜がもっと内外の事情に暗い貴公子で
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
再三御忠告……貴下が
今日
(
こんにち
)
に至るまで、何等
断乎
(
だんこ
)
たる処置に出でられざるは……されば夫人は旧日の情夫と共に、日夜……日本人にして且
珈琲店
(
コーヒーてん
)
の給仕女たりし
房子
(
ふさこ
)
夫人が
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
断乎
(
だんこ
)
として云い放った赤羽主任の顔を、事情の判らない一同は不審そうに
瞶
(
みつ
)
めた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
断乎
(
だんこ
)
とした彼の即決で、句会はそのまま続行された。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
妙に
断乎
(
だんこ
)
とした調子です。
銭形平次捕物控:093 百物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そんなことをされようとは予想もしなかったし、男の動作は驚くほど
敏捷
(
びんしょう
)
で、しかもちから強く、
断乎
(
だんこ
)
としたものであった。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「きょうは
妖人
(
ようじん
)
を獄からひき出して、
断乎
(
だんこ
)
、斬罪に処するつもりです。まさか母上までが、あの妖道士に惑わされておいでになりはしますまいね」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私には
断乎
(
だんこ
)
たるこの返事がいかにも不思議に聞こえた。しかしそれよりもなお強く私の胸を打ったのは、
止
(
よ
)
せばよかったという後悔の念であった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は立ち上がり、下に落ちていた帽子を拾い、
断乎
(
だんこ
)
たるしっかりした歩調で
扉
(
とびら
)
の所まで行った。そこで彼はふり向き、祖父の前に低く身をかがめ、再び頭をもたげ、そして言った。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“断乎”の意味
《形容動詞》
断乎(だんこ ;「断固」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
きっぱり。意思が固いこと。
(出典:Wiktionary)
断
常用漢字
小5
部首:⽄
11画
乎
漢検準1級
部首:⼃
5画
“断”で始まる語句
断
断崖
断念
断末魔
断食
断然
断片
断々
断腸
断間