手荒てあら)” の例文
けんちゃん、うまくすれば、つくかもしれないよ。」と、清次せいじは、自分じぶんが、手荒てあらにしたのをべつに後悔こうかいするふうもなかったのです。
僕のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
金三はそこへしゃがんだまま、前よりも手荒てあらに百合の芽をいじった。しかし三寸に足りない芽は動きそうな気色けしきも見せなかった。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今では私は確かにこの手荒てあらな愛情の方がどんな優しいものよりもいゝのであつた。フェアファックス夫人も私のことを是認したことが私に分つた。
どこまでも手荒てあらい賊どものやり方だ。最新式の乗り物や殺人の器械を自由に使いこなして、必ず目的を達しないではやまないというすごい賊どもだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それとも、ほかに目的があつて、こんな手荒てあらなことをしたのか? さうだ、愚図愚図ぐづぐづしてないで、とにかく警察へ届けよう……いや、あわてちやいかんぞ。
クロニック・モノロゲ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
願ひ奉るとこゑふるはせ引ども押ども動かねば同心大勢立掛り強情しぶときをんなさがらぬかと無體むたい引立ひきたてゆかんとするを大岡殿は此體このていを見られコレ/\手荒てあらき事をして怪我けが
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
びっくりして夢の覚めたようになった武士は、じぶんの体が暗い地の上に立っていることを知った。彼は手荒てあらな籠舁の所業しわざおこることも忘れて四方あたりを見まわした。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夢心地に曳摺ひきずっていって、ひょいと突離つきはなす。突はなされた魂が痛まぬほどの、コツのある手荒てあらさである。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
主人の足裏あしうらさめあごの様に幾重いくえひだをなして口をあいた。あまり手荒てあらい攻撃に、虎伏す野辺までもといて来た糟糠そうこう御台所みだいどころも、ぽろ/\涙をこぼす日があった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
妻にすべてを打ち明ける事のできないくらいな私ですから、自分の運命の犠牲ぎせいとして、妻の天寿てんじゅを奪うなどという手荒てあら所作しょさは、考えてさえ恐ろしかったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ベンヺ やれ/\、柔和やさしらしうゆるこひめが、そんなむごいことや手荒てあらいことをしますか?
その季節きせつにはよくあることなので、自分は、さけどろぼうが貨車かしゃの中まであらしたのかと思うと、思わず、むッとして、手荒てあら仕切しきりの車戸くるまどをひきあけて、足をふみこんだ。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
「ふびんではござらんか、かような巡礼道じゅんれいどうの人の持物もちものきあげて、それがどれほどおまえたちの幸福こうふくになるものじゃない。どうか、そんな手荒てあらなことをせずに返してあげておくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手荒てあら退けられた一人ひとり侍女じじょは、ころびながらも、おれんすそしかおさえた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「お手荒てあらなことをなさることはございますまいか」
余りに事の手荒てあらなれば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それからというもの、わたしは、なにかにつけて手荒てあらあつかわれましたが、しまいに、おおきくなったぼっちゃんのために、またこんなにかおにまできずをつけられてしまいました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
下人は、すばやく、老婆の着物きものを剥ぎとつた。それから、あしにしがみつかうとする老婆を、手荒てあらく屍骸の上へ蹴倒けたほした。梯子の口までは、わづかに五歩を數へるばかりである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
後藤は先々まづ/\またれよ某存じよりあれば決して手荒てあらき事はならずと申付未だ夜明までには間もあるべし今一寢入ねいりするにより太儀ながら貴樣達は此奴こやつの番を頼むなりとて半四郎は盜人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼は実社界を至極手荒てあらいものに考へた。仁義博愛はくちに云ふべくして政治上に行ふべきものでないと信じた。くして彼はあらゆる人道的及び自由主義の運動に反対したのである。……
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まて民部、手荒てあらなことをいたすまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お浪は引止ひきとめ否々いや/\あの重四郎樣は兄樣のお師匠ししやうなれば此事父上の耳に入る時は元來もとより物固ものがたき父上ゆゑもし手荒てあらきことのありもせば兄樣に對し云ひわけなし又重四郎樣へもどくなり外に思案を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おんなは、邪慳じゃけんにいって、りあげていたいちばんおおきなすいかをすように、かごのなかとしました。あまり、手荒てあらであったため、おおきなすいかは、したのすいかにぶつかってきずがつきました。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「罪悪とは何です。そんな手荒てあらな事をしろと私がいつ云いました」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あまり、おまえが、手荒てあら使つかうからだよ。」
人間と湯沸かし (新字新仮名) / 小川未明(著)
手荒てあらに一ぽうはこなかれてしまいました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)