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憧憬
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どうけい
ふりがな文庫
“
憧憬
(
どうけい
)” の例文
換言すればあらゆる詩人は、英雄的なものへの
憧憬
(
どうけい
)
から、オデッセイやイリアッドの勇ましい、権力感の高翔した詩を作るのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そして
冷靜
(
れいせい
)
な藝術的
鑑賞
(
かんしやう
)
は、
熱烈
(
ねつれつ
)
な
生理
(
せいり
)
的
憧憬
(
どうけい
)
となつて、
人形
(
にんぎやう
)
には
魂
(
たましい
)
が入つた。何も不思議はないことだらう。周三だつて
人間
(
にんげん
)
である。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
木下繁ももはや故人だが、一時は研究所あたりに集まる青年美術家の
憧憬
(
どうけい
)
の
的
(
まと
)
となった画家で、みんなから早い病死を惜しまれた人だ。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「
絵本西遊記
(
えほんさいゆうき
)
」を読んだのもそのころであったが、これはファンタジーの世界と超自然の力への
憧憬
(
どうけい
)
を
挑発
(
ちょうはつ
)
するものであった。
読書の今昔
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうしてこの時以来、仙台第二高等学校を中途退学するまで余の頭には実に文芸
憧憬
(
どうけい
)
の情と衣食問題とが常に争闘を続けていたのであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
▼ もっと見る
先ず大概はわれわれ骨人が
憧憬
(
どうけい
)
してやまないところの、充分な腕を並べていて、その陽気のために、
羨
(
うらや
)
ましくも悩ましい気に
打
(
うた
)
れるのである。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
憧憬
(
どうけい
)
と歓喜を与えつつ
否応
(
いやおう
)
なしに我々をひきよせるのだ。その下に
伽藍
(
がらん
)
があり、
諸々
(
もろもろ
)
のみ仏が
在
(
いま
)
す。朝夕多くの善男善女が祈願を
捧
(
ささ
)
げている。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
物慾の中に血を沸かして生きている人々が、どうかすると西行や芭蕉のあとに、かぎりなき
憧憬
(
どうけい
)
を起すのは、ふるさとを恋うるの心ではないか。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
好奇と
憧憬
(
どうけい
)
と
嫉妬
(
しっと
)
と反感と執着と
羨望
(
せんぼう
)
と憎悪と愛着と、——その他ありとある感情情緒をひっくるめたまなざしで、じっと、じっとみつめていた
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
最初の女優を迎えた物珍らしさと、
憧憬
(
どうけい
)
する泰西の劇をその美貌の女優を通して見るという事が、どれほど若い者の心を動かしたか知れなかった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一生の間始終笑ひ声が絶えないやうな生活の夢想が、
憧憬
(
どうけい
)
が、油をそゝいだやうに私の心中に一時にぱつと燃え立つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
しかし、ぼくは
漸
(
ようや
)
く、
雲影
(
うんえい
)
模糊
(
もこ
)
とみえそめた島々の
蒼
(
あお
)
さを
驚異
(
きょうい
)
と
憧憬
(
どうけい
)
の眼でみつめたまま、動く気もしなかったのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
あなたのこの前のお手紙にあった「愛されの意識」は私も人性の深い純なねがいとして、私たちの完くなろうとする
憧憬
(
どうけい
)
のおもなる動機と思います。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そして労苦に使いへらされて、
一旦
(
いったん
)
不景気が——あの悲しい不景気——来れば、
其
(
そ
)
の報いとして餓死する。これが果して諸君の一生の
憧憬
(
どうけい
)
であろうか
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
それにもかかわらず、君は性格の中に植え込まれた
憧憬
(
どうけい
)
を一刻も捨てなかったのだ。捨てる事ができなかったのだ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
燦然
(
さんぜん
)
たる運命の方へ向けらるる無考慮で無限度な
憧憬
(
どうけい
)
ほど、人の魂の底から直接にまた誠実に出てくるものはない。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
僕は少年時代からラジオの研究に
精進
(
しょうじん
)
していたラジオファンとして、あの
茫莫
(
ぼうばく
)
たるエーテル波の漂う空間に、
尽
(
つ
)
くることなき
憧憬
(
どうけい
)
を持っているのでした。
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そんな点から考えると、自分の母を恋うる気持はただ
漠然
(
ばくぜん
)
たる「未知の女性」に対する
憧憬
(
どうけい
)
、———つまり少年期の
恋愛
(
れんあい
)
の
萌芽
(
ほうが
)
と関係がありはしないか。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私は女というものに深い
交際
(
つきあい
)
をした経験のない
迂闊
(
うかつ
)
な青年であった。男としての私は、異性に対する本能から、
憧憬
(
どうけい
)
の目的物として常に女を夢みていた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは恐怖と
憧憬
(
どうけい
)
のおののきに燃えてゆくようだ。いつのまにか妻は女学生の頃の感覚に
喚
(
よ
)
び戻されている。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
こう思った渠は一種の恐怖と
憧憬
(
どうけい
)
とを覚えた。戦友は戦っている。日本帝国のために血汐を流している。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
民衆の一人が光明にたいしていだいてる率直な
憧憬
(
どうけい
)
、将校が胸に秘めてる抑圧された反抗心と無益な行動、リラの花陰で夢想してる若い女のあきらめきった静安。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
着物も紫の
袂
(
たもと
)
の長いのを着てゐた。若い彼女だちは、みな
憧憬
(
どうけい
)
の瞳を輝かして、新らしい先生を見た。
嫂
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
それは全くうまいことをいったものだ、それと同じく船のりたちも、陸には実際以上の
憧憬
(
どうけい
)
を持った。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
みな、心のやさしい、親切な人たちばかりだが、どうしてかしら、この絵の青年にたいするような、溺れるようなふしぎな愛情や
憧憬
(
どうけい
)
をいちども感じたことはなかった。
キャラコさん:09 雁来紅の家
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
理由もなくこの時に
薫
(
かおる
)
の面影が目に見えてきて、心の
惹
(
ひ
)
かれる思いがした。同じように
美貌
(
びぼう
)
でおありになるとは宮を思ったが、こうした
憧憬
(
どうけい
)
を持って思うことはできない。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ああ、二人の胸には堪えがたい過去の追想も、
止
(
や
)
みがたい将来の
憧憬
(
どうけい
)
もなくなったのだ。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私はかう云ふ種類の女に対しても常にある
憧憬
(
どうけい
)
をもつてゐる。もし私の憧憬する幻をもととして、私にあつた今夜の女の心持を想像して見ると、女は
屹度
(
きつと
)
羞
(
はづ
)
かしいと思ふであらう。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
美と貴さへの
憧憬
(
どうけい
)
がたぶんに加わっていることを、彼はみずから知らぬのである。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それで職業的にはまずこうしていても生活の助けとはなるが、しかし、私の実物写生の研究と西洋彫刻に対する
憧憬
(
どうけい
)
は少しもゆるみはせず、どうかして、一新生面を
展
(
ひら
)
きたいものである。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
或
(
ある
)
ひは
世間
(
せけん
)
で
言
(
い
)
ふ
内縁
(
ないえん
)
の
妻
(
つま
)
と
言
(
い
)
つた
方
(
はう
)
が
適当
(
てきたう
)
かも
知
(
し
)
れなかつたが、
大久保
(
おほくぼ
)
の
話
(
はな
)
すところによると、
奈美子
(
なみこ
)
は
彼
(
かれ
)
の
作品
(
さくひん
)
の
愛読者
(
あいどくしや
)
の
一人
(
ひとり
)
で、また
彼
(
かれ
)
の
憧憬
(
どうけい
)
する
若
(
わか
)
い
女性
(
ぢよせい
)
の
一人
(
ひとり
)
であつたところから
彼女の周囲
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼一人はかねて
憧憬
(
どうけい
)
していたこの水郷の
趣
(
おもむき
)
を見るつもりで一人残っていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
赤の他人の彼女になんの要求も持ち出さずに金銭を与える藤三に対して、強い負い目を覚えた。彼は彼女の肉体に
憧憬
(
どうけい
)
を持って居るのに違いない。が、それすらも口に出し得ないで居るのだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
名匠はわれわれの知らぬ調べを呼び起こす。長く忘れていた追憶はすべて新しい意味をもってかえって来る。恐怖におさえられていた希望や、認める勇気のなかった
憧憬
(
どうけい
)
が、
栄
(
は
)
えばえと現われて来る。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
それから生ずる一種のとりとめのない
憧憬
(
どうけい
)
の心とが
湧
(
わ
)
いてきた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その衝動の背後には、卑近な物質的の欲望のほかに、存外広い意味において道徳的な理想に対する熱烈な
憧憬
(
どうけい
)
が含まれているかもしれない。
丸善と三越
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
二年間というもの
大和
(
やまと
)
を訪れる機会はなかった。硝煙と飢餓の都に住んで、最も
憧憬
(
どうけい
)
したものは何かと問われるならば、私は微笑だと答えよう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
なにしろ堂脇のお嬢さんていうのには、俺は全く
憧憬
(
どうけい
)
してしまった。その姿にみとれていたもんで、おやじの言葉なんか、半分がた聞き漏らしちゃった。
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そう云う夫人の言葉に恐る/\面を上げた青年の武士は、初めて彼が
憧憬
(
どうけい
)
の的であった
女性
(
にょしょう
)
の姿を仰ぎ視た。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まったき交わりの理想に向かって
憧憬
(
どうけい
)
しながら、赦し合って交わりつづけて行かねばならぬと存じます。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そして詩が本質する精神は、この感情の意味によって訴えられたる、
現在
(
ザイン
)
しないものへの
憧憬
(
どうけい
)
である。されば
此処
(
ここ
)
に至って、始めて詩の何物たるかが分明して来た。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
もう一つは津田庄左衛門の云ったとおり、松尾が青年たちの
憧憬
(
どうけい
)
を集めていて、求婚しつつあった者もずいぶんいた。それがとつぜんこういうことになったのである。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ぼくはこんなにテキパキあなたに話ができる川北氏が
羨
(
うらやま
)
しかった。ぼくには、
悔恨
(
かいこん
)
と
憧憬
(
どうけい
)
しかない。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そこには、緑葉と草と
苔
(
こけ
)
と小鳥のため息とやさしい影と揺らめく枝とから成ってる一つの殿堂があり、温和と信仰と誠と希望と
憧憬
(
どうけい
)
と幻とから成ってる一つの魂があった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
今までレヴィウの踊り子に対しては何か甘い夢想的な
憧憬
(
どうけい
)
的な、一種エキゾチックなものを見るような気持で見ていて、このような暗い現実を知らされたのは初めてであった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
彼は三千代に対する自己の責任をそれ程深く重いものと信じていた。彼の信念は半ば頭の判断から来た。半ば心の
憧憬
(
どうけい
)
から来た。二つのものが大きな
濤
(
なみ
)
の
如
(
ごと
)
くに彼を支配した。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして彼は彼女の情愛の
息吹
(
いぶ
)
きを、いかなるときにも自分の周囲に感じた。朝に眼を開くときにも、晩に眼を閉じるときにも、彼はかならず恋しい
憧憬
(
どうけい
)
の無言の祈りをささげた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
王朝時代の昔を忘れかねていたようなあの仏蘭西の婦人が心の中心を失った結果として東洋諸国に対する夢のような
憧憬
(
どうけい
)
を抱いたのか、どうか、その辺までは彼にも言うことが出来なかったが
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
大臣の六女は現在における自信のある貴公子の
憧憬
(
どうけい
)
の的になっていた。
源氏物語:44 匂宮
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
法律の条文を暗記させるように教え込むべきものではなくて、自然の不思議への
憧憬
(
どうけい
)
を吹き込む事が第一義ではあるまいか。
化け物の進化
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“憧憬”の意味
《名詞》
憧 憬(しょうけい、どうけい)
憧れること。
(出典:Wiktionary)
憧
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
憬
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“憧憬”で始まる語句
憧憬家
憧憬心
憧憬者
憧憬讃美