はか)” の例文
「例の一件はなにぶんはかがいかねえので申し訳がありません。まあ、もう少し待ってください。年内には何とからちをあけますから」
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
肩を並べた二人の影は、いつか歩くともなく道をはかどって、山の手から外濠の方へだらだら下っていた。すると、不意に新九郎が
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北満ほくまんの厳寒の野に立つ哨兵しょうへいと全く同じ服装をしてこまかい物理の実験をしようというのだからなかなか思うように仕事ははかどらない。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「なるとも。愉快、愉快、実に愉快。——愉快といや、なあお隅、今日きょうちょっと千々岩ちぢわに会ったがの、例の一条も大分はかが行きそうだて」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ただはかがゆかないだけで、どこをどう直しているのだか、この分では、一面の琵琶修繕に半年もかかるかと思われるほどのていたらくです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「旦那え、この雪ぢや明日あすの路は、とてもはかが参りやせんから、今日の中に八王子までのして置かうぢやござりやせんか。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そんなわけで、勉強は少しもはかどらないし、信仰がぐらつき始めるし、僕はここ一ヶ月ばかり死ぬほど苦しんだのです……
のつそりとして悠長いうちやう卯平うへい壯時さうじじゆくして仕事しごと呼吸こきふおほきなかたからおろとき、まだ相當さうたうはかどるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その内で、こう言やア可笑おかしい様だけれども、若手でサ、原書もちったアかじっていてサ、そうして事務を取らせてはかく者と言ったら、マア我輩二三人だ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「で帯刀から人をもって才三の親に懸合かけあうと、才三も実は大変貰いたかったのだからそのむねを返事する。結婚の日取りまできめるくらいに事がはかどったて」
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
びんのほつれ毛青褪あおざめた頬を撫で、梨花一枝りかいっし雨を帯びたる風情ふぜいにて、汽車をでて、婿君に手を引かれて歩く足さえはかどらず、雪駄せったばかりはチャラチャラと勇ましけれど
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
下男を供に連れでましたれば、孝助は見えがくれに跡をけて参りましたが、女の足のはかどらず、幸手、栗橋、古河、真間田まゝだすゞめみやあとになし、宇都宮へ着きましたは
こんなことでははかがいかぬと急に鉄砲買いを思いつき、商用の便宜のために心にもない切支丹のお水を授かり、葡萄牙人の間を駆けまわって、鉄砲、鉄砲ぐすり、鉄砲玉、火砲、海戦道具と
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「一言もねえ、感心した。そうだここまではかが行けば後は的物を盗むだけだ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「案外はかの行かないものだね。五枚というと、月に百五十枚」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
八丁堀たのむに足らず、家臣を督励とくれいしてもはかばかしくない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一向はかどらず、私たちの着いたとき、まだ途惑っていた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ヤタラに興奮するばかりで紙数がチットもはかどらない。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
悶えて居るゆゑ後藤は可笑をかしく思ひ是はしたり成程なるほど御前さんには持れぬはずどれ此方こつちへと引取ひきとつて駕籠の棒へ下緒さげをにてくゝりつけコレ御女中お前も一所いつしよに乘り給へ然すればかへつて道もはかどらんと云ふに女は否々いへ/\どう致して勿々なか/\勿體もつたいなしと辭退じたいなしければナニ遠慮なさるな夜中の事ゆゑ外に誰も見る者なしサア/\乘り給へと手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今度はかちあるきであるからはかどらず、元の宿まで帰り着いた頃には夜が明けて、かの老人は店さきで桶のたがをはめていた。
一坪ばかりの花の根を滅茶滅茶に掘返して、やがて四尺も掘下げてくると、キメの細かい黒土は粘質的な赤に代って、なかなかはかが進まなくなりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度北満の厳寒の野に立つ哨兵しょうへいとまったく同じような服装をして、こまかい物理の実験をしようというのであるから、仕事はなかなか思うようにははかどらない。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
わたしの制作ははかどらなかった。わたしは一日の仕事を終ると、大抵たいてい絨氈じゅうたんの上にころがり、頸すじや頭をんで見たり、ぼんやり部屋の中を眺めたりしていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
つまり生活が次第に崩してゆくんだ。そして、こんな心持で文学上の製作に従事するからはかのゆかんこと夥しい。とても原稿料なぞじゃ私一身すら持耐もちこたえられん。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「おかげでどうもはかきあんした。どうぞゆつくりつておくんなせえ」亭主ていしゆあらたまつて挨拶あいさつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一年や半年の間にはかを行かせようとしたことが無理で、駒井も、今はほとんど絶望の姿で、どのみち、機関無しの最初の構造に、逆戻りするほかはあるまいとあきらめるばかりです。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっと積荷つみにが多いゆえ、はかきませんから、井生森は船中で一泊して、翌日はさかいから栗橋くりはし古河こがへ着いたのは昼の十二時頃で、古河の船渡ふなとへ荷をげて、其処そこ井上いのうえと申す出船宿でふねやど
さて旧臘きゅうろう中一寸申上候東京表へ転住の義、其後そのご色々の事情にてはかどりかね候所、此程に至り諸事好都合にらちあき、いよいよ近日中に断行の運びに至り候はずにつき左様御承知被下度くだされたくそうろう
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、一向はかがいきませんじゃ。金は使う、二月も三月もたったてようなるじゃなし、困ったものじゃて、のう安さん。——こういう時分にゃ頼もしか親類でもあって相談すっとこじゃが、武はあの通り子供——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
宵から四更にかけて、秀吉はさして急がずも五、六里の道ははかどっていた。石田佐吉がさきに走って、七尾村の三珠院を叩いたのはまだ真ッ暗な時分であった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄赤い絨氈じゅうたんの上に横たわったモデルはやはり眉毛まゆげさえ動かさなかった。わたしはかれこれ半月の間、このモデルを前にしたまま、はかどらない制作をつづけていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それが秀衡の感情を害した上に、仕事に取りかかってからも、一向にはかがゆかない。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「熱は?」「七度六分ばかり、——ゆうべはちっともなかったんですけれども」自分は二階の書斎へこもり、毎日の仕事にとりかかった。仕事は不相変あいかわらずはかどらなかった。
子供の病気:一游亭に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まだ上野か、と外記は案外にはかの行かないのを不思議に思った。と同時に、これから屋敷へ帰るよりも、吉原へ引っ返した方が早いというような、意味のわからない理屈が彼の胸にふとうかんだ。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「今夜のうちに、麓の立場たてばまではかを取っておくつもりではないか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一等戦闘艦××は横須賀よこすか軍港のドックにはいることになった。修繕工事しゅうぜんこうじは容易にはかどらなかった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
気は急ぐが、道ははかどり、それに馬車屋がおもしろい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と同時に又屏風の畫も、下畫が八分通り出來上つた儘、更にはかどる模樣はございません。いや、どうかすると今までに描いた所さへ、塗り消してもしまひ兼ねない氣色なのでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「まだお通は、いくらも道ははかどっておるまいな」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と同時に又屏風の画も、下画が八分通り出来上つた儘、更にはかどる模様はございません。いや、どうかすると今までに描いた所さへ、塗り消してもしまひ兼ねない気色なのでございます。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ただし護送輿ごしの足なみ。いやでも道ははかどらない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八犬伝は相変らず、はかがお行きですか。」
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
単騎の方が、道のりはずっとはかどる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八犬伝は不相変あひかはらずはかがお行きですか。」
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)